心ズキズキワクワク! 福来スズ子(趣里)版〈スヰングの女王〉

 番組をまったく観ていない人に、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」がどれほど掛け値なしに面白いドラマなのかを理解させるのはハードルの高い作業だけども、陽気に踊り出したくなるような良きヴァイブスが流れていて、音楽的にも心ズキズキワクワクな要素がいっぱい詰まっていることを知らせるにはこれらの音盤を聴かせるだけで簡単に済むかと思う。

福来スズ子, 趣里 『福来スズ子 傑作集』 コロムビア(2023)

 ひとつめは『福来スズ子傑作集』。こちらは笠置シヅ子をモデルとしたヒロイン・スズ子の持ち歌を集めた1枚で、すべてスズ子役を務める趣里がヴォーカルを採っているのだが、これがもうすこぶる愉快なんである。例えば“ラッパと娘”。服部良一(ドラマでは草彅剛が演じている)と組んだ笠置のデビュー曲であるが、この趣里版からも何かが始まりそうな予感めいたものがしっかり伝わってくるというか、心ズキズキワクワクせずにはいられないダイナミズムを感じてしまう。体当たりで〈スヰングの女王〉を演じきろうとする彼女の度胸は〈バドジズデジドダ〉という愉快なスキャットにもバッチリ滲んでいるし、何よりも野生の小動物を思わせるファニーな可愛らしさが歌全体で躍動しているのがいい。というようなカヴァー曲がいろいろと並んでおり、終戦後間もない日本を明るく照らした“東京ブギウギ”をはじめとする〈ブギの女王〉時代の名曲や“センチメンタル・ダイナ”のようなスロウ系なども用意されている。これからこれらの収録曲がどのような形で物語と絡み合い、新たな神回を作り上げていくのか、そんな予想しながら聴くのも楽しいはず。

服部隆之 『連続テレビ小説「ブギウギ」オリジナル・サウンドトラックVol.1』 コロムビア(2023)

 もうひとつ注目したいのは、古き良き昭和の香りを運んでくる服部隆之によるアレンジ。これがゴージャスさとエレガントさに溢れていて素晴らしいのである。ちなみに彼はめっぽうロマンティックでときに胸に沁み入るようなスコアをドラマに提供しているが、そちらを集めた劇伴集『連続テレビ小説「ブギウギ」オリジナル・サウンドトラックVol.1』も続いてリリースされるので併せてチェックされたい。