季節の輝きを放つワン&オンリーなファースト・アルバム!

自信がつきました

 「7月に出すにはピッタリのアルバムかな~って思いますね。明るい曲がやっぱ多くて、海っぽい雰囲気の新曲もあって。先行シングルの“I'm with you”もかなり夏っぽい感じというか、爽やかな90年代ハウスの感じのトラックにしていただきましたし。もともとこの時期にアルバムを出したいっていう希望があったので、歌詞に〈真夏〉っていうフレーズの入ってる曲があったり、この季節に向けて作っていただいた部分もありますね」。

 昨年11月のソロ・デビュー・シングル“IN THE CITY”から約9か月。脇田もなりが季節感にバッチリ照準を合わせたファースト・アルバムを仕上げてきた。再始動後は精力的にライヴで全国を駆け回り、今年に入ってmicrostarによるユーロ歌謡“Boy Friend”、そして福富幸宏による先述の“I'm with you”とシングルを重ねてきたが、この早いタイミングでのリリースもある意味ではプラン通りだったという。

 「いつも目標とかヴィジョンみたいなものをノートにけっこう書いてて、もともと〈6月か7月までにはアルバムを出したい〉って書いてたんです。やっぱシングルをリリースするごとに良い反応をいただいて、それもまた自信になって、新しいことに挑戦したりとかして、周りの声が盛り上げてくれるというか、自信がつきましたね。波に乗っちゃうじゃないですけど、乗れる時は乗りたいって(笑)」。

脇田もなり I am ONLY HIGH CONTRAST/ヴィヴィド(2017)

 タイトルは『I am ONLY』。ワン&オンリーな存在を改めて主張するものだが、並べ替えれば〈I Monary〉となる。

 「そう、ちょっと無理矢理なんですけど(笑)。〈私、もなり〉として主張ができたかな、っていう意味もありますし、私のいまできるすべてを詰め込んだアルバムっていう感じですね。作詞とか作曲とかに私は参加してないんですけど、シンガーとして、いろんな方が私のために書いてくれた曲を、私の声で、できることすべてを精一杯がんばりました」。

 アルバムはこれまでのシングル曲と、すでにライヴで披露しているものも含む新曲を交えた全12曲。古今のソウル~R&Bを聴いているという嗜好の変遷もあって、ファンクやディスコのフレイヴァーは彼女の中で大きな要素となっているようだが、すでにライヴで効力を発揮している“IRONY”もそのひとつだ。こちらは矢舟テツロー×新井俊也によるファンキーなナンバーで、このコンビは“I'm with you”のカップリングだったブランズウィック・ソウル調の“EST! EST!! EST!!!”も手掛けていた。

 「この曲は、TVでブルーノ・マーズさんがパフォーマンスしてるのを観て〈めっちゃかっこいい!〉って思って、ディレクターさんに〈そういう感じの曲も……〉ってずっと言い続けてたらやって来た曲です(笑)。全然〈皮肉〉って感じの聴こえ方をしないように歌ってる楽しい曲で、私は〈Yes〉とか〈No〉とか〈Baby〉とか英語の単語が入る感じが好きなんですけど、それを矢舟さんがわかってて、たくさんそういうフレーズを入れていただいたのでノリ良く歌ってます(笑)」。

 ノリの良さでいうなら、西寺郷太による“泣き虫レボリューション”も出色。ジョージ・マイケル“Faith”由来のボ・ディドリー・ビートに乗せ、キュートに弾む歌声の魅力がストレートに楽しめる一曲になっており(プリンス“Kiss”の引用も効果的だ)、〈SHAKE SHAKE もなりとSHAKE BODY!〉と自分の名前を歌い込む趣向もライヴの盛り上がりに直結しそうだ。

 「そこですよね、恥ずかしいです(笑)。そこもライヴで楽しんで、みんなで言えたらいいなって。曲の感じはジョージ・マイケルさんとかテイラー・スウィフトの“Shake It Off”とか、こういう雰囲気の曲をやってみたらどんな感じになるのかな~という話があって。で、郷太さんもヴォーカリストなので、レコーディングの時には丁寧にヴォーカル・ディレクションとかもしてくださって。明るい感じで声のトーンも高いんですけど、歌詞の気持ちをちゃんと考えて、AメロとBメロのところはちょっと投げやりで気怠い感じで進んでいって、サビは泣き叫んで必死で歌ってるっていうイメージをして歌いました。自分の笑い声も入ってるのは、〈HEY!〉って言う部分が自分でおかしかったので笑ったら、そこを何回も録り直したんですよ。そしたら、〈HEY!〉じゃなくて笑い声を録ってたっぽくて(笑)」。

