人々を繋ぐ音楽の魅力
米コロラド州のキリスト教の牧師や宣教師の家系に生まれたライアンは、3歳からピアノを習い、幼い頃からゴスペル隊に参加。ビートルズやスティーヴィー・ワンダーなどの世俗音楽に開眼して以来、毎日2時間は歌っていたとか。そんなストイックな性格は現在も変わらず、毎日2曲を書くそうだ。曲作りをする際には、まずは自身と向き合って歌詞やメロディーにフォーカスし、その後、世の中のトレンドなどを意識しながらプロダクションを構築。ポップ、ロック、ソウル〜R&B、カントリー、フォーク、クラシック、EDMまで、実にさまざまな音楽性を取り入れる姿勢は、独自のスタイルに固執しがちな数多のロック・バンドとは一線を画した柔軟なアプローチ。だからこそ、彼らがこれほど長くヒット・チャートの上位に君臨し続けられるのではないかと思う。
グループ結成から優に20年を超え、デビュー曲“Apologize”から数えて今年で18年目を迎えるワンリパブリック。とはいえ、スローダウンすることなく、ますます精力的に活動を続けている。2020年以降では、映画「トップガン マーヴェリック」の挿入歌“I Ain’t Worried”のスマッシュ・ヒットが特に鮮やかだった。ピーター・ビヨーン・アンド・ジョンの〈口笛ソング〉こと“Young Folks”以来かと思われる爽やかな口笛メロが、人々の耳を惹きつけた。映画との相乗効果もあり、それまでワンリパブリックを知らなかったリスナーまでを魅了。同曲が収録された彼らの6作目『Artificial Paradise』(2024年)からは、デヴィッド・ゲッタとのコラボ“I Don’t Wanna Wait”などのヒットも誕生した。その傍らでライアンは、BLACKPINK並びにLISAやジョン・レジェンド、アニッタらの作品に関与し、テイト・マクレーのブレイク及びスター街道まっしぐらな快進撃に貢献。さらにはブラッド・ピット主演映画「F1/エフワン」のサントラに参加するわ、HYBE主催のボーイズ・グループのオーディション選考員を務めるわで、いったいいつ寝ているのかと心配になるほどだ。そのうえ、ワンリパブリックとしても9月からUK〜ヨーロッパ・ツアーをスタートさせるほか、冒頭にも触れたアニメ「怪獣8号」のエンディングテーマ“Beautiful Colors”や、フレンチ・ハウスのスーパーメン・ラヴァーズによる2001年のヒット曲のニュー・リミックス“Starlight (The Fame)”をリリースしたばかり。次から次へとニュー・プロジェクトを投下し、20余年の活動歴をもつヴェテラン・アーティストとは思えない熱量で前進し続けている。
ギター&ヴィオラ担当のザック・フィルキンとライアンは、高校時代からの友人であり、その他のメンバーも初期に若干のマイナー・チェンジを経ているものの、ほぼ顔ぶれは変わらない。固い絆の秘訣は、メンバー全員に兄弟がいないかったから、とライアンは説明する。バンドが兄弟の代わりというわけだ。ステージ上のライアンは、ソロでもやっていけそうなほど圧倒的な存在感やカリスマ性を発揮しているが、きっとそれは他のメンバーの支えがあってのことなのだろう。
今回のベスト・アルバム『OneRepublic: The Collection』を聴くと、改めて彼らの最大の魅力はメロディーなのだと痛感させられる。時代と共にアレンジやサウンド・プロダクションは変遷するが、メロディーは常にヴィヴィッドで決して色褪せることがない。どの曲も、聴いてるうちに、いつしか一緒に歌っている。彼らのライヴがまさにそう。気づけば皆が大合唱を始めている。ライアンが上手く観客をまとめたり、煽ったり、ブロックごとにハモらせたり。まるで指揮者のようにオーディエンスを先導し、大きな一体感を生み出し、感動で満たしてくれる。もちろん彼らの音楽はクリスチャン・ロックではないが、そこには幼少期のゴスペル隊の影響も見え隠れする。音楽で人々を繋ぐという偉業を、ごく自然に、当然のように実現するワンリパブリック。〈ひとつの共和国〉というグループ名が、すべてを物語っているという気がする。
ワンリパブリックの参加作品。
左から、ギャランティスの2020年作『Church』(Atlantic)、グリフィンの2022年作『Alive』(Darkroom/Geffen)、ライアン・テダーが制作に参加した2025年のサントラ『F1 The Album』(Atlantic/ワーナー)
