
クソなマイナスをどう0に持っていくか
――1曲目の“永遠エンジン”を〈飛び込むぜ飛行機〉というフレーズから始めたのは、どういう想いがあったんでしょう?
「社会と繋がりたいという意識が、まさにその一節に表れてると思います。ずっと地面を掘っていたから、空を飛びたいなと思って(笑)。〈もっと高いところに行きたい〉〈もっと社会と繋がりたい〉と思って海上を船で往復していましたが、飛行機に乗り換えたというか。
飛行機ってすごく人工的なものだと思うんですが、その中に僕なりの自然観とかを入れ込むのが自分らしい表現かもしれないなと。実は自分の本名も飛行機に関連しているんです。制作している中で〈一瞬を永遠にする〉というテーマが浮かび上がってきて形になったのがこの曲ですね」
──〈くだらない世界を放り出して/忘れないで鳴らせよ/君だけの永遠!〉という歌詞がありますが、〈くだらない世界〉とはSNSでいざこざが起きるような世界のことですか?
「そうですね。SNSの空気感は美しいと思えなくて、そのマイナスをどう0に持っていくかという感覚があります。
あと、クソなものにはちゃんとクソだと言っておこうかなと。前は優しい言葉を選んで歌詞にしていたんですが、もっと好き嫌いをしっかり描かないと自分のキャラクターが伝わらないんじゃないかと思いました。結果、寺山修司や三島由紀夫のような肉感的で身体的な言葉を含んだ歌詞が増えていると思います」
――マイナスを0にするという感覚は“ヴォイドな夢”に出ていますよね。
「まさにですね」
――“ヴォイドな夢”の〈大人になってまた会いましょう〉とか〈僕らはいつか繋がれるよ〉とか〈僕らはまた踊れるよ/何もないこのクソな世界で〉といった歌詞からは、現世を諦めたような感覚を感じました。
「意識的ではないんですけど、確かにそういう超越的な思考になる瞬間はあると思っています。
今年の前半に坂本龍一とダムタイプの舞台『TIME』を見て時間の概念について考えて、その後未来派についての文章を色々と読む中で、自分たちが持ってる時間の感覚は主観的なもので、そこから逸脱した音楽とはなんだろうという問いに感化されたんです。時間や空間の実態がない中でどう意識を飛ばせるかということが、この曲のテーマとしてあったかもしれません」
「真面目だね」と言われるラッパー
――アブストラクトやアンビエントの要素が強いアルバムですが、“CALL MY NAME”はこれまでのokkaaaさんがやっていたヒップホップのイメージが強い曲ですよね。
「そのバランス感覚が面白いかもなと思って入れてみました。幼少期はアイドルがすごく好きでJ-POPを聴いて育ってきて、J-POPの中でレフトフィールドの感覚をどう表現していくかということにずっと挑んできて、自分ならではのバランスとして入れた曲ですね」
――ポエトリーをやったことでヒップホップ的なトラックにおけるボーカルの詩的なムードが増した印象なのですが、いかがでしょう?
「自分の情緒性みたいなものを音楽に流し込む場合、アンビエントなトラックだとやりやすいと思っていて、次はその方向性を推し進めた作品を作ってみたいという気持ちがあります。
一方で、自分はラッパーがトラックに歌やラップを乗せた曲をSoundCloudへたくさんアップロードしていた文化を背景に音楽を始めているので、その文脈もしっかり残しておきたいなと思って、こういうバランスになっています。
普段の自分も普通に話をしてるつもりなんですけど、〈すごく真面目なんだね〉ってよく言われるんです。それによって場がしらけるというか(笑)。自分は陽気ではあると思うのですが、音楽を作ると真面目さが出る。そこはコンプレックスでもあるのですが、自分のキャラクターとして音楽に出していけたらいいなと思いました。
具体的にどういう方向性がハマるのかはまだわからないのですが、静けさを希求するものがしっくりくるんだろうなと思ってます。でもポップなものが好きな自分もいるので、そのバランスを引き続き探求していきたいですね」