書籍「ferne ZWEI」が2023年11月11日(土)に刊行される。
「ferne ZWEI」(読み:フェルネ ツヴァイ)は、音楽・アニメをメインの領域に編集者・ライターとして活動する北出栞によるプロジェクト「ferne」の第2号。創刊号は2021年に刊行され、個人流通のみで、これまでに500部以上を売り上げているという。
そんな「ferne」は、2000年代初頭にアニメ系カルチャーの周辺で生まれた〈恋愛などの親密な二者関係〉と〈世界の終わり〉を基調とする〈セカイ系〉という概念を〈人と人との接触が忌避される〉〈世界的な危機〉とされた新型コロナウイルス禍が覆う2020年代の状況に照らしあわせ、新たなカルチャーの地図を描きだそうとしたとのこと。
今回の「ferne ZWEI」は、コロナ禍が沈静に向かいつつあるなか、リアルな空間でのイベントの開催が困難だったこの数年間で以前よりも定着したYouTube・SoundCloud・Bandcampといったオンラインプラットフォーム発のポップミュージックがどこに向かうのか、〈Y2K〉という名のもと〈セカイ系〉と同時代のカルチャーの掘り起こしが進む現在、音楽誌でこれまで中心的に語られてこなかった〈音楽とビジュアルの融合〉〈インターネットやDAWなどのテクノロジー〉がどう〈アニメカルチャーのユース世代への浸透〉するのかといったトピックを、2000年代と2020年代を照らし合わせながら解き明かす一冊になっているそうだ。
同誌には、新鋭トラックメイカー・Telematic Visionsとイラストレーター・cosgaso、アニソン作家として多くの実績を持つ佐藤純一(fhána)とeba(cadode)、avex発の音楽 × 仮想世界プロジェクト〈十五少女〉、メディアアート研究の第一人者・久保田晃弘へのインタビューが収録されている。また、〈遠泳音楽〉を提唱するレーベル〈Siren for Charlotte〉の発起人である門脇綱生と鴉鷺や、音楽メディアで活躍する清家咲乃やNordOstらが論考を執筆している。
同誌のデザインは、Kabanaguや長谷川白紙のアートワークも手がける竹久直樹が前号に引き続き担当。イラストは、同誌のインタビューにも登場しているcosgasoが担当した。
「ferne ZWEI」は、11月11日に東京流通センターで開催される〈文学フリマ東京37〉の販売ブースである第二展示場〈ち-19〉にて先行販売される。その後、ウェブストアのBOOTHや各地の書店でも順次販売が開始される予定とのことだ。
音楽や評論、同人誌に興味のある者は要チェックの「ferne ZWEI」。文フリや通販でぜひ手に入れてほしい。
BOOK INFORMATION
ferne ZWEI(フェルネ ツヴァイ)
発行人:北出栞
デザイン:竹久直樹
イラストレーション(表紙・口絵):cosgaso
サイズ:四六判/269ページ
価格:1,500円(税抜)
BOOTH(ウェブ通販):https://fernebooks.booth.pm/
書店、レコード店、クラブ・ライブハウスなどへの卸も受付中。ご連絡は〈siori.kitade@gmail.com〉まで。
CONTENTS
ferne ZWEI 刊行に寄せて
Interview
Telematic Visions × cosgaso
流体のムード――東京のインディーミュージックシーンの観察ログ
NordOst
遠泳音楽とは何か――天使、破壊、「君」に触れられないこと
門脇綱生
〈セカイ系〉音楽としてのParannoul――シューゲイザーにおける「脱構築」の系譜
鴉鷺
Interview
佐藤純一(fhána)× eba(cadode)
明日の叙景『アイランド』と架空のノスタルジア
清家咲乃
浜崎あゆみにおける〈セカイ系〉の詩学――あるいはTohji的ロードサイドの風景について
北出栞
Interview
十五少女
Part 1. 音楽プロデューサー・N/Part 2. 酒井伸和(minori pictures)
ボカロ・コーリング・ユートピア――あなたのためにあったかもしれない理想郷について
江永泉
ここがどこかでありますように――『イルミラージュ・ソーダ』から探る〈セカイ系〉的聴取論
患者mono
Interview
久保田晃弘(多摩美術大学 情報デザイン学科メディア芸術コース教授)