デビュー15周年を迎えた4人が鳴らす音から溢れ出る、歓喜と感謝と勇気と友情!!!!
新作『hooray』に想う――昨日より、明日はもっと、このバンドが好きでよかった。

 優れた演奏技術とセンスを持ち合わせたミュージシャンたちが、お互いを刺激し合いながら、幅広い音楽ジャンルを横断し、オリジナリティーとポップネスを共存させた音楽を生み出す。それはもうバンドの理想型ではないだろうか?

 andropがニュー・アルバム『hooray』を発表した。2024年にデビュー15周年イヤーを迎え、9~10月にかけて4人だけでライヴハウスを回るツアーを敢行。さらに10月14日には主催フェス〈androp 15th Anniversary day〉を開催するなど、アニヴァーサリーを彩る活動を続けてきた。「15年も続くとは思っていなかったし、一方では〈あっという間だった〉という感覚もあって。フェスの主催もそうですけど、自分たちだけではできないことばかりだし、自分たちの音楽を聴いてくれて、支えてくれた人たちに感謝することが多い一年でしたね」(佐藤拓也、ギター)という思いはそのまま、〈フレー!〉の語源である〈hooray〉をタイトルに掲げた本作に繋がっている。アルバムの起点になったのは、2009年のファースト・アルバム『anew』に収録された“Image Word”を再録したことだという。

 「“Image Word”は地元の青森から東京に出てくるときの気持ち、〈音楽でやっていくぞ〉という決意を込めた曲なんです。しかも、このメンバーで初めてスタジオに入って一緒に合わせた思い出の曲。15年経って、お客さんの表情だったり、いろいろな体験や場面を思い浮かべたりしながら演奏できるものになった。今回レコーディングしたときは、思い出が蘇ってきて泣きそうになりました」(内澤崇仁、ヴォーカル/ギター)。

androp 『hooray』 SPACE SHOWER(2024)

 先行配信済みの“Vidro”と“Story”、元yonawoの荒谷翔大を迎えた“Tayori”、SHE’Sの井上竜馬をフィーチャーした“Massara”に加え、さらに「ライヴのサウンドチェックのときに演奏できる曲が欲しいなと思って」(内澤)という目的で制作された“Sound Check”を含む5つの新曲を収録。全体を通し、4人それぞれの音が際立つシンプルなバンド・サウンドになっているのも本作の特徴だ。

 「4人編成を意識して作ったところもあるし、生楽器の音がしっかり出ていて、オーガニックな印象も強いと思いますね。あとは自分たちのルーツにあたる音楽が見えてくるところも随所にあるし、バンドとしての純度が高い感じはあるのかなと」(伊藤彬彦、ドラムス)。

 8分の6拍子のダイナミックなグルーヴとしなやかなギター・サウンドが響き合うパワー・ポップ“Lamplight”、ラテン的な哀愁を感じさせる“Bada-bing Bada-boon”、強靭なファンクネスを放つ“ICE”などの多彩な楽曲にも、これまでに培ってきたメソッドや知識が存分に反映されているようだ。

 「“Lamplight”のレコーディングはちょっと大変でしたね。パワー・ポップはそれほど通ってないので、内澤と佐藤に〈どういう感じで弾けばいいかな?〉って訊いて。そうやってコミュニケーションを取りながらの制作も増えてきた気がします」(前田恭介、ベース)。

 「“ICE”はデモを聴いたときから、絶対アルバムに入れたいと思ってました。ジャズやブラック・ミュージックを少しずつ取り入れて、androp流に昇華する作業を続けてきたし、いまならこういう曲も楽しくやれるんじゃないかなと」(伊藤)。

 アルバムの最後に収められている“NaNaNa”は、オーディエンスに感謝を伝えるという本作のテーマを直接的に表現した楽曲。シンガロング必至のメロディー、〈まだ今はそのまま抱きしめて/その歌を宝物にしてよ〉という言葉が響き合う、新たなアンセムと呼ぶべき名曲だ。

 「リスナーに面と向かって感謝を伝える、希望の光を共有できる曲を作りたくて。ライヴで歌ったとき、真っ直ぐ伝わる言葉を選びました」(内澤)。

 「しっかり音楽に向き合った今年を象徴しているし、15年間をふまえての曲でもあって。グッときましたね」(佐藤)。

 新年以降の活動について尋ねると、「今回のアルバムでのトライから枝分かれしていったような楽曲も出来つつある。またいろんな曲を作っていきたいです」(内澤)と答えたandrop。15周年の最後を飾る『hooray』によって、彼らの音楽はさらに先に進む。そのこと自体が本作の最大の功績なのだと思う。

andropの作品。
左から、2021年作『effector』(SPACE SHOWER)、2009年作『anew』(respire)

左から、内澤崇仁が手掛けた2023年のサントラ『アナログ』(avex-CLASSICS)、SHE'Sの2024年作『Memories』(ユニバーサル)