ここにあるのは、彼が思っていたことすべて――馴染みのティンバランドに加えて新顔との出会いや懐かしい再会も詰め込んだ6年ぶりのアルバムには、過去を顧みながらも前進するトップスターの意欲が漲っている!
多彩なジャスティン像
思えば昨年のいつかの時点でティンバランドが『FutureSex/LoveSounds』(2006年)時代のサウンドへの回帰を告知していたものだが、今年に入って登場したルイス・ベル&サーカット製の先行シングル“Selfish”を聴いた時点では落ち着いた大人のアルバムになるかと思ったし、ティンバの予告通り往年のサイバー路線に回帰したセカンド・シングル“Drown”が再度ルイス・ベル&サーカット制作だと知った際は、どんな作品になるのか期待と不安が半分ずつになった。が、無事に届けられた6年ぶりのニュー・アルバム『Everything I Thought It Was』は、故郷での日々を辿る独白のような“Memphis”をディープな幕開けにしつつ、およそイメージされる多彩なジャスティン・ティンバーレイク像をリファレンスしたような側面を備えている。本人の発言によるとアルバムのタイトルは、作品の中身を聴かせた友人からの〈君に求めていたすべてのように聴こえる〉という言葉に着想を得て付けたものだそうだが、まさにその感想が相応しいというか、それぞれの楽曲を聴いていろんな時代の空気を思い出す人も多いのではないだろうか。
少し振り返っておくと、彼の5作目『Man Of The Woods』がリリースされたのは、2018年2月にスーパーボウルのハーフタイムショーでヘッドライナーを務める数日前というタイミング。メンフィスで生まれ育ち、以前から影響源としてスリー6マフィアとジョニー・キャッシュを並列に語ってきた彼だが、シングル“Say Something”ではクリス・ステイプルトンを招いてカントリー音楽にアプローチするなど、米南部という己の出自によりフォーカスして新たな側面を見せていた。
その後は深く関わる映画「トロールズ」シリーズの話題を中心にしつつ、それ以外でもDJキャレドやロメオ・サントス、ジャック・ハーロウ、カルヴィン・ハリスとコラボしたほか、ココ・ジョーンズ“ICU”のリミックスやBTSのジョングクによる“3D”のリミックスにも参加。2023年にはティンバランド×ネリー・ファータドとの久々の三者コラボ“Keep Going Up”も放って期待を繋いできた。
一方では秘密裏にインシンクのリユニオンも進んでいて、同年9月に開催された〈MTV VMA 2023〉にプレゼンターとして5人でサプライズ登場(興奮しまくるテイラー・スウィフトの様子も話題になった)。彼らの20年以上ぶりの新曲“Better Place”は11月公開の映画「Trolls Band Together」にフィーチャーされた。そうした状況と並行してジャスティンは自作を4年かけて作ってきたそうで、このたび通算6作目のアルバム『Everything I Thought It Was』がようやく届いたわけだ。