チャボロ・シュミット・トリオ

ジャズが媒介となって世界に広がる魅力的な音楽を体感できるフェス

 今年もジャズ・ワールド・ビートが開催される。出演者は全員が全員ジャズ・ミュージシャンではないが、ジャズの領域にも足を踏み入れている世界中の人たちが集まり、世界中の音楽が集まるこのフェスティバルは〈ジャズ〉という曖昧で、同時に魅力的なくくりの楽しさを存分に教えてくれるものだ。

 例えば、マヌーシュ・ギターの名手チャボロ・シュミットは日本を代表するジャズギタリストの渡辺香津美と共演するが、そこに更にヴァイオリニストの太田惠資が加わる。アジアから、中東、トルコ、東欧、中欧、バルカンなど、様々な要素が溶け合いながら生まれたロマの音楽のひとつでもあるマヌーシュ・スウィングの名手が、ジャズだけでなくトルコ、アラブ、インド、東欧などの幅広い音楽を得意とする太田とセッションすることで、マヌーシュ・スウィングの中にある様々な要素が浮かび上がるかもしれない。そして、その二人を更に密に繋ぐのは渡辺香津美による〈ジャズ〉のギターだと思う。

 同じことはフランスで活動するサックス奏者と仲野麻紀とギター&ウード奏者のヤン・ピタールがエリック・サティを奏でるセッションにも言えるかもしれない。様々な民族が集まるフランスで活動しながらアフリカなどへも足を運ぶ仲野が中東の楽器ウードともに奏でるサティは、世界各地の民族音楽などからの影響はなかったと言われるサティの中にあるアラブやアフリカとの共通点を浮かび上がらせてくれるのかもしれない。

 ケーナ奏者の岩川光がアコーディオン奏者の佐藤芳明、ピアニストの林正樹との組んだトリオや、ヴァイオリニストの喜多直毅、ピアニストの黒田京子と共演する浜田真理子など、フォルクローレやタンゴを経由したミュージシャンたちが、越境的なミュージシャンと音楽を奏でる際にも仲野麻紀とヤン・ピタールのように〈ジャズ〉が媒介になる。

 ジャズ・ワールド・ビートにおける〈ジャズ〉とは、ステレオタイプな意味でのジャズではなく、世界中の様々な音楽が場を共にするための共通言語のような意味でのジャズなのかもしれない。誰もがジャズと思う形をしていないかもしれない様々なジャズを聴くことで、僕らは今、ジャズが世界中でどんな役割を果たしているのかを体感することができるだろう。

 そして、その並びで聴く菊地成孔がゲストとして参加するRS5pbのようなジャズ・ミュージシャンたちのサウンドからは、いつもと違う側面が感じ取れるかもしれない。

 


LIVE INFORMATION

〈ジャズ・ワールドビート2018〉
7月7日(土)会場:めぐろパーシモンホール
○大ホール 17:00開演
出演:RS5pb(類家心平5ピースバンド)/ゲスト:菊地成孔(サックス)
   浜田真理子/ゲスト: 喜多直毅、黒田京子
   チャボロ・シュミット/ゲスト: 渡辺香津美、太田惠資
   MC:中川ヨウ
○小ホール 13:30開演「アフタヌーン・サロン・ジャズ」
出演:仲野麻紀 with ヤン・ピタール
   岩川光トリオ
   Tokyo Django Collective feat. 北床宗太郎
   喜多直毅&黒田京子デュオ