不思議な絵を通り抜けて中世の世界へ!
1980(昭和55)年に劇場版第1作が公開されてから、世代を超えて人々に愛され続けてきた「映画ドラえもん」シリーズも今年で45周年。大ヒット上映中の第44作目「のび太の絵世界物語」の音楽を手がけたのは、これで2018年「のび太の宝島」(第38作目)以降7作連続の担当となる服部隆之。(今さらだが)戦前~戦後と歌謡界をリードした国民的作曲家を祖父に、テレビ時代の名人作曲家を父に持ち、平成時代から幅広いジャンルの作曲・編曲で活躍してきた彼にとって、もはや〈代表シリーズ〉と呼べるものになっている。
特に昨年公開の〈のび太の地球交響楽〉が音楽をテーマにした好作品(※しかも監督の今井一暁はEテレ「フックブックロー」の大ファンで服部を第38作の音楽担当に推した張本人)で、サントラがまるで劇場でコンサートを聴いているような大傑作だったのも記憶に新しい。今回は絵の中に入ったり(※絵の中のものを外に出したり)できるひみつ道具〈はいりこみライト〉をめぐるお話ではあるが、主要な舞台となるのは、ある不思議な絵画を通り抜けてたどり着いた13世紀ヨーロッパの国というのがポイント。そのため、中世をイメージさせる素朴で古めかしい雰囲気を持った[21]“『いい絵』ってなに?”のような楽曲が印象的だ。
基本的に神秘的でファンタジックなナンバーが多いが、もちろん[37]“悪魔たちをやっつけろ”や[39]“モーゼステッキ作戦”そして[42]“くらえ! 水もどしふりかけ!”のような戦いの場面の音楽もカッコイイ。
個人的には巷で話題の(※そして実はこう見えて最強アイテムな)[41]“へたっぴドラえもん”のテーマがカワイイ。そして[47]“エピローグ”を聴くと、日常を取り戻した野比家のお茶の間で、のび太のパパが放った(今回の冒険の〈決定打〉に関する)とても感動的な一言を想い出して泣ける。そう、今回の影の主役は若い頃に画家志望だった(※コミック第6巻「この絵600万円」参照)パパなのだ!