ライヴハウスでロックを聴いて育ったshun、クラブ・カルチャーに影響を受けたo-png、R&Bやソウルをルーツに持つseigetsu。背景の異なる3人から成るのが、沖縄拠点のHOMEだ。2023年のファーストEP『HOME EP』がインディー・リスナーに支持を受け、2024年のセカンドEP『HOME EP2』時には渋谷WWWでワンマンを開催。以降も注目を集める彼らが、初の全国流通盤となるサードEP『HOME EP3』を完成させた。これまで以上に3人の個性が広く強く混ざり合った、多彩でディープな内容になっている。
「『HOME EP』は、3人の個性が粒立っていて、粗削りな魅力があるけれど、まとまってはいなかったように思います。だから、『HOME EP2』では、ひとまず統一感を意識して〈モダンなポップス〉をめざした。今回の『HOME EP3』は、それらとはまたヴェクトルが違うんです」(shun)。
「全曲がこれまでにはなかったタイプでジャンルもバラバラ。一気に飛躍したような印象を持つリスナーもいるかもしれません」(o-png)。
確かにこれまでのHOMEの楽曲はまずゴールを設定して、そこに3人の個性を集約させていくようなイメージだった。
「今回はゴールを定めずセッションしながら出来た曲が多い。例えば“blind believer”はキング・クルールのコードの感じ――軋んだような、でもどこかメロウさが漂う音ををイメージしてギターを弾いていたら、o-pngがリズムを、seigetsuがメロディーを自由に乗せてきたんです」(shun)。
ドープでトリップ感のあるダウンテンポ“カマシ”も音楽的な幅の広がりを感じさせる曲だ。
「僕は90年代のUKロック的な音楽も好きで、今作の制作にあたっては、マッシヴ・アタックやポーティスヘッドのようなブリストル系、プライマル・スクリームがダブにアプローチしたアルバム『Vanishing Point』、レディオヘッドの『OK Computer』などが、常に頭のどこかにありました。この曲はその意識が前面に表れていますね。タイトルの“カマシ”は、seigetsuが〈カマシ・ワシントンみたいな曲だね〉と言ったことと、〈かますぞ〉みたいな歌詞の内容からきています」(shun)。
「歌詞は思考の記録なので、解釈は聴き手に任せたいですけどね」(seigetsu)。
そして、“city punk”と“some candy talk”では、o-pngのルーツであるダンス・ミュージックに接近した。
「“city punk”は、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーなどの実験的なエレクトロニカと、最近また注目を集めているというジャングルやドラムンベースを混ぜた曲。ニア・アーカイヴスやピンクパンサレスの持つ、クラブ・シーンで鳴っているサウンドをポップスとして響かせるセンスも好きで、刺激を受けています」(shun)。
エクスペリメンタルで宇宙的なサウンドスケープを展開する“city punk”は、ダンス・ミュージックとしてもポップスとしても勝負できるだろう。
「ポップとは何なのか、最近はよくわからなくて。でもseigetsuの声とメロディーがあればHOMEらしいポップさは担保されると思います。あとはジミー・ペイジのリフのように口ずさめるパートがあればOKなんじゃないかな。ルーツはおのずと出てくるものだし、形式に捉われず自由にやればいいのかもしれない」(shun)。
「HOMEはドラムとベースがいないので〈バンド〉って感じでもなく、ダンス・ミュージック・アクトでもない。だからこそ、さまざまなタイプの曲を作れる強みはありつつ〈これは結局何なの?〉と迷うこともある。でも、何かを探し続けるプロセスからいい音楽は生まれる……だといいですね」(o-png)。
HOME
seigetsu(ヴォーカル)、o-png(PC)、shun(ギター)の3人が2020年に結成したユニット。沖縄を拠点に活動しながら、日本各地でライヴを行い、2024年には〈フジロック〉にも出演。さらに韓国やシンガポールなど海外のフェスにも多く出演している。2023年のファースト・シングル“Lucy”が話題を集め、同年に初EP『HOME EP』を発表。2024年のセカンドEP『HOME EP2』を経て、このたびニューEP『HOME EP3』(superpop)をリリースしたばかり。