YMOの全貌が分かる書籍「イエロー・マジック・オーケストラ 音楽の未来を奏でる革命」が、2023年8月17日に刊行されました。「レコード・コレクターズ」「ミュージック・マガジン」に掲載された過去記事をまとめており、細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏の3人が残した功績の大きさを改めて認識できる一冊に仕上がっています。
そこで、今回は本作品をはじめとしたYMO関連の書籍を紹介。該当作品のTOWER RECORDS ONLINEの商品ページのリンクなどもあわせて掲載していますので、ぜひお役立てください。なお、TOWER RECORDS ONLINEでの取り扱いが終了している場合もございますので、ご了承ください。タワーレコード店頭での取り扱いは各店舗にお問い合わせください。
まさしく〈圧巻のボリューム〉。「レコード・コレクターズ」「ミュージック・マガジン」で組まれたYMOの特集やインタビューなどに加えて、渡辺健吾による書き下ろしを加えた「イエロー・マジック・オーケストラ 音楽の未来を奏でる革命」はYMOの論考書籍として決定版となりそうな一冊だ。オリジナルアルバム、編集盤、シングル、映像作品などディスコグラフィの紹介は充実した分量が割かれており、初心者へのガイドブックとしても抜群。
808ステイトやオルタネイトなど、90年代テクノシーンで人気を集めた面々が参加したリミックス盤『HI-TECH / NO CRIME』やヒューマン・リーグによる衝撃の“君に、胸キュン。(浮気なヴァカンス)”を収めた『YMO versus THE HUMAN LEAGUE』なども取り上げられているあたりは、抜かりなしといったところか。
さらに、矢野顕子や渡辺香津美などライブサポートを務めた面々やTOWA TEIや砂原良徳、CorneliusらYMOチルドレンなど〈ファミリー〉たちによるアルバムや、クラフトワークやウルトラヴォックスなどYMOの前期/後期を知るための洋楽作品の紹介などは、スマホやPCを手元に置いて〈読んで→聴いて〉を繰り返しながら熟読したい。
そして、スティーヴ・ジャンセン(ジャパン)やジェラルド・カザール(ディーヴォ)など、同時代に互いに影響を与え合った海外ミュージシャンたちからのメッセージや、松武秀樹や川添象郎ら関係者たちへのインタビューも掲載。〈細野晴臣がイエロー・マジック・オーケストラというスタジオ・バンド的なグループを作って~〉からはじまる、「ニューミュージック・マガジン」78年10月号掲載のインタビューの歴史的価値に対しては〈感謝〉しかない。
なお、ミュージック・マガジン社からは3月に「高橋幸宏 多才なロマンティストの軌跡」、4月に「坂本龍一 本当に聴きたい音を追い求めて」が発売済み。追悼増刊として発行されたその2冊でも、「レコード・コレクターズ」や「ミュージック・マガジン」に掲載された膨大な記事が収録されており、両アーティストの功績を辿ることができる。併せてチェックしてもらいたい。
また、93年の名著「ピリオド YMO究極ヴィジュアル・データ」などで知られる吉村栄一による2021年発売の「YMO1978-2043 Definitive Story of Yellow Magic Orchestra」は、YMOが結成された78年から2021年初頭までの3人の軌跡を紹介したヒストリー本で、未読の方には大推薦したい一冊。各方面からの貴重な証言や詳細なデータ、国内外でのリアクション、活動秘話など、筆者ならではの膨大な知識が詰め込まれたトピックの連続に読む手が止まらない。
個人的に注目したのは、92年からスタートした再生(=再結成)プロジェクトに関する記述。同年2月に行なわれた3人だけの話し合いや、箝口令の中でのレコーディングの様子、東京ドーム2デイズ公演の裏話など、近年再評価が高まっているものの、短期間で終了してしまった同時期の活動を知りたい人は必読だろう。
ほかにも、YMOのレコーディングスタッフを務めていた藤井丈司が松武秀樹、飯尾芳史、砂原良徳、木本ヤスオといった豪華ゲストとの対談も交えながら、YMOサウンドの魔法に迫る「YMOのONGAKU」(2019年)もファン必読の仕上がりだ。
そのほか、〈すべてのYMO本よ、サヨウナラ〉を謳った田中雄二の大著「シン・YMO イエロー・マジック・オーケストラ・クロニクル1978~1993」が2022年に刊行されたことは話題になった。「電子音楽 in JAPAN」「エレベーター・ミュージック・イン・ジャパン 日本のBGMの歴史」などの著作で知られる田中が、3人へのインタビューや膨大な資料を元に編んだ決定版的な論考集だ。