2日目のヘッドライナーを務めたフー・ファイターズ
🄫Taio Konishi

従来の形へと回帰していった2023年のフジロック

2023年7月28日~30日の3日間、〈FUJI ROCK FESTIVAL ’23〉が開催された。新潟県は苗場スキー場という立地をフル活用した同フェスは、今やアジアを代表する音楽フェスとして確固たる地位を築いている。来場者の顔ぶれは日本国内にとどまらず、アジアから欧米圏まで年々グローバル化が進み、今年その波はさらに大きくなったように見受けられた。

今年のフジロックはTHE PALACE OF WONDERやGAN-BAN SQUAREなど、コロナ禍の影響で途絶えたエリアやステージが復活。さらに、2018年から実施されてきたYouTube配信が行われないことなど、あくまで現場にこだわった従来のフジロックへと回帰していった。

とはいえ、ラインナップまで回帰してはいない。ストロークス、フー・ファイターズ、リゾを各日のヘッドライナーに据え、現行の音楽シーンにおいて欠かすことのできない面々が顔を揃えた。ここでは、筆者が3日間を通じて目撃したステージの模様、合わせて2023年のフジロックを総括した想いも記していく。

 

今年のGREEN STAGEの様子

フジロック初日、充実期を迎えた最強のストロークス

フェス初日、まず出迎えてくれたのがフィーバー333とアイドルズだ。フィーバー333は5年ぶりの出演、その間にメンバーもバンド構成も大きく変化した。リリース間もないハードエモな最新シングル“$wing”に加え、ブラー“Song 2”のカバーでオーディエンスの心をこじ開けるセットは爽快の一言。

同じくGREEN STAGEに出演したアイドルズも、より成熟したパフォーマンスに胸が熱くなる。ポストパンクリバイバルの口火を切ったデビューアルバム『Brutalism』(2017年)からのアンセム“Mother”がプレイされた時の熱狂は、全盛期のストゥージズのごとく凄まじかった。『Crawler』(2021年)の楽曲を中心に緩急のついたパフォーマンスからは、ポストパンクの次なる可能性を感じることができた。

デンゼル・カリー
🄫Masanori Naruse

イヴ・トゥモア、Tohji、デンゼル・カリーらの先進的なステージングは、自らのスタイルを大きく更新する野心に溢れていたし、アンダーソン・パークのファンキーでメロウな歌声、ノレッジのエッジの効いた選曲が際立ったノー・ウォーリーズなど、初日にして早くも今年のフジロックはクライマックスに突入。別途個別にレポートした矢沢永吉の名演も、もちろん初日を語る上で欠かすことのできないハイライトの1つだ。

ノー・ウォーリーズ
🄫Masanori Naruse

だが、やはりこの日の主役はストロークスだった。当時ロックキッズだったであろう親子連れのファンから、『The New Abnormal』(2020年)を入り口に初めて彼らを目にする若いオーディエンスまで、GREEN STAGEに集まった人達の期待がステージに注がれる。

“The Modern Age”のギターリフとドラムが鳴り響いた瞬間、勝負あり。一時期は空中分解寸前だったバンドが、メンバーそれぞれのソロ活動と人間的成長を経て到達できる領域、今まさに目の前にいるストロークスはそこに足を踏み入れている。それは“Is This It”や“Reptilia”といったヒットナンバーをプレイしつつも、“The Adults Are Talking”、“Ode To The Mets”など最新作の楽曲がバンド史からはみ出すことなく、むしろ今のストロークスをドライブさせる活力として機能していたことからもわかる。

ストロークス
🄫Taio Konishi

ジュリアン・カサブランカスはじめ、時にじゃれ合うメンバーの姿も微笑ましかった。そんな〈柔よく剛を制す〉現在のストロークスのライブは、2023年の苗場でこそ観る価値があったと言い切っておきたい。

ストロークス
🄫Taio Konishi

 

フー・ファイターズが証明したロックバンドの素晴らしさ

初日深夜のオーヴァーモノで飛び跳ねつつ、夜が明け2日目へ。フレッシュなベニー、d4vdは共にTikTokなどを通じたバイラルヒットを経て脚光を浴びたアーティストだ。2組のフジロックのステージは、対極ながら初見のリスナーを圧倒する内容であった。

“Supalonely”をクライマックスにエレポップ〜ニューウェイブな楽曲をキュートに届けたベニー。オルタナロックな“You And I”をスタートダッシュに2020年代を象徴する“Romantic Homicide”まで、ロックとR&Bを自由に行き来するd4vd。勢い任せな部分含め、それぞれまた単独公演でも観てみたいと思わせるステージだった。

2日目は全体を通して女性アーティストの音楽に酔いしれる日となった。GREEN STAGEでこの日誰よりも楽しそうに演奏していた羊文学、2010年代初頭にデビューしていながらこれが初来日&初フジロックのワイズ・ブラッド、そして90年代、今に続く女性シンガーソングライター/ガールズロックに多大な影響を与えたアラニス・モリセット、真夜中の苗場に独自のクラブカルチャーを築いたロミーと、どのステージもいまだその興奮が忘れらない。

ロミー
🄫Masanori Naruse

スロウダイヴ
🄫Yuta Kato

スロウダイヴの洗練されたフィードバックノイズを少し浴びたのち、満を持して臨んだフー・ファイターズのステージからは、仲間との絆、そしてロックバンドの本質を見せつけられた。余計な前置きなし、いきなり“All My Life”から幕開けたライブは随所でシンガロングが巻き起こる。

