
目の前の人を大切にすることで遠くを想像する
――“世界はいつも一つなの?”は、m/lue.さんの最初のライブのタイトルでもありましたよね。
「この曲はもともと自分が人とつながってるっていう気持ちを持てていないことを考えて作った曲だったんですけど、アルバムの1曲目にすることによって、自分が思っていたよりも広い意味になって、始まりの曲になるなと思ったんです。
〈いってきます いってらっしゃい〉っていう歌詞は、これからいろんな世界を見ていく星の王子様みたいなイメージもありますね。あとLogic Proを購入して、最初にデモで作った曲がこれで、この曲をひたすら編曲し続けることで、自分の色を見つけていった感覚があります」
――この曲では生のバイオリンが使われていますが、楽器の音色含め、やはり音像のことは一曲一曲やり取りしながら大事に作っているわけですよね。
「そうですね。この曲も何回もミックスをしてます。やっぱり1年通して、定期的に集まって作ったので、一回ミックスをして、3ヶ月後にもう一回やって、完成に近づいたら、最後もう一回やろうみたいな、結構何回もやって、それでこの質感を見つけていきました」
――その工程も〈Ghost of Time〉っぽいですね。時の亡霊を追いかけているような感じ。あとはやっぱり途中で話してくれた〈遠くを想像する〉という根底にあるテーマを最もよく表しているのが“遠くを想像するように”ですよね。個人的には、その後の“HANABI”とのつながりも含めて、この5曲目・6曲目がハイライトだと感じました。
「“遠くを想像するように”の〈誰かの声が聞こえる〉っていうサビの部分は“亡霊”と同じタイミングでできたんです。でもそれに合う前半部分を作れなくて、ずっと歌詞だけ書いて、壁にペタって貼っておいて。
で、やっぱり世界で起きてることと同時に、自分の私生活でもいろんな問題とか悩みが起こって、誰かと言い合いになったときに、自分も加害者になってるときがあるなと思ったんですよね。〈戦争はダメだ〉みたいなことを言うと、自分がすごく正しい人みたいに見えるけど、結局自分も人を傷つけてしまうときがあるし、そういうことにもちゃんと目を向けないといけないんじゃないかと思ったし、それが遠くの人を思う手がかりになるんじゃないかと思ったんです。
自分の目の前の人を大切だと思う瞬間、そういうものが一個一個広がっていけば、それは遠くの人を思うことになる。そこが一つ自分の中での突破口になる、答えになると思ったので、この曲が作れたのはすごく大きいなと思ってます」
――アコギの弾き語りですが、かなり生々しい録音ですよね。
「この曲はtornchで録ったんですけど、庭にマイクを立てて、私の弾き語りも外の音も全部一発で録っていて。〈ここの音がいいからここを使おう〉じゃなくて、本当にそのままをきり取ったのがあの曲なんです。同じ日にこの曲と“animals road”の弾き語りバージョンを録ったんですけど、bejaさんに〈本当に一回しか回さないから、そのつもりでいてね〉って言われて……〈はい〉って(笑)」
――ギターがちょっとよれてる部分もそのまま使われてますもんね。
「レコーディングで弾き語りをすること自体も今回が初だったので、最初は声も震えてたりするんですけど、でもそれがちゃんと飾りなく残せるやり方なのかなって。bejaさんはこのアルバムを通していろんなことを一緒に考えてくれて、私の考えとか言葉とかニュアンスを形にする上でどうすればいいのかを、音楽的な側面からすごく考えてくれたから、それがいい方向に作用している気がします」