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インタビュー

カザルス弦楽四重奏団がバッハ“フーガの技法”に挑む――熟考の末に完成させた新譜をトーマス兄弟が語る

カザルス弦楽四重奏団『J.S. バッハ:フーガの技法』

©IGOR STUDIO

結成25周年にカザルス弦楽四重奏団が“フーガの技法”を世に送り出す

 スペインを代表するカザルス弦楽四重奏団が結成25周年を迎え、J.S.バッハの未完の大作『フーガの技法』を録音した。この作品は自筆譜に楽器の指示が記されていないため鍵盤楽器で演奏される場合が多いが、カザルス弦楽四重奏団は4本の弦で各々の声部を鋭敏な耳をもって演奏。自身の楽器と他の楽器とのバランスを十分に考慮し、互いに響き合う形でフーガの複雑さと調和を図り、高度な頂を目指している。来日公演でも披露し、底力を示した。インタヴューでは、第1ヴァイオリンのアベル(弟)とチェロのアルナウ(兄)のトーマス兄弟が作品について雄弁に語った。

CUARTETO CASALS 『J.S. バッハ:フーガの技法』 Harmonia Mundi/キングインターナショナル(2023)

 「結成20周年にはベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲録音を敢行したため、25周年はより特別なプロジェクトを実践したかった。私は学生時代に“フーガの技法”の楽譜に出会い、いつか弾いてみたいと憧れていました。カルテットを結成してからもその夢は消えることなく、常に楽譜がテーブルの上にあったのです。全曲演奏を行うには万全の準備が必要。4本の弦のバランスが大切で、各フーガの意味合いを徹底して考えました」(アルナウ)

 「僕は16歳でメンバーとなりました。当時から弦楽四重奏曲に魅了され、兄に誘われたときはとても光栄だと思った。今回、この作品を演奏するのは大きな挑戦で、新しい道が拓けたと感じています。テンポの選び方も難しく、バッハが残した音符のみを考慮し、自分たちで作り上げて行かなくてはならない。録音は私たちの故郷、カタロニア地方のカルドナ城修道院で行いましたが、とても音響がよく、緻密な演奏ができました。その後、ヨーロッパ各地でツアーを行いましたが、聴衆のみなさんの反応はとてもよかったですね」(アベル)

 「最後に自筆譜にはない“汝の御座の前にわれはいま進み出で”というコラールを演奏していますが、暗い雰囲気から一気に希望の光が見える形で、納得のいく終結の方法を見つけたと思います」(アルナウ)

 彼らは4人でじっくりレパートリーに関して話し合い、民主的に決めるという。

 「各人の考えをとことん考慮し、全員が納得する形で決定します。1年後にはショスタコーヴィチの全曲録音に着手するつもり。ショスタコーヴィチはバッハの影響を受け、古典的な面が特徴。自分たちのショスタコーヴィチを作り上げたい」

 カザルスを敬愛する4人のバッハ、魂に響く演奏である。

取材協力:ザ・ゲートホテル両国 by HULIC

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