制作により深く関わり、自分自身と向き合うことで表現者として成長した彼女が戻ってきた! Dorianの全曲プロデュースで臨んだ『UNI』では一曲一曲に新たな想いが溢れている!

思ってることを詰め込めた作品

 2023年夏。脇田もなりがあなたを見ている。いつにも増してまっすぐ、色っぽく、穏やか、だけど何かしら物言うまなざしで――そんなヴィジュアルと共に携えてきたのは、実に4年ぶりとなる通算4枚目のアルバム『UNI』。多くのアーティストがそうだったように、彼女もコロナ禍においての創作で神経をすり減らしたようだが、取材の席にちょこんと腰掛けた彼女は、いつものようににこやかに、ここに至るまでの苦労から話しはじめてくれた。

 「7年前に東京に出てきて、ひとりでがんばりはじめて、 ファースト、セカンド、サードと年イチのペースでアルバムを出させてもらって、もっと多くの人に聴いてもらいたいっていう気持ちとか、こんなこともやってみたいっていう自分の意思がすごく高まってきてた時期だったので、CLUB QUATTROでのワンマン(2019年9月23日)にも挑んだし、それも無事に成功できて、 さあ、ここからもっともっと自分のやりたいことを……って思ってた矢先にコロナでした」。

 結局、2020年は、前年夏のアルバム『RIGHT HERE』からのリカット・シングル“passing by”を出しただけにとどまり(カップリングのカヴァー“接吻”は新録)、それと前後して、配信ライヴなど、対面でのコミュニケーションを必要としない活動の場を探りはじめた。

 「コロナ禍になって初めて宅録とかもしましたし、“接吻”もおうちで録ったのがそのままレコードになってます。配信ライヴは、向こう側のコメントを見ることができても、 表情とか楽しんでる様子がわからないですし、歌ってる時の自分の感覚は逆にわかりすぎてしまうというか、客観的に見えてしまうから怖くなっちゃって。それまでのライヴでファンの皆さんが一体感を作ってくれて、それで私もパワーが出て、いいライヴにできてたんだなって思い知らされました」。

 そんな彼女から待望の新曲が届いたのは2021年の夏の初め。ミディアム・ファンク調の“PLACE”を表題曲に、自身の作詞によるブリージンなスロウ・チューン“ONDO”――このシングルのサウンド・プロデュースは、『RIGHT HERE』収録の“エスパドリーユでつかまえて”で初めて手合わせし、配信ライヴでもチームを組んだDorian。そしてここが、ニュー・アルバムの起点となる。

 「歌に対する意識がちょっと変わりはじめていた時期だったので、“エスパドリーユでつかまえて”は大人な曲というか、新しい方向を見つけるきっかけになりました。Dorianさんとは、そのときすでに〈一緒にアルバム作りたいね〉っていう話もしていて。直後にステイホームになってしまったけど、リモートでやりとりしながら、そこで自分のやりたいこととか、こういうの合うんじゃないかとか、情報交換をしながら仲良くなっていきました。Dorianさんが光になりましたね」。

 引き続きDorianと組み、翌2022年夏にシングル“La Shangri La”を発表した頃には、アルバムに向けて動きはじめていたそうだが、まだまだコロナ禍。

 「なんかもう、ステイホームに慣れちゃって(笑)。家から出るのが不安になっちゃって、ライヴしたくないなっていう気分になって……でも、お客さんがノーマスクだった韓国でのライヴは楽しかった。そんな感じで“もなりの8ビート”を出した今年1月ぐらいまで戦ってたんですけど、バースデー・ライヴ(1月28日、渋谷・WWW)が終わってから、なんか制作意欲が湧いてきて。自分が思ってることを積極的に制作の皆さんにちゃんと話せるように、いきなりなって。3年間かかって成長したんですかね(笑)。思ってることって意外といっぱいあったなみたいなところで、それをようやくしっかり作品に詰め込めたのが『UNI』っていう感じですね」。