前作のカヴァー集を序章として、〈シティ・ポップ〉に正面から取り組んだ本編となるオリジナル・アルバムが登場。そのアーバン&ブリージンなサウンドには、彼らの王道が浮かび上がっていて……

アーバンな空気がこぼれる作品

 山下達郎、大滝詠一、竹内まりや、松原みきなどの名曲に取り組んだカヴァー集『POP IN CITY ~for covers only~』を2021年の初頭にリリースしたDEEN。長きに渡ってミント味のJ-Popを作り続けてきた彼らにとって、70~80年代産のシティ・ポップ・サウンドはまさしく源泉と見做して差し支えないものであり、やけに腑に落ちる作品じゃないかとニンマリさせられたものだが、続けざまに同テーマによるオリジナル・アルバム『TWILIGHT IN CITY ~for lovers only~』を放つというアクションにはちょっと意表を突かれた。それがまた、DEENの王道ともいうべき内容に仕上がっていたことも含めて。

DEEN 『TWILIGHT IN CITY ~for lovers only~』 エピック(2021)

 「このオリジナル・アルバムの制作中に、竹内まりやさんの“プラスティック・ラブ”や松原みきさんの“真夜中のドア ~stay with me”などのシティ・ポップの注目度が世界中でさらにアップしているという情報をキャッチして。〈であれば、まずはカヴァー・アルバムを作って先にリリースして、よりコンセプトを明確にするのはどうか?〉ってアイデアが湧き、とりあえずこのアルバムは一旦寝かせることにしたんです。きっとここへ繋がる〈ストーリー〉が出来ると思えたし」(池森秀一、ヴォーカル)。

 彼らがそのストーリーを通じて証明したのは、DEENが脈々と受け継がれてきたシティ・ポップの系譜に連なるバンドであるということに他ならない。この順番で聴けば、彼らがこれまでトライしてきた音楽的冒険の数々が立体的に見えてくるし、ポピュラー音楽の歴史は繰り返すものだ、という認識を改めて抱かせてくれたりもする。

 「僕らのキャリアを知ってくれているなら、一流ミュージシャンを招き、ガッツリAORに特化して作った3作品(2002年作『pray』、2003年作『UTOPIA』、2004年作『ROAD CRUISIN'』)のことを思い浮かべるかもしれない。ただ今回は、あまり唐突さを感じさせないように、ってことは意識したかな。そういう側面に光を当てながら、どこを切り取ってもアーバンな空気がこぼれ出すアルバムにしようとこだわりましたね」(池森)。

 「海外のAOR系の曲にはサビがよくわからない雰囲気モノをよく見かけたりするけど、シティ・ポップと呼ばれる曲はやっぱり日本のポップスということもあって、しっかりサビがあるものも多い。AORと区別できる点はそこ。DEENの楽曲は常にそれを踏まえて作っているし、歌謡性が強い。つまり〈ポップ〉という部分に重きを置きながら作っているということですね」(山根公路、キーボード)。