テーマは〈ヴァイオリンで愛を奏でる〉――リサイタル等で好評の“愛の讃歌”を新規録音!

 ベスト盤もヒット曲集、名演集などいろいろだけれど、宮本笑里のベスト盤『emiri best2』は、彼女自身が「わかりやすく私を説明できる名刺代わり」と言うように、その足跡を綴る1枚だ。多岐にわたる活動は、クラシックからポップス、オリジナルと多彩な収録曲が物語っている。そのなかには人気の定番曲“風笛”がある一方で、エディット・ピアフの代表曲をヴァイオリンで語りかけるように奏でる新録曲“愛の讃歌”もある。

 「40代の今だからこそ歌える曲だと思っています」

宮本笑里 『emiri best2』 ソニー(2024)

 2013年の初ベスト盤から11年。この間にアルバム4タイトル、EP2タイトルを発表していて、候補曲はいっぱい。そのなかで外せないと考えたのがオリジナルの4曲。そのうち“ニライカナイ”は、新しい試みから生まれた。投稿サイト〈Monogatary.com〉と組んで、公募した物語を読んで書き下ろした楽曲だ。

 「〈あなたの残したい大切な場所〉というテーマで物語を募集したんですね。“ニライカナイ”は、沖縄を舞台にしたお話で、私も沖縄が大好きなので、ぜひ曲を書きたいと思いました」

 他にロックギタリストのDAITAと組んだり、ナオト・インティライミがプロデュースしたりと、収録曲は新たな演奏に挑んできたことを示している。同様にプライベートでは子育てに奮闘。

 「20代の頃は、想像すらしていなかった子育てですが、いざ出産すると、考え方もどんどん変わっていき、私自身が豊かになっていくようでした。それが音楽に反映される部分もいろいろと……」

 その経験から生まれた“birth”がアルバムの冒頭を飾っている。ここから始まり、選曲に加えて、曲順がまた素晴らしい。曲調の異なるクラシックとポップスが絶妙な順番で並べられている。

 「曲順は難しくて、音の情報量も、音圧も、世界観も違うので、マスタリングで調整するのが大変でしたが、“ひばり”の次に“SOLA”を持ってくるなど、意外な着地点を見つけられました」

 でも、なぜ今ベスト盤なのか。アニバーサリーとかではない。

 「若干変化球的なタイミングですよね(笑)。ベスト盤の制作で思うのは、どの曲も聴けば、当時の経験や想いがいろいろと蘇ってきます。だから、聴いて下さるみなさんと一緒に音の旅が出来たらうれしいです」

 ヴァイオリンの美しき演奏で感情の旅をする。ジャンルって何なのだろう。そう思わせる余韻がまた贅沢な時間となる。

 


LIVE INFORMATION
宮本笑里リサイタルツアー2024 -emiri best 2-

2024年10月5日(土)大阪・フェニックスホール
2024年11月8日(金)東京・浜離宮朝日ホール
2024年12月22日(日)愛知・宗次ホール

仙台クラシックフェスティヴァル
2024年10月6日(日)仙台

https://www.emirimiyamoto.com/