マイケル・ジャクソンの3年半ぶりのアルバム『Xscape』に紐づく作品あれこれ
マイケルとポール・アンカが共作した“Love Never Felt So Good”の初出となるのはこちらのアルバムにおいて。ジョニー・マティスはソウルというよりもポピュラー歌手寄りの人だけに、この曲がはんなりと纏ったAORマナーには相応しい人選だったろう。なお、このジョニー版ではキャシー・ウェイクフィールドが作詞に加わっている。
今回“Love Never Felt So Good”のティンバ・ヴァージョン(デラックス・エディションのみ収録)で、近くて遠い存在と〈共演〉を果たしたジャスティン(“What More Can I Give”もあったけど)。このソロ・デビュー作にネプチューンズが提供したヒット“Rock Your Body”はマイケル用に書かれたものだったと後に明かされている。
マイケル版の“Behind The Mask”がダフト・パンクっぽく聴こえたなら時代がグルグル輪廻している証拠。往年のディスコ・フュージョン感を意図して西海岸の重鎮セッション・プレイヤーを従えた本作には、ジャクソンズ時代からマイケルやジャーメイン作品ではお馴染みのポール・ジャクソンJrやジョン・ロビンソンらが名を連ねている。
前評判に違わず見事に〈コンテンポライズ〉された『Xscape』を聴いた後にこの前作を改めて聴くと、やはり楽曲同士が主張し合うまとまらなさや、最終的に時流をあまり気にしすぎないノリが『Dangerous』以降のマイケルらしさを体現しているのでは……と改めて思えてくる。10年後に聴いても時代を超越してマイケルが飛び出てくる一枚。
“Slave To The Rhythm”と同時期、LA・リードとベイビーフェイスが専心していたのは、ジャクソンズ作を経て交流を深めたジャーメインの移籍作だった。弟を口撃したせいで顧みられにくい作品だが、ラフェイス・カーテルの仕事ぶりは悪いはずがない。ここで手綱を握ったLAが現在はマイケルを〈後見〉しているのも縁だろう。
ここに収録されているロッド・テンパートン作法のディスコ・チューン“Treasure”は、温かみのある歌声も相まって昨今のディスコ~ブギー流行に先鞭をつけた重要な逸曲だ。もともとある種の産業ロック感や大衆性を衒いなく備えている稀有なクリエイターだからして、この先も折に触れマイケルを思い出させてくれるに違いない。
マイケルの意志で完成を見た最後のオリジナル・アルバムだ。『Xscape』のキーになる表題曲やドクター・フリーズとの共作曲など、多くのナンバーはここからのセッションの産物とされているので、いま聴き比べるべきは本作じゃないか。改めて聴くとこの頃のロドニーらしく疑似ティンバ・ビートの“Heartbreaker”もあっておもしろい。