Mikiki編集部員の4人がオススメの邦楽曲を紹介する毎週火曜日更新の連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は特別編として、4人が選んだ2022年期待の新人アーティストを紹介いたします。 *Mikiki編集部
【田中亮太】
Luby Sparks

2018年にファーストアルバムをリリースしている彼らを〈新人〉扱いすべきではないかもしれませんが、Erika(Murphy)さん加入後はEPとシングルを発表したのみで、まだフルアルバムを出していないので……。この数年のコロナ禍で、おそらくバンドとして活動しにくい状態ではあったと思うんですが、ちょうど明日(1月26日)に待望の新曲“One Last Girl”をリリース、さらに2月19日(土)には東京・渋谷WWW Xで自主企画〈One Last Night〉を開催と、いよいよ今年は大きく動きそうな予感がしています。ありがたいことに一足早く聴かせてもらった“One Last Girl”は、鳥肌が立つほどの名曲でした。2022年、Luby Sparksが〈とんでもないバンド〉だと、ついに誰もが認めることを願って。
BED
公式音源もSNSもなし。東京を拠点にしながら初ライヴを沖縄で。BEDの東京初ライヴに行ってきた。パンク、サイケデリック、クラウトロックなどを飲み込んだ凄まじいグルーヴにフロアの波は激化が止まらない。まさに異次元。日本でこんな夜を体感できるとは思わなかった。今後の動きに注目。 pic.twitter.com/xWc601Y1Nm
— SUPERFUZZ (@superfuzz2019) January 11, 2022
ライターのTAISHI IWAMIさんが〈昨日、観たんですが最高でした〉とLINEでライブ映像を送ってくれたバンド。サイケデリックでグルーヴィー、そしてエロティック。確かに、これはかっこいい。なお、最近インスタのアカウントが作成された模様です。
Kross Section
国内の若いトラックメイカーをもっと知りたいなーと、去年末からディグっているんですが、〈そういやCYKの周年で観たKross Sectionってよかったな〉と思い出し、京都発2人組ユニットのBandcampをチェック。上記のオリジナル曲“Keep It Movin’ On”が最高でした。K・ローン(K-Lone)のUKG路線にも共振しているかのような、胸キュンメロディーが堪らないガラージチューン。CYKのKotsuさんやStones Taroさん、Kross Sectionらも主要人物かと思しき、京都のWest Harlem界隈はいまめちゃくちゃおもしろそうですね。今年、行けるといいなー。
【酒井優考】
エルスウェア紀行

ヒナタミユ(ボーカル/ギター)とトヨシ(ギター/ドラムス/コーラス)の2人組。去年SNSで不思議な名前が目に留まり“マイ・ストレンジ・タウン”を聴いてみたところ、その歌声と曲の良さ、シティーポップっぽい世界観などに惹かれ、当連載で紹介しました。その後、10月にリリースされた“少し泣く”がちょっと不思議でめっちゃカッコよくて個人的に大当たり! 翌11月リリースの“ひかりの国”も美しい曲で、絶対2022年も素晴らしい曲を生み出してくれると思っています。去年ライブも拝見したのですが、歌声も演奏も本当クオリティーが高かったです(ちなみにそのライブでのキーボードは、先日メールインタビューが公開されたsugarbeansさん)。今一番オススメしたい2人です。
黒子首
去年取材させていただく機会があって、これはすごいバンドが現れたと驚いていたら、UNISON SQUARE GARDEN主催のライブに呼ばれたりと今グングンと知名度を上げていってる3人組。アコギのシンプルな演奏を土台にしつつも、凝ったアレンジや癖のあるパーツを端々に入れてきて、ギターボーカル・堀胃あげはのスモーキーな歌声も相まって思わず感情がウワッ!て溢れ出ます。
ヒグチアイ
今年こそ絶対来るよ、と思っていたら年始早々にリリースされた新曲“悪魔の子”がアニメ「進撃の巨人」のエンディング曲に決まり、すでに多くの人がその才能に気付いてしまった!……ので、もはや遅いかもしれないのですが。強さと弱さ、温かさと冷たさ、優しさと厳しさ、さまざまな相反する要素を自在に表現できるものすごい歌声です。(今年は3組全部女性ボーカルになっちゃった……)
【天野龍太郎】
Bialystocks

