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スウィング・アウト・シスター、バーシアらと共振するボーカルスタイル

ご存じの方も多いだろうが、谷村有美ミュージックの主要な構成成分は、ジャズ/フュージョンだ。10代の頃、友人からもらったカセットテープに入っていたスタッフの音楽にどハマりし、なかでもキーボーディストのリチャード・ティーの演奏にすこぶる心酔。学生時代はキーボードプレイヤーとしてフュージョンバンドに参加し、腕をふるった(デビュー後のライブステージにおいてもリチャード・ティーへのリスペクトを高らかに表明するピアノ演奏を披露していた)。

そんな彼女の資質は、各アルバムとじっくり対峙すれば一目瞭然。例えば、記念すべきファーストアルバム『Believe In』。CDのセールスがアナログレコードのそれを初めて上回ったことで記憶される1987年にリリースされた本作は、80sポップ特有のエレガントさが凝縮されたかのような名盤だが、多くのトラックが英米のフュージョンサウンドにインスパイアされたデザインで仕上げられており、サウンドプロダクションの質の高さにいちいち惚れ惚れさせられる(アレンジは全曲、大村雅朗が担当)。

谷村有美 『Believe In (2024 Remaster)』 ソニー(2024)

主役である谷村のボーカルスタイルからは、同年にファーストソロ『Time And Tide』を発表しているバーシアや(彼女が参加していたマット・ビアンコからの影響が色濃いナンバーも発見できる)、“Breakout”でブレイクを果たしていたスウィング・アウト・シスターといった洒脱でアーバンなUKソウルのクリエイターたちと地続きの世界をめざそうとする意思がハッキリと読み取れる。また、自身の音楽作りのベースに置くべきものはいったい何なのか(憧れの対象との距離感の図り方も含めて)を、この時点ですでに明確化できていた点は高く評価すべきだろう。

曲作りの面でも個性はすでにしっかりと打ち出されていて、デビューシングルに選ばれた“Not For Sale”での凝ったコード進行や転調から、ロック~ニューミュージック系とは異なる出自の持ち主であることが見て取れる(随所に顔を出すボサノヴァ趣味などもそういった印象をいっそう強めていたと思われる)。サウンドの端々にジャズのエッセンスが滲んでいて、それがあきらかに作品の持つハイセンスさに繋がっているあたり、幼い頃からその音楽に親しみ、ジャズピアノにも長けていた松原みきのイメージとダブって見えたりするのだが、どうだろう?