 

シンガーとして認めてほしい

 彼女が曲ごとに見せる表情はこれまで以上にさまざま。参加したクリエイターの多様さも手伝って、弾けるような陽性の歌声も、スタイリッシュな歌い口も、表現の彩りをさらに増している。いろいろなシチュエーションでのレコーディングを経験することも、今回の彼女にとって大きなチャレンジのひとつだったように思える。

 「そうです。なので、歌い分けはかなりしてて、ヴォーカルの感じが全体的に。曲ごとに全然ニュアンスを変えたりとかしているので、飽きずに聴いていただけると思います。〈ラップの曲をやりたい〉っていうのは話してて、Illicit Tsuboiさんの“ディッピン”では初めて少しラップ風に歌っていて、こんなゴリゴリなヒップホップのトラックに、YUI(バクバクドキン)さんにゆるふわなメロディーと歌詞とを入れていただいて。いつもけっこうギンギンな声で歌ってるので、ここでは聴きやすい感じでゆったり歌ってみていますね」。

 さらにはイックバルの提供した“Cloudless Night”でもTsuboiがレコーディングとミックスを担当。昨今のアシッド・ジャズ・リヴァイヴァルに呼応した出来映えはアルバム中でも格段にグルーヴィーなものだが、実はこれはソロ始動の最初期から存在していたものだという。

 「そうです、今後どうするかまだわからない時期にイックンから貰っていた曲です。で、復活するって決まった直後くらいにTsuboiさんに初めてお会いしてレコーディングしたので、この歌声は“IN THE CITY”よりも前のものですね。いま聴くとヘタなところもあるんですけど(笑)、不安と希望と……っていう当時の雰囲気を思い出して、何か懐かしいです」。

 それに対してもっとも新しい録音となるのが、長谷泰宏(ユメトコスメ)による初のバラード“祈りの言葉”だ。

 「やっぱり歌い手としては、盛り上げることも大事なんですけど、伝えるほうの曲もやってみたいって思ってて。シンガーとして認めてもらいたいっていう気持ちが強くて、今回バラードがどうしても歌いたいっていう気持ちがあったんです。よく長谷さんにはライヴでピアノを弾いていただいたり、一緒にやる機会が多くて、私の好きな感じとか良い音域、声の響きも観察して作ってくださった一曲になってますね」。

 そんななかで、ラストを飾るのが前園直樹と新井俊也の冗談伯爵による“夜明けのVIEW”。デバージ“I Like It”から情緒を直結したメロウ・ソウルで、等身大の歌唱も素晴らしく、大人のソロ・シンガーとして大成してゆく彼女の進む先を指し示すような名曲だ。

 「大好きです、もう(笑)。曲をもらった日の晩に家のベランダで星を見ながら聴いて泣きました。ホントにこれは曲とかメロも大好きなんですけど、大好きなグルーヴだし、よりリアルな感じで歌えるというか、何か勝手に気持ちがエモーショナルになるので……。中盤くらいから最後のほうにクロマチックハーモニカが入ってくるんですけど、それがまた泣けてくるんですよね。うん、大切な曲。もちろんどの曲も大切なんですけど、あと半年したら23歳になるので、何歳になっても歌える曲な大人っぽい感じも入っているので〈これは凄い大切な曲になるな〉って思ってます」。

 このように文句なしの名曲オンリーで構成された『I am ONLY』は、一人のシンガーとしての脇田もなりをより多くの人に強く印象づける一枚となるはずだ。そして、本作を引っ提げ、9月8日には東京・clubasiaでバンドを従えての初ワンマンが行われる。

 「去年の9月に再始動を発表して、その時から1年後には絶対ワンマン・ライヴがしたいって気持ちがずっとあったんです。アルバムをしっかり広めて、そこに繋げたいなって思います。え、どんな日になるだろう? でも、何だろう、ここでやっと〈脇田もなり〉を残せる日になるんじゃないかなって思いますね」。

 

脇田もなりのシングルを紹介。

 

『I am ONLY』に参加したアーティストの作品を一部紹介。