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男女の不平等がなくなりイベントを止めるのが目標

――開催がこのタイミングになった理由もあるのですか。

「日本のBillboardチャートがみなさんに信頼されるようになってきているのではないかと、ようやく感じることができるようになりました。そもそもアメリカのBillboardチャートは80年を超える歴史がありますが、日本は2008年スタートとかなり後発。ヒットチャートとして浸透するまでにすごく時間がかかりました。でも、今の私たちなら音楽とともに社会問題について発信しても、みなさんが耳を傾けてくださるのではないかなと」

――どのような状況になったら〈平等が実現された〉と思えるのでしょうか。

「最終的には女性や男性といったジェンダーについてわざわざ言及しなくても、均衡が保たれている世の中になるのが一番いいんだろうなと思っています。〈Women In Music〉のようなプロジェクトがなくなることが、逆に目標というか。多くのイベントって続けていくことを目標にしていると思うんですけど、私たちはジェンダーイコーリティーが実現されて、イベントを止められる日がきたらいいなと思っています。

当面の課題としては、音楽シーンで男女の不平等が起こっていることを日本のみなさんに知っていただくこと。音楽業界でもチャートのジェンダー比の不均衡を意識されていないかたは、まだまだ多いのではないでしょうか。

また、今は〈チャート比率がなぜ男女で五分五分じゃないのか〉という疑問に対する答えが見えていないので、それも見つけていきたいです。課題を解決していくことで次のフェーズに進み、最終的なゴールにたどり着けるのではないかと思っています」

 

歪な〈当たり前〉を変えるために

――おっしゃっていることは理解できるのですが、こういった社会問題って興味を持つきっかけがあって初めて、ちゃんと知ろうと気持ちが向いていくと思うんですよ。そもそも知るきっかけにすら出会わないような人たちには、どのようにして問題提起していくのでしょうか。

「問題に気づいて変わっていく人の姿をリアルタイムで伝えていけば、受け手の気持ちの変化にも繋がっていくのではないかと思っています。

〈Women In Music〉の一環として、音楽業界における女性にフォーカスした〈わたしたちと音楽〉というインタビューを連載しているんですね。積極的に問題を発信しているかたがいる一方、〈女性だからといって辛かったことはないし、活動に障害があると感じたことはありません〉とおっしゃるかたもいて。でも、そういうかたも、お話を訊いていくうちに〈今まで当たり前に思っていたけど、女性だから負担になっていることや女性だからこそやりづらいことって確かにあるな〉って気づくこともあって。

たとえば、結婚や出産のような出来事を経験すると、その人たちのライフステージが変わると思うんです。そういった場合に、何か働きかたや生きかたを変えるのって、100%ではないですけど女性のほうが多いじゃないですか。ことさら出産になると、女性が産むことは物理的に変えられないので、物理的に不可能じゃない事柄においても、女性が変わることが当たりまえだと無意識に刷りこまれていく場合がある。それを知らず知らずのうちに受け入れている人って、たくさんいらっしゃると思うんです」

――インタビューを通して〈我慢しなくていいこともある〉と女性に伝えていくことが、まずはきっかけになっていくと。

「そうですね。とは言っても、男性にもこのプロジェクトや課題をわかっていただかないといけない。女性だけでは変えられないこともいっぱいありますし、すべての人たちに伝えていければいいと思っています。

私たちはレコード会社でもなければ、音楽事務所でもない。直接的にアーティストのみなさんに何かを働きかけることはできませんが、私たちがデータを提示することによって〈たしかに何か歪なことが起こっているかもしれない〉と考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです」