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村上春樹の問題意識とのリンク

――“愛のデタッチメント”といい、アルバム全体で描かれている社会との繋がりというテーマといい、村上春樹さんが話していたデタッチメントとコミットメントの話を想起したのですが、意識したのでしょうか?

「村上春樹さんがエルサレムのスピーチで話していた卵と壁の問題は自分の中のテーマのひとつでもあります。社会のシステムに個人がどう立ち向かうか、どう振る舞うべきかということと、自分が感じていた恋愛におけるわかり合えなさ、そこでの新たな自分の発見はリンクするところがありますね」

――先ほど言及されたShinji Wakasaさんの『Dawn』以外に、どういった曲を制作時期に聴いていたんですか?

「今年は特に坂本龍一イヤーでした。アンビエントはずっと好んで聴いていたんですが、なんで良いのかを言語化できずにいたんです。でも坂本さんの『12』を聴いて余白や音楽に限らず時間や存在の固定観念を壊していくようなところが良いんだろうなと思い、坂本さんの過去の楽曲を遡ったりアートの文脈を勉強したりした楽しい一年でした。

大学でディープランニングや人工知能を専攻していたコンピューターオタクでもあるので、OPNなどの影響も受けていると思います」

 

自分の音楽を永遠に残せるか

──アルバムのラストを“How Many Nights”にしたのにはどういう想いがあったのでしょう?

「〈最後の曲はどういう曲がいいだろう〉と思った時に、ビートルズの“Good Night”みたいな眠りにつくような曲で愛についてしっかりと向き合ってみたいと思って生まれた曲です。

〈あとどれくらい物語/あなたに書き続けられるかな〉という歌詞は結構真に迫っていると思いますが、〈自分がこれから一生の内にどういうアルバムをあとどれくらい作れるんだろう〉と思った心の揺れ動きを表現したかったのと、一種の覚悟も表れてると思います」

──okkaaaさんはまだ20代半ばですが、終わりを意識したような歌詞がなぜ出てきたのかが気になりました。

「自分が永遠に音楽を残せるかということは、この曲を書いた時のテーマのひとつでした。元々僕の作法って、トラックを見つけてライセンス契約をして、世界のビートメイカ-と繋がって、そこに自分が景色を乗せていくという、世界を船で渡るみたいなことなんです。そういうことをやっていく中で未来に自分のコピーライトが残るのかということを根詰めて考えていて生まれた歌詞だと思います。

この曲のアンサーとして1曲目の“永遠エンジン”があって、最初に戻ってぐるぐる回るようなアルバムになっているんじゃないかなと思います。自分が一瞬思ったことや感じたことが録音されて残るのは、すごくロマンチックだなと思うんです。新しい自分になった瞬間や心を動かされた瞬間を捉えることができるならそれだけでいいんじゃないかなって思えて、“永遠エンジン”ができました。流れとしては“How Meny Nights”で考えていたことが“永遠エンジン”や“汽笛モノローグ”に結びついていったという感じです」