
Beautiful Thing
アメリカン・ポップスの未来がここにあるかどうかはさておき、とんでもない傑物であろうことは誰にでもわかるのがベンソン・ブーンの凄さだ。セカンド・アルバム『American Heart』を完成させて、いよいよ頂点に立つ準備は整った!
コーチェラで何より惹かれた話題といえば、ベンソン・ブーンのステージだったという人も多いのではないだろうか。ニュー・アルバムに収録予定の新曲を披露したほか、その後には御本家のブライアン・メイも招き入れる格好でクイーンの“Bohemian Rhapsody”も完璧にカヴァー。もともと“Beautiful Things”の世界的なヒットによって愛されている彼だが、クラシック・ロックへのまっすぐな敬意なども隠さないあたりが現代の若者らしさなのだろうか。ちょっと笑っちゃうぐらいの肉体美も含め、とにかく絶賛するしかないほどのパフォーマンスだったのは確かだ。なかなかストレートな意味でのポップスターが生まれづらい時代にありながら、そうやって幅広い世代のハートもグッと掴みながら上昇してきたグローバル・スターがついに待望のセカンド・アルバムを世に問うことになった。ミックステープに続けて登場したファースト・アルバム『Fireworks & Rollerblades』も本国でプラチナ認定を受けたが、このたび完成した『American Heart』においてはそれ以上の成果を本人も周囲も期待しているに違いない。
シンセ・ポップの先行シングル“Sorry I’m Here For Someone Else”を手掛けたのは敏腕ジェイソン・エヴィガン。彼は前作でも数曲の制作に関与し、今回も3曲のプロデュースで改めて相性の良さを見せている。他にも伝統的なポップス/ロックへの敬意ということではELOを思わせるスタイルの“Mr Electric Blue”があったり、“Mystical Magical”ではオリビア・ニュートン・ジョンの“Physical”をリサイクルしてもいたりするからおもしろい。なお、エヴィガン以外のプロデューサーとしてはエヴァン・ブレア、マレイも名を連ねているが、何にせよその全貌を聴けるのが楽しみで仕方ない。
アルバムのリリースに合わせてこの夏の彼は本国USのフェス出演などを続けていくようだが、またいつか来日も実現してほしいものだ。とにもかくにも、2025年はこの人の活躍で振り返れることが多くなるのだろう。