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スチャダラパー “彼方からの手紙”

スチャダラパー 『WILD FANCY ALLIANCE』 キューン(1993)

クラシック『WILD FANCY ALLIANCE』の最後の曲。タイトルの元ネタは歌謡曲“カナダからの手紙”だろうが、手紙の形式で不在の〈あいつ〉に自分たちが今いる桃源郷の自然の豊かさ、気候の快適さ、モラトリアムなどを歌う。〈普段くらしてると見逃しそうな/事も色々わかるようになった〉というラインが象徴的だが、この曲は解放的なトリップソングでもある。同時に、浮世から解き放たれ死後の世界からの手紙のようでもあり……。

 

スピッツ “君が思い出になる前に”

スピッツ 『Crispy!』 ポリドール(1993)

4作目『Crispy!』からカットされたシングルで、“ロビンソン”(95年)のリリースや“空も飛べるはず”(94年)の時差ヒットよりも前に初めてオリコンランキングへ入り、成功への足がかりになった曲。ゆったりとしたミドルテンポ、マイナーコードを効果的に配置した淡いメランコリアが特徴だが、批評家の伏見瞬が「スピッツ論」で指摘するとおり、〈Aメロ、Bメロ、サビ〉というJ-POP的な構成に挑み、歌詞もシンプルにするなど、大衆に受け入れられることをねらっている。カバーも多く、愛されている曲。タイトルは、吉田拓郎の“春だったね”(72年)の歌詞(〈僕が思い出になる頃に/君を思い出にできない〉)に由来するそうだ。

 

CHAGE and ASKA “YAH YAH YAH”

CHAGE and ASKA 『RED HILL』 ポニーキャニオン/AARD-VARK(1993)

ダブルミリオンを売り上げたチャゲアスの代表曲。バラード路線からの転機を掴んだアップテンポな曲で、ドラムビートの変化やブラスを駆使したドラマティックなアレンジも力強く、何度聴いても発見がある。〈今から一緒に これから一緒に 殴り行こうか〉〈今からそいつを これからそいつを 殴りに行こうか〉という一度聴いたら忘れられないフレーズが秋元康への怒りに由来する、というエピソードは有名。そのことを措いても、聴き手を鼓舞するエンパワーソングだからこそヒットしたのだろう。〈YAH YAH YAH〉と繰り返すだけのシンプルなサビを含めて、カラオケの時代を象徴する曲でもある。

 

DEEN “このまま君だけを奪い去りたい”

DEEN 『DEEN』 B-Gram(1994)

デビューシングルにして代表曲、ミリオンヒットした最大のヒット曲だ。作詞は上杉昇、作曲は織田哲郎、編曲は葉山たけし。元々NTTドコモ〈ポケットベル〉のCMソングに決まっていたこの曲は、WANDSのシングル“時の扉”の両A面曲として収録される予定だったが、タイアップ先がNGを出したという。そこで別のボーカリストが歌うことになり、池森秀一が担当したことがバンド結成のきっかけになった、という逸話が残されている。派手なイントロから、ピアノとアコースティックギターと池森の歌のみのAメロ、Bメロ、サビへ。その後、再びバンドの演奏が加わる構成が実にドラマティックで、池森が歌い上げるボーカル表現が情感を深く伝える。今年、ベストアルバム『DEEN The Best DX ~Basic to Respect~』に30周年版が収録された。

 

電気グルーヴ “N.O.”

電気グルーヴ 『VITAMIN』 キューン(1993)

名盤『VITAMIN』の収録曲で、翌94年にカットされたシングル。初のヒット曲として電気の名を知らしめた。ファンには知られているとおり実は古い曲で、インディーズでリリースした1作目『662 BPM BY DG』(90年)の“無能の人(LESS THAN ZERO)”のリメイクである。前身バンドの人生が解散したあとの石野卓球の無力感やモラトリアムが歌われているが、それを歌詞とは対照的な軽やかでかわいらしいテクノポップに乗せてしまうところが〈らしさ〉か。曲名の由来であるニュー・オーダー調のギター、ハウス風のピアノなど、プロダクションや砂原良徳の手腕が光る。