OLLY MURS Never Been Better Syco/Epic UK/ソニー(2014)

 

確かな成長と新章の始まりを予感させる充実作

 冒頭からジャスティン・ティンバーレイクを彷佛とさせるファンキー・ディスコの変化球にまずビックリ。続く先行シングル“Wrapped Up”も同様路線を押さえつつ、トラヴィー・マッコイジム・クラス・ヒーローズ)と共演。デミ・ロヴァートとのデュエットなどもあり、いつものオリー・マーズよりずいぶん攻めモード。US進出も視野下というわけか。もちろん、聴き進んでいくうちに彼らしさ溢れる定番感にも包まれるのだが、ふたたび本編ラストでポール・ウェラーの共作/プロデュース曲“Let Me In”が飛び出し、日本盤ボートラにはオノ・ヨーコが英詞を手掛ける“上を向いて歩こう”のカヴァーという飛び道具まで装備。安定感とチャレンジ精神とを交差させながら、現在の充実ぶりを伝えている。

 前2作で全英No.1を獲得。4枚目となる本作『Never Been Better』も同様だ。持ち前の好感度だけでもお茶の間アイドルとして続けていけそうだが、シンガーとしてさらなる高みをめざし、絶対的な個性/芸風を確立しようと挑戦しはじめた。そんな彼の意気込みがスマートに昇華された意欲作。三十路に突入したオリーが、これからパフォーマーとしてどう成長していくのか。一皮剥けそうな、新チャプターの始まりを思わせる。 *村上

 

時代のモードと本人の趣味がシンクロした幸福な一枚

 坂本九“上を向いて歩こう”のカヴァーが日本盤にボーナス収録されるという一報にはいわゆる企画モノ的な印象も受けたのだが、オノ・ヨーコが(中村八大の子息・中村力丸氏の依頼で)英詞を書き下ろしたその“Look At The Sky”は、国や状況は違えど国民的なエンターテイナーが歌うに相応しい、親しみやすくポジティヴなものに仕上がっていて感心させられた――そう、いまやオリー・マーズは英国の国民的歌手に数えていい一人だろう。その華やかなアイドル性と人懐っこいキャラクターが愛されて、活躍はすでに本業に止まらない。本人のペンによるリリックや人間味に溢れた歌声という音楽的な魅力にもそんな人柄はもちろん反映されていて、ここで紹介する4枚目のアルバム『Never Been Better』も本国では当然のようにチャートを制している。

 で、先行ヒット“Wrapped Up”のディスコな意匠を例に挙げるまでもなく、今回も時流を捕まえる作りの巧さは特筆すべきだ。ただ、それも含めて、英国産らしくソウル・オリエンテッドなポップネスを追求してきた過去3作からの延長線上で捉えるほうが真っ当だろう。その意味ではいままで通りにオリー自身の好みが突き詰められた作品だし、師匠(?)のテイク・ザットジョージ・マイケル(冒頭の快曲“Did You Miss Me?”は“I Want Your Sex”にそっくりだ)から連なる伝統を改めて感じざるを得ない。だからして、その系譜をさらに遡ったところにいるポール・ウェラーが参加していることも決して意外ではないのだ。主役の満足度の高さは〈これ以上ない〉というアルバム表題が示す通りだが、如実に高まっている作品全体のクォリティーを思えば、それもすぐに覆されることだろう。 *出嶌