©Oswaldo Cepeda

強靭な進化を遂げた5人にもはや恐れるものはない――SFダーク・ファンタジーの世界を圧倒的なヘヴィネスで描いたコンセプチュアルなニュー・アルバム『VAMP』が完成!

 ポップ・パンクを立脚点にしつつ、もうそこには止まらない意志をここしばらくの先進的なサウンドを通じて表明してきたマグノリア・パークが、待望のニュー・アルバム『VAMP』を完成した。これはネオ・ゴシック調のコンセプト・アルバムで、資料によるとアニメ版の「VAMPIRE HUNTER D」や「スター・ウォーズ」、「ドラキュラ」、ジョセフ・キャンベルの作品などから影響を受けたSFダーク・ファンタジーだそうで、半人間/半サイボーグの〈オーロラX1〉という主人公がレジスタンスの仲間たちと共に強大な敵に立ち向かう……というオリジナルのストーリーを表現しているとのこと。もとより幅広いストーリーテリングの力を駆使し、ドラマティックに作品の世界観を作り込んできた彼らだが、今回はより獰猛かつヘヴィーに増強された音楽性の進化もあって、物語のスケールも一気にアップしてきた印象だ。

 マグノリア・パークは2018年に結成されたフロリダ州オーランド発の5人組バンド。結成メンバーのジョシュア・ロバーツ(ヴォーカル)、トリスタン・トーレス(ギター)、フレディ・クリアレス(ギター)、さらに2020年から加入したジョー・ホーシャム(ドラムスとヴィンセント・アーンスト(ベース)で構成されている。2021年にUSパンクの総本山エピタフと契約し、そこからコンスタントに作品をリリースしてきた。ポップ・パンクを軸足に多彩な要素を取り込んで往年のニュー・メタル的な色合いを深めてきたなか、近年の大きな転機は現編成となって最初のアルバムとなった2023年の前作『Halloween Mixtape II』だろう。逞しいシャウトとラップを併用したヴォーカルを繰り出す楽曲はアグレッシヴな轟音へと大胆に進化。同年オーストラリアで開催された〈Good Things Festival〉に出演した際、オーディエンスの反応から新しい方向性への確信を掴んだバンドはその方向性をより深く追求していくことになった。野心的に進化したそのヘヴィーなスタイルは、もちろん今回の『VAMP』を貫く背骨となっている。

MAGNOLIA PARK 『VAMP』 Epitaph(2025)

 物語の幕開けを告げたのは、今回のプロジェクトのために書き下ろされた昨年のシングル“SHALLOW”だ。フロリダの重鎮アンドリュー・ウェイドを共同プロデューサーに迎えた同曲はアルバムの方向性を鋭く決定づける一曲にもなった。昨年は最重量級のニュー・メタル“HELLSTAR”や攻撃的な“THE VOID”、フォンクの要素を取り入れたカイゾ&イーサン・ロスとのコラボ“OBLIVION EYES”といった興味深いシングルも配信されていたが、それらはアルバムに未収録。今年に入って登場した先行カット“CULT”は抑圧者に立ち向かうオーロラX1を鼓舞するかのような力強いニュー・メタルで、壮大な同曲を筆頭に選りすぐりの楽曲が『VAMP』には11曲収められている。

 アルバム全体のプロデュースをアンドリュー・ウェイドと共同で手掛けるのは、バンド内のサウンド面を仕切るトリスタン、フレディ、ヴィンセントの3名。曲ごとにハイラム・ヘルナンデスらも関与し、ミックスはザック・セルヴィニが担当するという磐石の布陣だ。エレクトロニクスの要素を猛々しいバンド・サウンドと融合し、カリスマティックなジョシュアのパフォーマンスも輝きを圧倒的に倍加。また、外部アーティストとの共演にも積極的な彼らだけに、馴染みのプラチナムに加えてヴァナを招いた“WORSHIP”、ピンクノイズとの“CRAVE”といったコラボ曲も作中に暗黒の彩りを添えている。この魅力的なサウンドを浴びたなら、『VAMP』で描かれた物語以上にマグノリア・パークという名のストーリーの行方が気にならないはずがないだろう。

マグノリア・パークの参加作を一部紹介。
左から、408の2022年作『Out Of It』(Regime)、アロウズ・イン・アクションの2023年作『Built To Last』(Many Hats)、2024年のコンピ『Mickey Punk』(Walt Disney)

マグノリア・パークの作品を紹介。
左から、2021年作『Halloween Mixtape』、2022年作『Baku's Revenge』、 2023年作『Halloween Mixtape II』(すべてEpitaph)