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空襲警報を希望の音に変化させた長岡花火

――“HANABI”では唯一bejaさんがピアノを弾いていて、音像的にもこのアルバムの中では広くて、いい意味で異質な一曲だと感じました。

「“HANABI”は一番最後に作った曲なんです。最初はこれ以外の8曲でリリースしようと思ってたんですけど、何か足りない感覚がずっとあったので、勇気を持って、〈最後にもう一曲作ります〉と言って。

で、どんな曲がいいかずっと考えてたんですけど、大林宣彦監督の『この空の花(長岡花火物語)』という映画があって、長岡花火のことを描いたモキュメンタリーなんです。たまたま長岡に住んでいる友人が花火に誘ってくれて、その映画を見てから行ったんですよ。

映画を見ると、長岡の花火は戦争で亡くなった人を弔うものだったり、時代によっていろんな意味合いを持っていることがわかって、実際に花火を見たときに本当に感動してしまって。大きい有名な花火が3発上がるんですけど、そのときにウーンっていう空襲警報を流してから花火を上げるんですよ。友人には子供がいるんですけど、その警報が流れたときに、その子供がウーンって一緒に声を出して口ずさんでたんですよね。昔その音は恐怖の音だったはずなのに、今では喜びの音になってる。それがすごく希望だなと思ったんです。

そのときに、私の作る曲は自分の中だけで完結してたけど、次の世代のことも考えていかないといけないわけで、このアルバムにはそれがないと思ったんです。だから何か足りないと思ってるんだって。それで希望を込めたこの曲を最後に作りました」

――この曲があるかないかでアルバムの印象が大きく変わるように思います。

「本当に作れてよかったと思います。でもレコーディングは苦労して、ドラムとピアノ、それぞれの持ってる役割、曲の中での存在がそれぞれ違うなと思って。ドラムは花火のドーンっていう音でもあるし、火花とか雑踏の音だったりもするから、そのニュアンスを怖くもできるし、もっと軽やかにもできるし、そのあたりをすごく模索しました。

最近は楓雅くんと2人でライブをやったりもするんですけど、それぞれで立ってほしいっていう感覚がすごく強くて。この曲のレコーディングのときも、私の曲に合わせるためにやるんじゃなくて、自分の中の言葉と会話をした上で出た音にしてほしくて、それが結果的に一つの楽曲になる、みたいな感覚がすごくあって。それぞれが個々で、ちょっとゴツゴツしていてくれる。まとまりがないけどまとまっている感じがすごく出せたなと思います」

――“HANABI”に未来への希望を込めたという話でしたが、最後の“思うままに”もこれから先の未来を感じさせる終わり方だなと思いました。

「このアルバムのために費やした4年間を通して、いろんな悩みとかを全部取っ払ったときに最後に残るものは、この曲であり、この言葉なのかなって。

“亡霊”で〈あなたをまず一人愛してみたい〉と歌って、愛ということを考えて、愛することが遠くの誰かを思うことに繋がって、それは未来の子供に対してでもあって、その愛をずっと連鎖させていった結果……でも結局わからないなって(笑)。わからないけど生きていくし、わからないけどきっと死んでいくし、ある意味開き直ったっていう言い方もできるのかもしれないけど、でもこの世界で起きている美しさと残酷さとか、人が争ってるときでももしかしたらすごく綺麗な夕日が後ろでは見えてるかもしれないとか、そういう矛盾したものが同時に存在してることをまずは受け入れるしかないんだなって、そういう気持ちに一回なったんですよね。

そうなったときに、このアルバムが終わるなと思った。私も自分なりにこの4年間すごく悩んだけど、もうそこから出ていかないといけないと思ったときに、こういう曲になりました。レコーディングもみんなで全部の楽器を並べて、同時に録りました」