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限界を超えていく

 〈スパーン!〉というのは、いつも最高のタイミングで顔を出す、雲を突き抜け星になるようなジャンク的轟きのこと。そういった彼の快感原則に従いながら繰り出される数々の名フレーズは、いつも現場でどうやって生まれてくるのか?と尋ねると、それこそいつも〈スパーン〉と勢いよく出てくるものであると教えてくれた。

 「基本的に歌録りには時間をかけないというか、あまり粘らない。マイクの前に立ったら判断は早いですよ。どこにどうやって着地させるかを見据えられれば、あとはパパパッとやるだけ。“大切なもの”のときも、神谷樹くんが〈アウトロどうしましょうか?〉って悩んでいるから、〈ここにゴスペル・タッチの合いの手を入れれば成立するよ、ここはこういう感じじゃない?〉ってフレーズをパーッと決めて重ねていった。いったい何が必要なのかを直感的に判断することの大切さは、かつて諸先輩方から学んだもので、上の世代のみなさんは仕事がすごく早かったですね。それと彼らの伝え方がまた独特で。〈こっちがパンといったらそっちがガンといって〉みたいないわゆる長嶋茂雄スタイルで、細かいことはあまり言わない。で、終わったらあっという間にスタジオを後にするという。そんな彼らから習った音楽言語が染み付いちゃっているもんだから、若い人たちに何かを伝えようとするとき、いつも抽象的に喋っちゃいがちで困ってるんですよね(笑)」。

 とはいえ、彼の咄嗟の判断に即座に対応してくれる仲間たち=サウンド・プロデューサーである神谷樹らとのチームワークの良さも本作の味わい深さを生み出している要因となっているのは確かだ。さて、このところ1年に1枚ペースでリリースを続けている彼だが、そういった環境が音楽作りにどのような影響を与えているのか。

 「集中力を切らすことなく良いペースでやってこられているなと感じます。息を切らして走っていたら、気付くと1年が終わっていて、そしてまた次の新しい作品を作りはじめている。もちろん生みの苦しみとは常に向き合っていますし、曲を依頼する作家とのコミュニケーションも大変なんですけどね」。

 不変の黄金律に従いながら、至上の〈スパーン〉を求めて作品作りに臨んだ結果、生まれた時代を超えるふくよかな美しさ。そんなニュー・アルバム『Horizon』は、ジャンク フジヤマ史におけるエポックメイキングな一枚として長く語られていくことは間違いない。

 「妙に重たさもないし、晴ればかりじゃないけど雨にまでは至らないというか曇りぐらいの天気をイメージさせる、適度に湿っていながら全体的にはスカッとしたアウトドア・ミュージックになっていると思います。それからアルバム・タイトルになった〈Horizon〉って地平線、水平線のほかに〈限界〉って意味もあるんですよね。つまり〈限界を超えていこう〉という意思もこのタイトルには隠れているわけです。できれば(“Horizon”の歌詞にあるように)〈Bring me the horizon〉ぐらい長くしたかったぐらいで。とにかく来たるべきライヴではこれらの曲の最高の形をご覧に入れたいと思っています。いまはどうやってやるべきかまだまだ悩み中ですが(笑)」。

ジャンク フジヤマの作品を一部紹介。
左から2022年作『SHINE』、2020年作『Happiness』(共にPヴァイン)

『Horizon』に楽曲・歌詞を提供した新妻由佳子の2016年作『対岸の人』(Honeysuckle)