FRUITS ZIPPERとCANDY TUNEが「NHK紅白歌合戦」に初出場、『KAWAII LAB. BEST ALBUM』が2026年2月11日(水)にリリ-スされることも決定し、勢いに乗るKAWAII LAB.。タワーレコードでは、カワラボとコラボした冬セール〈KAWAII SALE ~TOWER RECORDS WINTER SALE 2025-2026~〉が2026年2月23日(月・祝)まで開催中だ。
今回はこれに合わせて、所属グループのFRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREET、それぞれのベスト3曲をライターが選び、コメントする企画をお届け。個々の視点をぜひ楽しんでほしい。 *Mikiki編集部

私はこーへが選ぶFRUITS ZIPPERのベストソング3曲
1. NEW KAWAII
2. 完璧主義で☆
3. 超めでたいソング 〜こんなに幸せでいいのかな?〜
2025/08/17(SUN)サマソニ東京。ミセスの演奏終了と同時に、人波をかき分けSONIC STAGEへ走る。12時40分。会場は既に人で満ちていた。隙間に体をねじ込み、18列目付近で10分佇むと“NEW KAWAII”が始まった。竹の子族風ダンス、立て続けに放たれる「ブンチ♪ブンチ♪」「イナバ物置」「偉ーい!!」。ドンキで情報の濁流に呑まれ買い物の目的を見失うように理解が追いつかない。脳内で色々なアイドルが思い浮かび、その文脈と接続されては衝突を繰り返す。そんな過剰さが眼前に広がる中、思わず「訳がわからん!」と独り言を漏らしてしまった。
直後に“完璧主義で☆”が鳴った。その瞬間、 思考を追い越してドーパミンが先走り、頬に涙が伝った。NEW KAWAIIの意味が、理屈でなく感覚として理解(わか)った。つまり、アイドルとは鎮西寿々歌だった。それは彼女だけが特別であることを意味しない。誰かにとってそれは月足天音であり、櫻井優衣であり、仲川瑠夏であり、真中まなであり、松本かれんであり、早瀬ノエルだからだ。人は完璧ではいられないが完璧を求めてしまうし、NEW KAWAIIは言語化を拒絶しては混乱をもたらす。それでも「気にせず歌い続けてみるよ 完璧主義で☆」とおどけながらも〈わたし〉を絶対に譲らない頑固さがある。「あまネキ!」「まつかれ!」と泣き叫ぶ隣の少女2人と、舞台を羨望の眼差しで見つめ踊り狂う子供たちの瞳は、その強さに反応し輝いていた。
FRUITS ZIPPERは善く生きたいと願う強さと、そのせいで生じる弱さの両方を、暴力的なまでのNEW KAWAIIで束ね、歌い寿く。それは単なる全肯定ではない。彼女たちは、なりたいわたしであろうとするも零れ落ちてしまった理想さえ置き去りにせず「ほらぜんぶ大切だね ねえ、アップデートしよ?」と再起動をかけ続ける。その態度こそが、2025年という時代が要請したアイドルの運動体なのだ。
X在住カルトひひょーPPER!としてPodcast「コンテンツ過剰接続」を絶賛配信中。推しは上白石萌歌と早瀬ノエル。
X:https://x.com/minicoolkohe
Podcast:https://open.spotify.com/show/56f5M92RCxZFMyE079kxfQ

キムラが選ぶCANDY TUNEのベストソング3曲
1. 倍倍FIGHT!
2. キス・ミー・パティシエ
3. 未完な青春
君は“倍倍FIGHT!”を聴いて、涙したことがあるか? 私はある(特に〈明日からじゃなくて今日だ今だ君だここだ〉で必ずと言っていいほど泣く)。決して大袈裟に言っているのではない。この曲は、私たちの生きる〈いま、ここ〉にある暮らしを肯定する。〈なりたい 在りたい〉という当たり前の願望を認めてくれる。生きていていいんだって、心からそう思わせてくれる。嘘だと思うなら、歌詞をじっくりと読んでほしい。そしてきっと気づくだろう。あの過剰なメロディーの裏には、確かな祈りと抱擁が込められていることを。
CANDY TUNEの歌詞の主人公のキャラは、少し捻くれているように見える。それがとてもリアルだ。等身大の焦燥や葛藤、屈折した感情。私たちが生きている上で感じる〈こうなったらいいな〉と、決してそうはならない現実との間で生じる〈割り切れなさ〉に寄り添う、現代を生きる人々にとっての応援歌。
そしてなにより、彼女たちの楽曲の真髄はリズムにある。“倍倍FIGHT!”のサビを中心に表拍に沿って展開されるフレーズの連呼や“CATCH YOU”で突如挟まれる三三七拍子は、アイドルのコール・MIX文化、ひいてはTikTokのダンスとの相性が抜群に良い。ライブに行った時、コールの声量と揃いっぷりに驚いたことを覚えている。コールをすること、TikTokで踊ること、例えるならそれはリズムゲームであり、さらに大胆に解釈すると、長きにわたって日本のアイドルシーンを支えてきたつんく♂の遺伝子が、ハロプロに代表される〈16ビートのグルーヴ(波)〉の側面だけでなく、「リズム天国」的な〈ヒット(点)〉の快楽としても炸裂し、それがCANDY TUNEへと継承されているとも言える(“備えあれば無問題”を聴いてみてほしい。〈頭・肩・膝/うぇい〉のところで強制的に脳内リズム天国が始まる)。
今の社会は問答無用でハードモード。それをクリアするために、CANDY TUNEがそばにいる。最後に改めて言わせてほしい。〈泣きながら“倍倍FIGHT!”を聴いたことのある人は、生きていけます。〉
1997年生まれ。ライター、Podcaster、DJ。音楽・映画・小説・アイドルなど、国内外のポップカルチャーをウォッチ。ナタリーやNiEWなどウェブメディアや文芸誌へ寄稿。ポッドキャスト〈コンテンツ過剰接続〉配信中。