映画作家でもある甫木元空(ボーカル)が作った、青山真治プロデュースの監督作「はるねこ」(2016年)。同作の音楽を生演奏する上映イベントをきっかけに結成された、というプロフィールを聞くと、一時的なプロジェクトのように感じられるけれど、Bialystocksはすでに彼らに固有の音楽と力強い個性を手に入れている。なによりも、甫木元のエモーショナルで美しく深みを持った歌声、そしてジャズがバックグラウンドであるという菊池剛(キーボード)によるアレンジとプロダクションがたまらなく魅力的で、生演奏もエレクトロニクスも溶け合ったサウンド、インディーロックもR&Bもジャズも飲み込んだシネマティックな音楽性は成熟の域に達している。まちがいなく2022年にもっとも注目すべきアーティストだし、すでにSpotifyの〈RADAR: Early Noise 2022〉に選ばれるなど注目度は高い。そんな彼らのファーストEP『Tide Pool』は、明日1月26日(水)にリリースされます。
なお、甫木元は、1954年のビキニ被曝事件について取材した展示を行ったり、書籍を制作したりしている。つまり、現実の世界/社会、あるいは過去の出来事と向き合いながら、映像やアートの世界を自由に行き来し、その経験をさらに自身の音楽にも反映させている。そんなところも唯一無二だと思う。
HYPER GAL
美術家の石田小榛(ボーカル)と、豊田道倫 & His Bandにも参加しているノイジシャンの角矢胡桃(ドラムス)。2人のギャルによる関西のツーピースバンド、HYPER GAL。あふりらんぽにTadzioにその他の短編ズと、日本のシーンにはユニークな女性オルタナティブデュオの系譜があるように感じますが、HYPER GALはそんな文脈をぶっちぎるほどに鮮烈。歌とドラムと電子音のループの組み合わせはスーサイドもかくやというか、それ以上にハードコアで、ハイパーポップに通じる歪んだ音像やストレートなメッセージとして響くミニマルに反復されるリリックがとにかく力強い。昨年リリースされたアルバム『pure』は1月26日から配信開始。uamiがジャケットをデザインしているなど、交友関係も興味深い2人です。
フリーダム昼子
tamao ninomiya主宰の慕情tracksによるコンピレーションアルバム『minami no shima』への参加、〈KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2021 AUTUMN〉への参加(荒木優光〈サウンドトラックフォーミッドナイト屯〉にプリンス“I Would Die 4 U”をカバーを提供)、さらに名曲“東京無料配布中”の無料配布と、2021年に多角的に活躍した宅録音楽家のフリーダム昼子。〈歌詞のためのソロプロジェクト〉と本人がしているように、まずはそのユニークな言語感覚に惹かれる。けれども、言葉に先行して耳に飛び込んでくるアルトボイスとローファイサウンドが独特で、まずそこでぐっと持っていかれるのが一番の魅力かも。2022年の活躍にめちゃくちゃ期待しています!
【鈴木英之介】
m/lue.

フランス語で〈中間〉を意味する〈milieu〉に因んでつけられたその名の通り、白黒つけがたい心の綾を静かに美しく表現するシンガーソングライター、m/lue.(ミリュー)。繊細な音響感覚で構築されたその音世界には、青葉市子や角銅真実など妖精的な魅力を備えたアーティストに通ずるものがあるように感じられる。またもともと俳優を志していたというだけあって、抑制がきいていつつも感情豊かな歌の表現も見逃せない。
1月13日にはTomgggとの共演で“Kokoro Odoro”(ゲームアプリ「DEEMO II」劇中曲)をリリースした彼女。今後、他アーティストとのコラボレーションの機会も増えていくのではないだろうか。昨年9月、ミニアルバム『あいだ』のリリースに合わせて掲載したインタビューもぜひ一読を!
ya mai mo
ボーカル/ギターのニートたけしを中心に結成されたという、謎多き〈ローファイフォークロックバンド〉。セルフタイトルのアルバム『ya mai mo』をたまたまSpotifyで聴いて、彼らの存在を知った(ちなみに本作のミックスはのっぽのグーニーが、マスタリングは畠山地平がそれぞれ手掛けている)。そのとき受けた衝撃は、ウィルコの『Yankee Hotel Foxtrot』や、山本精一 & Phew『幸福のすみか』などを初めて聴いたときのものと少し似ていた。
またモチーフの選び方や名前のつけ方から垣間見える独特のユーモアセンスは、坂本慎太郎やOGRE YOU ASSHOLEなどにも通じるかもしれない。ここに挙げたような名前に反応する方には、ぜひ聴いていただきたい。脱力的でありつつも先鋭的なそのサウンドが、必ずやあなたの心を捉えるだろう。
CARTHIEFSCHOOL
昨年に新人紹介連載〈Mikiki’s Young Bloods〉でも取り上げた、札幌発のポストパンクバンド。人を食ったナンセンスなユーモアに満ちた言葉たちと、複雑ながら快楽のツボを押さえた卓抜な楽器演奏、そして念仏のような、がなりのようなボーカル。彼らの生み出す世界では、これらが複雑に溶け合い、ぐらぐらと煮えたぎっている。より詳しく彼らのことを知りたい方は、〈Mikiki’s Young Bloods〉の記事をぜひ読んでいただきたい。
