クリスマイブ前日の横浜、ひとりよがる夜
2025年12月28日、〈鬼龍院翔 単独公演「ひとりよがり7」〉ツアーが福岡公演でファイナルを迎えた。本記事では12月23日に行われた神奈川県・パシフィコ横浜・国立大ホール公演の模様をレポートする。
〈ひとりよがり〉はゴールデンボンバーのボーカルであり、すべての曲の作詞作曲を手掛ける鬼龍院翔によるバラード中心のソロ公演。ゴールデンボンバーのライブといえば、メンバーによる身体を張ったネタや演出が特徴だが、そうするとバラード曲や演出にそぐわない曲がどうしてもセットリストからこぼれがちになってしまう。そんな楽曲たちを披露するために2011年から不定期開催されているのが〈ひとりよがり〉である。〈ひとりよがり〉ツアーはじつに7年ぶり。新型コロナウイルスの影響により無観客配信だった〈ひとりよがり6.5〉を挟んでも5年ぶりの開催となる。
昼間が一年で一番短い冬至の翌日、恋人たちが一年で一番盛り上がる(多分)クリスマイブの前日、ふつうの平日、火曜日の横浜みなとみらい。電車を降りて会場に向かう道中、デートにおあつらえの夜景がきらびやかに輝いている。けれども我々は〈ひとりよがり〉を観に行くのだ。

またこの会場でひとりよがれることは幸せ
開演前に鬼龍院自身による注意事項アナウンスが放送される。〈ひとりよがり〉は普段のゴールデンボンバーのライブと異なり、公演中も着席のまま、ペンライトなどの光るアイテムの使用はNGである。静寂の中で曲の世界に浸るのが醍醐味なのだ。
客電が落ちると、物悲しいワルツのイントロがホール全体を包んでいく。黒のジャケットに身を包んだ鬼龍院をささやかなライトが照らす。1曲目は“夜汽車”だ。ひとりきりの夜の寂しさを描く旋律にグロッケンの音が夜空の星のように煌めいている。続いての“君がいない間に”では、ピアノの音とともに心地よい孤独感が深まっていく。観客はただただ聴き入るのみ、これが〈ひとりよがり〉と感慨深くなる。

「はいどうも〜、鬼龍院翔です。ご来場いただき、皆さん……ありがとうございます」と、いつもどおり低姿勢な挨拶から入る鬼龍院。7年前の12月も同じパシフィコ横浜・国立大ホールで〈ひとりよがり〉を行ったことに触れ、「7年経ってもこうしてまたこの会場で、ひとり、よがれることは、幸せなこと、奇跡的なこと。一曲一曲、大切にお届けしていきたいと思います」と述べた。

音楽を聴きながら、ひとり物思いにふける空間にしたい
〈ひとりよがり〉は曲の世界に浸ってほしいため、ステージ上のスクリーンには歌詞のみが映し出される。2階席や3階席の観客から鬼龍院の姿は見えにくいであろうことに配慮し、「一応、顔を見せておいたほうがいいかなと思って」と自撮り棒を取り出しスマホカメラを自身に向ける鬼龍院。2023年に上梓した著書「超!簡単なステージ論 舞台に上がるすべての人が使える72の大ワザ/小ワザ/反則ワザ」(リットーミュージック刊)では、音楽以外の〈観客に届ける〉数多のテクニックを開陳し話題を呼んだ彼ならではの気遣いである。
スクリーンに鬼龍院の自撮り映像が映し出されると、「MC中はなるべく(自撮り棒)を使います。曲に入ったら、一緒に曲の世界を100%五感で楽しんでもらって……」と呼びかけた。

〈ひとりよがり〉のMCで、鬼龍院はたびたび「歌詞の全部に共感しなくても、なにか1行でも自身の人生の思い出に重なるところがあれば、浸ってほしい」といった趣旨の言葉を口にする。それが〈ひとりよがり〉の楽しみ方だという。
「こんなにたくさんの人がいますが、音楽を聴きながら、ひとり、物思いにふける、そんな空間にしたいと思っております。私もこんなにたくさんの人を目の前にして歌うわけですが、ひとり、よがらせてもらいます。そんな、変な会でございます」