テイク・ザットが29年ぶりの来日公演を開催! その魅力と実力を確認しよう!

 90年代の英国において〈ビートルズ以来、もっとも成功したバンド〉と評されてきた元祖ボーイズ・グループのテイク・ザットが、実に29年ぶりとなる来日公演〈THIS LIFE ON TOUR 2024 TOKYO〉を11月18日に開催する。その来日を祝って、2005年に出ていたメンバー公認ベスト盤『Never Forget - The Ultimate Collection』がこのたび再リリースされることとなった。

TAKE THAT 『Never Forget - The Ultimate Collection』 Legacy/ソニー(2024)

 90年にマンチェスターで始動したテイク・ザットは、もともと10代の頃からソロ活動していたゲイリー・バーロウが、敏腕マネージャーのナイジェル・マーティン・スミスと組んで〈英国版ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック〉の結成を計画したところから始まっている。オーディションで集まったのは、銀行で働いていたマーク・オーウェン、ダンサーだったハワード・ドナルドとジェイソン・オレンジ、そして最年少の16歳だったロビー・ウィリアムス。その5人で91年にシングル“Do What U Like”を自主リリースし、同年にメジャー契約すると翌92年の“It Only Takes A Minute”が全英7位まで上昇する。

 その流れでほぼ全曲がゲイリーのペンによるファースト・アルバム『Take That & Party』を発表し、そちらも堂々の全英2位を記録。躍進の過程で初期のユーロ・ポップ的なダンス路線から曲調の幅を拡げていき、93年の爽快なスウィング“Pray”ではついに初の全英No.1を獲得する。同曲を含む2作目『Everything Changes』(93年)からはダン・ハートマンのカヴァー“Relight My Fire”、マークがリード歌唱を担当したスロウ“Babe”、ロビーがメインの軽快なアップ“Everything Changes”と4曲連続で全英No.1を記録。同作はマーキュリーにもノミネートされ、名実共に大物アーティストの仲間入りを果たした。

 勢いに乗って全米進出を睨んだ3作目『Nobody Else』(95年)では同時代のUS産R&Bの作法を意識、ゲイリーとマーク&ロビーが共作した先行カットの名曲“Sure”は全英1位を記録。そしてゲイリーの作による絶品の名スロウ“Back For Good”は初の全米TOP10入り(7位)も果たすが、続く“Never Forget”のプロモーション期間に素行不良の続いていたロビーが脱退する。4人でツアーを終えた彼らは翌96年2月13日(ロビーの誕生日)に解散を表明。翌月の『Greatest Hits』からはビー・ジーズのカヴァー“How Deep Is Your Love”が全英1位に輝いて有終の美を飾った。

 当時ビートルズが引き合いに出された理由としては、そのアイドル性やヒット規模、優れたソングライターの存在などが挙げられるだろうが、両者の最大の違いは、テイク・ザットが再結成を果たし、現在も一線で活躍していることに他ならない。2005年11月にロビーを除く4人でリユニオンを発表した彼らは、大人のグループとして見事に再生。2010年にはロビーが復帰した5人体制での『Progress』で英国音楽史上最大の初週セールスも記録している。2011年にロビーが再脱退し、2014年にはジェイソンも引退するが、そこからはトリオとして〈第3期〉というべきフェイズに突入し、2023年の最新オリジナル作『This Life』でも安定の全英1位を記録している。このたび実現する〈THIS LIFE ON TOUR 2024 TOKYO〉はその最新作を引っ提げてのツアーとなるわけだ。

 一方、今回リイシューされる『Never Forget - The Ultimate Collection』はもともと先述のリユニオン発表に向けてコンパイルされたもので、彼らの90年代の栄光を凝縮した究極のコレクションとなっている。8つの全英No.1シングルを含むラインナップは単にヒットが満載なだけでなく、ここが初出だった未発表の名バラード“Today I've Lost You”も収め、個々のヴォーカル・ワークやアイヴァー・ノヴェロも授かったゲイリーという傑出したソングライターの才能など、彼らの実力を無条件で浴びることができる名曲揃い。さらに、当時は別パッケージで出ていたDVDがセットになっているのも嬉しいところで、そちらには全シングル16曲のMVに加え、ウェンブリー・アリーナなどでのライヴ映像が収録されている。歌って踊るアイドル性の高いグループがフラットに評価される現代とは程遠い時代から自分たちのエンターテイメントを追求してきた彼らの功績と魅力を、現在の勇姿と並んで改めて堪能しておきたい。

テイク・ザットの2018年作『Odyssey』(Polydor)