Disc From New Vibes
Momや空音とフィーリングを共有する才能たち

直近ではSPiCYSOLとのコラボも印象的だった23歳。従来的な意味での越境感覚もありつつ、そもそも越境を要さない持ち前のマイルド・スタイルが、EQやMichael Kaneko、Shin Sakiuraらを起用した彩度の高い多種多様な音にしっくり絡む。若さゆえのスロウバック感も微笑ましく、二重の意味で眩しい季節が似合う作品。 *轟

 

Tempalay 『21世紀より愛をこめて』 SPACE SHOWER(2019)

さまざまな音楽のエッセンスを採り込んで無二のサイケ・ポップを紡いできた彼らだが、とりわけ近年の作品からはヒップホップからの色濃い影響が見て取れる。この最新作でも“どうしよう”や“SONIC WAVE”あたりのビートや音像に顕著で、Tempalayが磨き上げてきた酩酊感のあるグルーヴにさらなる奥行きを与えている。 *澤田

 

maco maretsらとのHOTEL DO­N­U­TSにも名を連ねるセルフ・コンテインドな新星の初アルバム。ネオ・ソウルやディスコを……と雑に形容すれば陳腐だが、クセのある歌唱と密室的な閉塞感を湛えた意匠はテンプレでは終わらない。SIRUPやshowmoreらに通じる素直な聴き心地の良さもあり、さらに注目されそうな逸材だ。 *轟

 

空音やRin音らと親交の深い、福岡を拠点とする21歳のMC。恋愛事や日々の営みの中で浮かんでは沈む気分をそのまま写し取ったようなリリックは、どこかナイーヴで感傷的。メロウな人気曲“ベッドタイムキャンディー2号”の他、Mega Shinnosukeがトラックを提供した“Wakakusa night.”の黄昏色のグルーヴが特に美味。 *北野

 

Mega Shinnosuke 『東京熱帯雨林気候』 Mega Shinnosuke(2019)

編曲も映像制作も自身で担うシンガー・ソングライターのセカンドEP。本作ではバンド・サウンドに焦点を絞っているが、それでもトランペットが鳴り渡るネオアコからパンキッシュなナンバーまで、広い振り幅のサウンドを紐解いている。多種多様な音を手繰り寄せて瑞々しいポップスを生み出す手つきはMomとも重なる。 *澤田

 

当初はビートメイカーとして活動していた彼が、初のラップ・アルバムを経て全編でオートチューン歌唱に取り組んだ一枚。自身が曲作りを始めるきっかけになったというtofubeatsとのコラボ曲をはじめ、“水星”以降のレイジーなムードを基盤にしつつ、ゲーム音楽の要素など〈らしさ〉が満載だ。Yogeeの角舘健悟やBIMらも参加。 *北野

 

TOSHIKI HAYASHIらとのコレクティヴ、HOTEL DONUTSでも注目される福岡出身ラッパーの現時点でのソロ最新作。東里起(Small Circle of Friends)による優しいアンビエンスと5lackの影響も薫る柔らかな歌い口が好相性で、ソフト・フォーカスな音風景から本来的な意味のチルな快感がゆっくり立ち昇ってくる。 *轟

 

RhymeTube製の冬ソング“snow jam”で広く名を知らしめた福岡発の新星ラッパーによる初フル・アルバム。スウィートなラヴソングの数々が、クラウド・ラップ的な表情も宿したドリーミーなトラックと合わさってひたすらに心地良い。あらゆる聴き手の乙女マインドをくすぐるメロとリリックの非凡な技巧に痺れてしまいます。 *澤田

 

シティーなR&B風の“東京フラッシュ”で話題を呼んだ19歳のシンガー・ソングライターによる初作。アコギのループがリードする“life huck”、サビにKOされる“不可抗力”ほか先行曲はラップ調を採り入れたものも多かったが、ここでは昂揚感溢れるギター・ロックやカントリーなど多彩な引き出しを開陳。色気のある声も◎。 *土田

 

姫路のラップ・クルー、MaisonDeに所属するMCの初作は、メロディアスなフロウと20代前半の等身大のリリックに詩的な歌心が滲むラップ・アルバム。“晴れた日ぐらいは”あたりはトラックも含めてとてもポップで、時流を押さえたトラップや自身のルーツにあるソウル/ファンク曲なども併せ、全編を貫く風通しの良さが印象的だ。 *土田

 

海外のエモ・ラップ勢とも共振する、刹那的で鬱屈した世界観を映し出す大阪出身のラッパー。時にハイに、時にダウナーに、まるで情動の赴くがままに紡がれるフロウは、オルタナ寄りのギター・サウンドを敷いた、くすんだトーンのトラックとの相性もバッチリだ。この初アルバムでは、BACHLOGICが全面でバックアップ。 *北野

 

変態紳士クラブでもシーンを跨いで賑わせているMCが、SIRUPや舐達麻のBADSAIKUSH、鋼田テフロンらを招聘して作り上げた2作目。90sマナーのファットなビートからトロピカル・ハウス、アンビエントな装いのスロウまで、時にキャッチーで時にドープなトラック群を余裕たっぷりに乗りこなす身のこなしがクールすぎる。 *澤田

 

ウィスパー・ヴォイスによるラップ/歌とアンビエントなトラックで淡い色彩のベッドルーム・ポップを構築する写真家/文筆家/シンガー・ソングライター。DIYな活動形態によって、自身の哲学を映像も込みのトータル・コーディネートで表現している。7月にはCaroline Internationalからの配信EPも控え、新たな展開も? *土田

 

ドミコ 『VOO DOO?』 ユニバーサル(2020)

ヴォーカル/ギターとドラムス/コーラスを担当する2人組というミニマルな編成から繰り出されるアイデアの応酬。本作ならリズミックなビートと歌メロが立った極彩色のサイケ・ポップやテレヴィジョンのアノ曲の脱力引用、抜きに徹したSFアンビエント・チューンなど、〈逸脱〉をポップに着地させる手腕にMomと近いフィーリングが。 *土田

 

Saint Vega 『能動的Silece』 Ourlanguage(2020)

クボタカイ“真冬のショウウィンドウ”でトラックメイカーとしても注目された宮崎在住の才能。この初作ではオートチューン歌唱のリリシズムを軸に、何周かしたヴェイパーウェイヴの残照が仄暗くも甘い倦怠と共鳴するかのよう。valkneeやuyuni の好演もあるが、Gokou Kuytとの“Fast Lane & Slow Dive”がやはりいい。 *轟

 

ぜったくん 『Bed TriP ep』 ラストラム(2020)

自虐もSMAPやRIP SLYMEのラインを感じるトラックでとことんポップ/キャッチーに聴かせるMC/トラックメイカー。本作はタイトル通りにインドアな……というか、ナードさとファレル流儀のハッピー・フィーリングに冒頭の“Catch me, Flag!!?”からいきなり掴まれる初EPだ。入江陽、さとうもか、SUKISHAの援護も素敵。 *土田