©Sol Washington

アミ・タフ・ラのデビューアルバム! プロデュースはもちろん夫、カマシ・ワシントン!

 アミ・タフ・ラというアーティストをご存知だろうか? モロッコに生を受け、オランダで学生時代を過ごしアーティスト活動を開始。ライヴ招聘をきっかけにトルコ・イスタンブールに拠点を移しレバノンやヨルダンなどでも活動した後、2021年にLAに居を移した。そしてそこで大きな転換期を迎える。人生の伴侶にして、本作プロデューサーでもあるカマシ・ワシントンとの出会いだ。2人はほどなく結ばれ、子どもを授かる。この作品が制作開始されたのはちょうどその頃だそうだ。

 彼女の音楽は、その出生から現在に至るまで過ごした様々な文化的背景が混在している。彼女の母が大好きだったというアラビア音楽、学生時代に参加していたというゴスペルクワイヤ、友人と組んだR&Bバンド、そしてジャズ。それぞれ異なるカルチャーを吸収し、またそれらを融合した世界観の構築こそがこのアルバムのコンセプトだ。

AMI TAF RA 『The Prophet And The Madman』 Brainfeeder/BEAT(2025)

 カマシとアミ・タフ・ラの共通の言語となったのが、レバノン出身の詩人ハリール・ジブラーンの著書であり、タイトルにも使用されている「The Prophet」「The Madman」だったという。そこに描かれていた言葉、アイディア、人生観、世界観が2人にインスパイアを与えた。

 「お互いの文化的背景を理解し合って、違いのある私たちの中に共通点を見出したい。宗教、国籍、性別といったものに関係なく、みんなをひとつにできる唯一の表現手段がアートじゃないかしら」

 この言葉を具現化するためのキーとなるジブラーンからの言葉を音楽に落とし込むため、細心の注意を払ったという。本作に散りばめられた音楽的要素をひとつのジャンルに括ることは困難だが、全体を通して聴けば不思議と統一感がある。それはカマシの持つコンテンポラリーかつスピリチュアル、そして荘厳なサウンドスケープがなせる技かもしれない。シルキーでウォームなファルセット・ヴォイスに乗せる緩やかなメロディと、カマシを中心とした手練れが作り出す心地よくも緊張感のあるバックトラックが織りなす対比は、見事に前述の彼女の言葉を体現している。