〈松本伊代 Live 2024 “Journey” Tokyo Lover〉が、2024年10月12日と13日に開催された。2021年にデビュー40周年を迎えて以降、これまで以上に音楽活動に邁進する松本は定期的にファンとの再会の場を設けながら、常にアイドルとしての輝きを放ち続けている。
そんな松本の最新コンサートより、公演初日の模様をライターの桑原シローにレポートしてもらった。 *Mikiki編集部
〈Tokyo Lover〉をテーマに繰り広げられた良曲ばかりのコンサート
松本伊代の単独コンサート〈松本伊代 Live 2024 “Journey” Tokyo Lover〉、2日間あるうちの1日目に駆けつけた。今年のテーマは〈Tokyo Lover〉。彼女がボーカリストとしてフィーチャーされ、東京タワーの春のイメージソングとしてリリースされたNight Tempoの楽曲“Tokyo Love”からの流れを汲んだテーマではあるが、会場である東京・大手町三井ホールの雰囲気とよく馴染んでいて、開演前から会場にはどこかアーバンな空気が漂っている。
そんなシチュエーションと、客席前方一帯で集中力を高めつつ待機する親衛隊の皆さんが羽織るピンクの法被が鮮やかなコントラストを成していて、がぜん気分がアガる。
開演の時間を過ぎ、気合いの入った〈伊代ちゃんコール〉が会場中を包み込むと、ファンキーなギターカッティングに乗って、テレビの国から飛び出してきたかのようなミニスカ姿のキラキラな伊代ちゃんが登場する。
コンサートの幕開けを飾ったのは“Private fileは開けたままで・・・”。1989年作『Private File』に収録され、フィメールシティポップの傑作のひとつに数えられるこのナンバーこそ、動き出したばかりの魅惑のサタデーナイトを飾るに相応しく思えた。すでに会場は沸騰状態。続いて哀愁のメロディーに彩られたアップチューン“ビリーヴ”が繰り出されると、会場に鳴り響くかけ声もいっそう熱を帯びていく。
最初のMCでは、「(東京は)私が生まれ育った街であり、自分を育んでくれた大事な街をテーマにしたライブにしたい」と本公演の趣旨を語る。つまりは、生粋の東京っ子としての心意気を披露しようということなのだろう。昨今、サブスクを通じて海外でも高い再生回数を誇る人気曲もいろいろと楽しめそうだ。
そして繰り出されたのは、“チャイニーズ・キッス”にはじまるエキゾムードが濃いめのヒットシングルたち。チャーミングさではバリー・マニロウの有名曲にも引けを取らないラテンディスコ曲“太陽がいっぱい”やチャイニーズテイストが隠し味の“抱きしめたい”など、リリース当時よりも色気を増した歌声がグッと引き立つメドレーだった。
デビュー40周年イヤーからふたたび活気づいている彼女の歌手活動。体調も含めてコンディションは万全、といった印象がこの日のどのパフォーマンスからも伝わってきた。ダンサブルなナンバーにおいても、しっとり聴かせるナンバーにおいても、ますます磨きのかかった表現力を発揮して、ただただ圧倒される。
ひょっとしなくても、シティポップブームで彼女を知ったリスナーたちはいまこそライブに駆けつけるべきではないか? なんて考えていると、MCタイムに「海外でも聴かれているみたいだけど、シングルよりもアルバム曲のほうが人気が高いみたいで。Night Tempoさんの影響も大きいのかな。音楽監督を務めてくれている船山(基紀)先生をはじめとする人が〈伊代のために良い曲を作るんだ!〉って言ってくれていたから」というトークが聞こえてきた。確かに、とにかくこの日もただただ良い曲しか用意されていなかった。
そんな思いは、小西康陽作のスウィートなソフトロック“有給休暇”、メロウ&グルーヴィーな“バージニア・ラプソディ”といった今後サブスクを通じて人気が高まってきそうな通好みな曲が並ぶパートにおいて、いっそう強くさせられた。