太くて甘く艶やかなギターのフレーズ、いっそうの〈深み〉を増したチャボロ節!

 チャボロ・シュミットの新リリースアルバムは、2022年発表のご機嫌なスタンダード・ナンバー集。いっそうの〈深み〉を増したチャボロ節は、幸福や感傷の多彩なレシピを誇示することなく、自分が今、ほんとうになりたい気分へと自然に向かわせてくれるサプリメントだ。

 ヨーロッパのジプシーたちが始めたジャズのスタイル、いわゆる〈マヌーシュ・スウィング〉と呼ばれる様式を完成させたのはご存知ジャンゴ・ラインハルト。従来のジャズ・コンボの形態にアレンジを加え、セルマー社が開発したスチール弦のギターを用いてリズムを刻み、ハイハットやシンバルの金属的な歯切れよさとスネアやタムに替わるウッディかつしなやかなアタックによるグルーヴでドラム不在のバンド・スタイルを確立。それは新しい音楽の発明と言っても良いほどの革新だった。その音楽を伝承し続ける一族はヨーロッパ中に点在しているそうで、チャボロ・シュミットも音楽一族に生まれた生え抜きのミュージシャンだ。

 ストーケロ・ローゼンバーグやビレリ・ラグレーンをはじめとする現代のマヌーシュ・ギタリストたちが、ジャンゴのスタイルにロックやラテン、フュージョンの語法も取り入れてモダンなサウンドを生み出し続けている一方で、チャボロ・シュミットはジャンゴ由来のストレートなマヌーシュ・スウィングを最も色濃く継承し続けている。そのブレない生き様が結実した面影は、ロマの歴史や民俗に深い関心を持ち、その独特な文化を巧みにストーリーに織り込む映画監督トニー・ガトリフによる1993年の「ラッチョ・ドローム」や、チャボロ氏自ら主演も担った2003年の「僕のスウィング」でもファンを喜ばせたが、やはりその真髄は太くて甘く艶やかなギターのフレーズにあると言って良い。

 今回のリリースは7年ぶりの来日にあわせてのもので、アルバムにも参加しているサイドギターのジュリアン・カティオと、ベースにはアンソニー・ムッチオを引き連れてのトリオ編成。山形、兵庫、大阪、埼玉と続いたツアーの最終日、東京公演は日本の実力派ミュージシャンたちをゲストに迎えてのスペシャル・ステージとなり、ジプシー・スウィングと昭和歌謡がコラボレーションする。

 この機会に、日本のドラマや映画のサウンドトラックにも大きな影響を与え続けてきたマヌーシュ・スウィングの生粋の〈お家元〉マエストロ、チャボロさんのあたたかな抱擁力のギターに身を委ねてみてはいかが?

 


LIVE INFORMATION
チャボロ・シュミット 来日公演2025

2025年8月4日(月)山形・荘銀タクト鶴岡 大ホール
開場/開演:18:30/19:00

2025年8月7日(木)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
開場/開演:18:30/19:00

2025年8月8日(金)大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
開場/開演:18:30/19:00

2025年8月9日(土)埼玉・所沢市民文化センター ミューズ キューブホール
開場/開演:15:15/16:00

チャボロ・シュミット特別公演
越境のコンサート・シリーズ「Beyond」vol.4
東京SWING祭り
ジプシー・スウィング × 昭和歌謡

2025年8月11日(月・祝)東京・草月ホール
開場/開演:16:00/17:00開演

https://www.plankton.co.jp/tchavolo/