Photo by HIRO KIMURA

矢沢永吉が、2023年12月14日に記念すべき150回目の日本武道館公演を開催した。

古稀を超え、今なお眩い輝きを放つレジェンド、矢沢永吉。歌謡曲とフォークソング全盛だったこの国の音楽シーンに〈日本語のロック〉という風穴をぶち開けた後も、半世紀以上にわたり最前線で活動を重ね、最高峰として君臨している。

75年のソロデビュー後、矢沢が初めて日本武道館で公演を行なったのは、77年8月26日。かつて海外アーティストによる来日公演の定番だった〈BUDOKAN〉は、今では矢沢にとってホームグラウンドとなっている。そして12月14日、前人未到の150回目の武道館公演が開催された。

開演を待ち切れない大観衆の〈永ちゃん〉コールが響きわたる。定刻を過ぎ、場内が暗転すると幕が下り、ステージ後方の巨大LEDスクリーンに〈E.YAZAWA〉の赤い文字が浮かび上がる。屈強なバンドが創り上げる絶妙なリズムに乗り、颯爽と舞台に登場する。1曲目はアンドリュー・ゴールドとの共同プロデュースアルバム『東京ナイト』(86年)に収録された“さまよい”。スタンドマイクが凹むほど激しいマイクターンを決め、軽快に腰をくねらせる。

続いては、挑発的なギターリフも印象的な“ROCK ME TONIGHT”。レーザービームとツインギターがぼとばしる歌に並走し、客席を熱く煽る。“PURE GOLD”では、どこまでも艶やかなボイスが武道館の天井を突き破るかのようだ。間奏では、リリース当時にモンキー・パンチが制作したMVが映し出され、〈歴史〉の一端を垣間見せる。

Photo by HIRO KIMURA

MCで聴衆の緊張と興奮を軽くほぐしたのち、スローナンバー“愛はナイフ”へ。サキソフォンのソロをフィーチャーし、アダルトオリエンテッドな魅力がさく裂する。自らの主演ドラマの主題歌“アリよさらば”でシャウトを決めたのち、最初のハイライトが訪れた。盟友のジョン・マクフィーが書き下ろし、全米でシングルリリースされた“ROCKIN’ MY HEART”だ。40年以上経っても色褪せることを知らないその姿に、アリーナから1階席、2階席まで会場全体が激しく呼応する。

ロックを満喫したあとは、バラードで沁みる番だ。95年にリリースしたアルバム『この夜のどこかで』から“KISS YOU”“Love Chain”と2曲のスローソングを繋げる。極上の矢沢メロディ。武道館に至福の余韻が残った。“小悪魔ハニービー”では、5年振りにツアーに参加したジェフ・ダグモアのパワフルなドラムスが生み出す骨太なグルーヴが、矢沢の熱唱を際立たせる。

ブルージィーな“Risky Love”をはさみ、名バラード“Please,Please,Please”では、満天の星空に包まれたかのような演出も加わり、極上の音楽空間に酔いしれる。ボルテージが最高潮に達したのは、キャロルの“憎いあの娘”が披露されたときだ。舞台上手から下手へと軽快に走る矢沢の姿に、胸が熱くなる。燃え盛る炎は、衰えることを知らない彼の情熱のようだ。

Photo by HIRO KIMURA

さらに、“ウイスキー・コーク”からアコースティックギターを弾きながら歌った“チャイナタウン”へと70年代の名曲を連発する。込み上げる気持ちを押さえきれずにいる人々の姿が印象的だった。“Anytime Woman”では3人の女性コーラスをフィーチャーし、ロックンロールの真髄を示したのち、名曲“ニューグランドホテル”では、再びアダルトに極める。

