ダブリン国際コンクール第2位の若手実力派が待望の新譜を発表!!
2018年の高松国際ピアノコンクールで日本人初優勝を飾り、21年のショパン国際コンクールではセミファイナルに進出。そして、22年のダブリン国際コンクールにおいてもみごと第2位入賞を果たした注目の若手実力派・古海行子が、日本コロムビアから2枚目の録音を発表した。4年ぶりのレコーディングとなる本作の収録曲には、リストのソナタと『愛の夢』第3番が選ばれた。
「リストのソナタを最初に意識したのは、中学生の頃に図書館で借りたロイヤル・バレエの『椿姫』の映像作品でした。そこにこの作品の管弦楽版が使われていて、同じ旋律が時の流れの中で次第に表情や調性を変容させる時間芸術の素晴らしさに心から魅了されたのです。以来、ずっと憧れのような存在でしたが、好きすぎてなかなか手を出せず、人前で弾いたこともありませんでした。でも、今回録音のお話をいただいたことで、思い切って録音に挑戦し、その上でライヴとして皆様にお届けすることにしました」
1853年に完成したこのソナタは、全4部が切れ目なく演奏される大作かつ難曲として知られるが、古海はその難しさや魅力を次のように語る。
「リストの手の大きさやパーソナリティが私のそれらと異なることもあり、作品との出会いから長らく、ふさわしい響きやフレージングが見つからずにいました。その後、20代前半の人生や音楽における様々な経験を経て、物の見方が少しず つ変わる中で、自分なりの考えをこの作品にも持てるようになりました。このソナタは構成の面で色々な捉え方ができ、複雑にも感じますが、音楽には迷いが一切ありません。第2主題とも捉えられる美しい旋律が、第3部のフーガ、再現部を経て再び現れる部分は何度弾いても泣けます。そして曲の最後には “神に賞賛を”と書かれていますが、曲が終わった後の余韻にも特別な空気を感じますね」
まさにそんな揺るぎない構成力とクリアな響きが秀逸な当盤。そこには今回の使用楽器も影響しているようだ。
「タカギクラヴィアさんが所有するハンブルクスタインウェイのピアノを使わせていただきました。往年の巨匠が数多く弾いてきた名器だそうで、私もその美しく豊麗な響きに大きく助けられました。録音の最終日にはピアノとの別れが惜しくて全収録曲をランスルーで弾いたのですが、結果として録音の大部分でこの時の演奏が使われています。ソナタのフィナーレの和音はすべてをピアノに託し導いてもらって、ただ自分は響きだけを聴いてというような感覚で弾き切れて幸せでした」
このソナタの後に置かれた「愛の夢」第3番にも、古海らしい知性と感性が刻印されている。
「あえて収録した2作品に関係を作るなら、ソナタの重要なテーマのひとつが“愛”。その部分をより純粋に凝縮したのが『愛の夢』第3番かなと思います。ですから、ソナタの前にイントロダクションのように『愛の夢』を聴くのもよいし、収録順に進んで『愛の夢』をアンコールのように聴くのもよし(笑)。『愛の夢』は原曲の歌曲へのリスペクトから、歌詞のイントネーションを大切に弾いたつもりなので、大きな“愛”の物語を自由にお楽しみください」
輝かしいコンクール歴にも関わらず、新しい場所での出会いを求め、レパートリーもさらに拡げたいという想いでダブリン国際に臨んだ古海。大自然に恵まれたアイルランドでは人生初のホストファミリーを経験し、電車で約1時間半かけて練習に通う中で、それまでは切り離されていた日常と音楽に繋がりを感じるようになったそうだ。
そんな充実著しい彼女に次回作の展望を尋ねると、またしても彼女らしい言葉が返ってきた。
「本当に素晴らしい楽器とスタッフに恵まれて今回の録音が出来上がりました。皆様にはしばらくそれを聴いていただきたいので、次回作の予定も希望もしばらくはありません(笑)。また、23年12月に大阪のザ・フェニックスホールで、24年1月に東京の浜離宮朝日ホールで、CD発売記念リサイタルを行いますので、リストの生の音楽もぜひ味わってみてください!」
古海行子(Yasuko Furumi)
2020、21年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。昭和音楽大学大学院修了。同附属ピアノアートアカデミー在籍。江口文子氏に師事。2022年第12回ダブリン国際ピアノコンクール第2位を受賞。2021年第18回ショパン国際ピアノコンクールセミファイナリスト。日本はもとより、イタリア、ポーランド、アメリカなど数多くのコンサートに出演。また日本フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団をはじめ、オーケストラとも数多く共演。
LIVE INFORMATION
古海行子 ピアノ・リサイタル「Liszt」2023-2024
- CD「リスト:ピアノ・ソナタ」発売記念 -
2024年1月28日(日)浜離宮朝日ホール
開演:14:00
ほか4か所にて開催。
https://lit.link/furumiyasukoliszt