誰もが気にしていたであろう亡きテイラー・ホーキンスへの想いも、今年リリースされたばかりの最新作『But Here We Are』の楽曲を中心に、苗場の山々に向かって高らかに放たれた。途中、フジロック開催の数日前に亡くなったシネイド・オコナーへの追悼の念も込め、アラニス・モリセットを迎えてシネイドの“Mandinka”をカバーする一幕も。アラニスの力強い歌声、ジャムセッションにも近い雰囲気で盛り上がるバンドのサウンドが傷ついた人達の心を癒していく。

フー・ファイターズ
🄫Taio Konishi

〈フー・ファイターズの7人目のメンバー〉と冗談まじりに紹介されたゲストのパトリック・ウィルソン(ウィーザー)とは“Big Me”を披露。ウィーザーではドラマーであるパトリックだが、パット・スメアに代わってギターを務める姿はなんとも愛おしかった(曲の最後にはパットがサポートに入るシーンも)。最後は大合唱となった“Best Of You”と“Everlong”で完全燃焼。ロックバンドはこんなにも素晴らしい、フー・ファイターズはいつもそれを証明してくれる。

フー・ファイターズ
🄫Taio Konishi

 

最後のフジロックで歴史に名を刻んだBAD HOP

フジロック最終日は、英リーズの新鋭ヤード・アクトから。初日のアイドルズで感じた〈ポストパンクの次なる可能性〉、その答え合わせを早くもしているかのようなライブはリリース間もない最新シングル“The Trench Coat Museum”を筆頭に、音源以上にラウドかつポップなサウンドが心地いい。今年12月には再来日を果たし単独ツアーも行うとのことで、今後のさらなる飛躍にも期待したいところだ。

3日目はバラエティ豊かなステージが多数展開された。炎天下のGREEN STAGEをハードなEDMアンセムで染め上げたグリフィン、WHITE STAGEで唯一無二のハイパーポップを爆音で鳴らした100ゲックス、入場規制となったRED MARQUEEで独自のサウンドをその場で構築し続けたFKJなど、フェス最終日ながら各ステージの熱量はさらに増していった。

FKJ
🄫Daiki Miura

苗場の地で白いフリルの衣装がよく映えるYUKIのステージも圧巻だった。6年ぶりのフジロックはラモーンズ色全開な“My Vision”を皮切りに、“JOY”や“プリズム”といった代表曲も押さえたフェスならではのセットリストに。観客の飛ばすシャボン玉にYUKIが目を奪われる姿も印象的だった。

YUKIからのバトンを受け取ったBAD HOPは、RIZEから金子ノブアキとKenKen、そしてthe HIATUSからmasasucksと伊澤一葉を迎えたバンドセットで初にして〈最後のフジロック〉に挑んだ。急遽のオファーに対して、従来通りのステージではなく未知の領域にチャレンジするその心意気も素晴らしい。即席な感じは一切なく、“Kawasaki Drift”をはじめミクスチャーロックに変貌した楽曲、そしてフジロック仕様にデザインされた演出の数々がBAD HOPの本質をえぐり出す。BAD HOPによる最初で最後のフジロックは、フェスの歴史に残る最高のステージとなった。

BAD HOP
🄫Masanori Naruse

最終日のヘッドライナーを飾ったリゾのステージも、フジロック史に残るメモリアルな内容だった。ゴージャスなセットと華やかなダンサーを率いて“Cuz I Love You”、“Juice”、“Special”といったヒットナンバーを連発。米ビルボードチャートで幾度となく1位を獲得し、グラミー賞にも輝いたアーティストのステージをタイムリーに観ることができる、こうした時差のない体験はとても重要なことだ。

リゾ
🄫Masanori Naruse

以前から「美少女戦士セーラームーン」への作品愛を表明していたリゾだが、日本の地で念願の〈ムーン・プリズムパワー・メイクアップ〉を叫んだ後の表情はとても感慨深そうだった。続けてコールドプレイ“Yellow”をピアノ伴奏のみでカバー、そのままフルートで“Coldplay”を華麗に奏でる流れも秀逸で、R&Bやディスコ愛に満ちたボーカル曲以外でも、その高いエンタメ性を存分に発揮していた。

リゾ
🄫Masanori Naruse

 

フジロック=記憶に埋もれないロックフェス

冒頭でも少し触れたが、2023年のフジロックは現場にこだわり、従来の在り方へと回帰していったように思えた。都心の喧騒から離れ、苗場スキー場という越後の山々に囲まれた立地に身を置き、ニューカマーからレジェンドまで、痒い所に手が届くラインナップに頭を悩ませながら音楽を浴びる。不便な部分もあるし、数万人単位の人々と空間を共有するのだから不平不満を言いたくなる人もいるだだろう。

そんな状況に価値を見出せるかは人によるが、少なくとも筆者は、あの環境でストロークスやフー・ファイターズを観れたから、数週間経った今でも鮮明にステージを思い出すことができる。他の記憶に埋もれないロックフェス、それがフジロックなのだ。配信だけでは得られない音楽体験を、来年以降一人でも多くの方に味わってもらいたい。

フジロック最終日の翌日、キャンプサイトから見た苗場スキー場

 


TV INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL'23完全版
放送日時
DAY1:2023年9月29日(金)22:00~26:00
DAY2:2023年9月30日(土)20:00~24:00
DAY3:2023年10月1日(日)20:00~24:00

放送チャンネル:フジテレビNEXT ライブ・プレミアム/フジテレビNEXTsmart
https://otn.fujitv.co.jp/fujirock23