メンバー紹介を経て、キャロルの“カモン・ベイビー”で導火線に火を点け、王道のロックンロールナンバー“WITHOUT YOU”で本編を歌い切ると、威風堂々とその場を後にした。収まらないのは、火がついたままの1万4,000人の観客だ。鳴り止まないアンコール。感情の渦が洪水となって降り注ぐ。それらすべてを受け止めた〈BOSS〉が、白いパナマハットと白いスーツを身に纏い、ステージのセンターに戻ってくる。

そして、全員が心をひとつに合わせる至福の時間がやってきた。いまや国民的なアンセムとなった“止まらないHa~Ha”。スモークがたかれ、色とりどりのタオルの出番を告げる。さながら、観客一人ひとりの人生を祝福しているように、華やかでしなやかで、力強く。様々な色の〈エール〉が武道館の宙を舞っていた。

続けざまに放たれた“トラベリン・バス”では、コール&レスポンスが加速度を上げていくかのようだった。パワフルでストレートでハートフルな魂の交感。実に壮観だった。最後に披露されたのは矢沢が自らの想いを真っ直ぐに込めた“I AM”。目を潤ませながら歌い上げ、コンサートを支えたメンバーたちと一礼すると、彼は笑顔でステージを降りていった。その表情からは〈ありがとう! でも、まだまだ通過点だぜ!〉という心意気が伝わってきた。それがまた素敵だった。

Photo by HIRO KIMURA

あらゆる偏見に抗いながら切り拓いた〈日本語のロック〉は、いつしかカルチャーとしてもビジネスとしても確立された。新しいジェネレーションからも絶大な支持を受ける矢沢の名は、この国のロック史のトップに刻まれている。だが、何より凄くて素晴らしいのは、依然として最高の音を鳴らし、最高の歌を聴かせ、最高のステージを魅せてくれることだ。〈still rock singer〉とは、〈矢沢語録〉のひとつでもあるが、ロックという衝動から始まり、転がり続ける生き様=ロックンロールを体現するその姿は神々しいほどだ。時代を超えて、矢沢永吉は僕らに気高い姿を示してくれている。

同公演の模様はWOWOWオンデマンドにて2024年1月13日(土)までアーカイブ配信が行なわれている。また、2月11日(日・祝)にはWOWOWライブ/WOWOWオンデマンドにてリピート放送・配信も決定した。

なお、現在展開中の特集〈WOWOW × 矢沢永吉 武道館ライブ150回記念スペシャル〉の最終月となる2024年6月には、「矢沢永吉 Music Video Selection 2024」の放送・配信も決定した。2024年も、立ち止まることを知らない矢沢永吉の勇姿を追いかけ続けよう。

 


TV INFORMATION
生中継!矢沢永吉 CONCERT TOUR 2023「Welcome to Rock’n’Roll」
WOWOWオンデマンドで2024年1月13日(土)23:59まで配信中
2024年2月11日(日・祝)19:45~リピート放送・配信 WOWOWライブ/WOWOWオンデマンド

WOWOW × 矢沢永吉 武道館ライブ150回記念スペシャル
映画「矢沢永吉 RUN&RUN」

2024年1月2日(火)20:00
※放送同時配信・アーカイブ配信はございません

映画「E.YAZAWA ROCK」
2024年1月2日(火)21:45
※放送同時配信・アーカイブ配信はございません

今!!やっぱ矢沢永吉/Talk History
2024年2月11日(日・祝)18:45

矢沢永吉 公開レコーディング&ライブ・ドキュメント
2024年3月放送・配信

矢沢永吉 LIVE 2007「THE REAL」〜E.YAZAWA 100th BUDOKAN LIVE〜
2024年4月放送・配信

矢沢永吉 CONCERT TOUR 2013「ALL TIME HISTORY -A DAY-」in BUDOKAN
2024年5月放送・配信

矢沢永吉 -Life- 完全版 ~スペシャルインタビュー&ライヴ~
​矢沢永吉 Music Video Selection 2024

2024年6月放送・配信

番組ホームページ:https://www.wowow.co.jp/music/yazawa/