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ロビー・ウィリアムスの映画「BETTER MAN/ベター・マン」はサントラにも注目!

 「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)が商業的にも大当たりしたぐらいから、直近の「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」に至るまで、数々の著名ミュージシャンを題材とした伝記映画が定期的に生まれてきている昨今、新たな話題作「BETTER MAN/ベター・マン」が日本公開となった。これは「グレイテスト・ショーマン」(2017年)で知られるマイケル・グレイシーが監督したミュージカル・エンターテイメント映画で、英国の偉大なポップスター、ロビー・ウィリアムスの波乱に満ちた半生を描いた作品となる。

 ロビーといえば、ボーイズ・グループのテイク・ザットの一員としてブレイクした後にソロ転向し、(間にグループ復帰も挿みつつ)一貫してトップ・スターとして君臨し続ける、現在進行形のレジェンドだ。英国人のソロ・アーティストとして史上最高の国内アルバム・セールスを誇り、全英No.1アルバムの獲得数もビートルズと同じ。私生活のゴシップやお騒がせなパーソナリティも含めて愛されてきた国民的スターといった印象で、それゆえに日本を含む海外でのステイタスとのギャップは大きいわけだが、その隔たりを埋めるのがマイケル・グレイシー監督ならではの手腕。「グレイテスト・ショーマン」と同じスタッフも迎えた壮大な演出とヴィジュアル表現、感動的な音楽の織り成す物語は、主役について詳しくない多くの人も純粋に映画として魅了するに違いない。ロビー本人の歌う主題歌“Forbidden Road”が第82回ゴールデングローブ賞で〈最優秀主題歌〉部門にノミネートされたのに続き、第97回アカデミー賞では本作が〈視覚効果賞〉にノミネートされてもいる。

 そうした視覚面で最大のポイントとなるのが、主役であるロビーを擬人化したチンパンジーの姿で描くという、奇想天外かつ独創的なアイデアだ。監督によれば、〈パフォーミング・モンキー〉を自認するロビーの視点から描いた結果とのことで、これは〈自分は人より進化が遅れている〉と常に感じていたというロビーの意識の表れでもあるのかもしれない。ただ、ここで猿というフィルターを通すことで、却ってロビーの人間味も鳥獣戯画のように明快に強調される効果を生んでいる。

 物語は少年時代の体験から、父親や祖母との関係、テイク・ザットでのデビュー、ソロ転向後の浮き沈み、恋仲だったニコール・アップルトン(オール・セインツ)との関係、アルコールやドラッグとの闘い、37万人以上を動員した2003年のネブワースにおける象徴的なパフォーマンスまでの足跡を辿ったもので、それを彩るのがキャストたちの歌唱によるロビー(とテイク・ザット)の名曲たちだ。もちろん各曲はリアレンジ/リメイクされ、セリフの代わりに機能したり、場面ごとの心情を物語るように使われている。それら劇中歌をストーリーに沿って網羅したのがこのたび日本盤化されたサントラ『Better Man』となるわけだが、名曲の新ヴァージョンや新曲、カヴァー曲が満載された作品という意味で(テイク・ザット曲をロビーが新録しているのも貴重だ)、2022年の再録ベスト盤『XXV』に続くロビーのニュー・アルバムとしてシンプルに楽しむこともできるだろう。

ROBBIE WILLIAMS 『Better Man』 Columbia/ソニー(2025)

 力強く躍動する“Rock DJ”や繊細な名バラード“Angels”などの代表曲がよりゴージャスな意匠で披露されるのはもちろん、グループ時代にロビーが初めてリード歌唱を担当した“I Found Heaven”をハウスDJのエデン・プリンスがよりダンサブルに仕上げていたり、軽快な“Something Beautiful”が美しいバラードにリメイクされたり、原曲からの進化/変化も興味深い。依存症や内面の苦しみを描く局面での“Come Undone”ではジェイソン・ヒル(ルイ14世)をプロデュースに迎え、祖母を偲んでより良い自分になることを誓う表題曲“Better Man”はジェイコブ・コリアーが共同制作。ウィルソン・ピケットで知られる往年のソウル・ヒット“Land Of 1000 Dances”のカヴァー(制作陣にはアダム・ブラックストーンの名も)も痛快だし、ニコールとのロマンスを彩る“She’s The One”や父との絆を象徴する“My Way”がそれぞれキャストとのデュエット仕立てになるなど趣向もさまざまだ。

 先述の主題歌“Forbidden Road”もエンドロールに相応しい味わい深さを残す出来映え。心を揺さぶる娯楽大作となった本編とサントラを入口に、この偉大なるショーマンの世界をぜひ堪能していただきたい。

左から、ロビー・ウィリアムスのベスト盤『Greatest Hits』(EMI/ユニバーサル)、テイク・ザットのベスト盤『Never Forget: The Ultimate Collection』(RCA)、ロビー・ウィリアムスの2022年作『XXV』(Columbia)

 


MOVIE INFORMATION
映画「BETTER MAN/ベター・マン」

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監督:マイケル・グレイシー
出演:ロビー・ウィリアムス ほか
配給:東和ピクチャーズ
2025年3月28日(金)より全国ロードショー
https://betterman-movie.jp/