2022年に“farewell”という楽曲の断片をSNSにアップロードし、kurayamisakaは鮮烈にリスナーの前に登場した。その後EP『kimi wo omotte iru』(2022年)といくつかのシングルリリースを経て、日に日に熱量が高まる現行インディー/オルタナを象徴するような存在となった彼らが、ついに1stフルアルバム『kurayamisaka yori ai wo komete』をリリースした。

kurayamisakaの音楽は聴く人に、その音楽について語りたくてたまらないと思わせる特別な魅力がある。その淡く儚いサウンドとリリックに、しびれるような轟音ギターに、彼らが有するかつて誰しもがあこがれたオルタナ/ギターロックの先達へのリスペクトに、少なくとも私はヤラれてしまった。

しかし、そこにあるのは単なるノスタルジーではない。kurayamisakaの音楽がいま比類ないほど魅力的なものになっているのは、彼らが〈過去〉を反射鏡とし、目も眩むほどの輝きをもって〈今〉を生きているからなのだと思う。その輝きに少しでも迫ろうと、最新作『kurayamisaka yori ai wo komete』リリースの数日前、kurayamisakaでほぼすべての楽曲の作詞作曲を手がけ、ギターを担う清水 正太郎へ話を訊いた。

kurayamisaka 『kurayamisaka yori ai wo komete』 tomoran/bandwagon/chikamatsu(2025)

 

アジカンの几帳面な音の配置や様式美

――この夏はいろいろな場所でフェスに出演されていましたが、なかでも〈FUJI ROCK FESTIVAL〉は、昨年にROOKIE A GO-GOへ出演し、今年はRED MARQUEEの初日トップバッターを務められました。フジロックはどうでしたか?

「初めての出演だった昨年よりは、ちょっと緊張が和らいだかなと。でも、これが最初で最後かもしれないっていう気持ちでやりました」

――フジロック当日にASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)の後藤正文さんとバックヤードでお会いして、お話をされたと、清水さんがXでポストしているのを見かけました。清水さんにとってアジカンとはどういう存在のバンドですか? 

「自分がバンドミュージックを聴くきっかけになったバンドですね。僕自身はアジカンをかなり几帳面なバンドだと捉えています。縦で見たときの音の配置や、様式美にすごく惹かれることが多いですね。自分が楽曲を作る際にも、その部分が似た癖として表れているかもしれないです。もちろん、ご本人たちがどう意図してるかはわかりませんが」

――本作『kurayamisaka yori ai wo komete』のなかでいうと、“metro”にアジカンの姿を勝手に重ね合わせながら聴いていました。この曲は、具体的にはどのようなリファレンス、サウンドディレクションのもとで制作された楽曲ですか?

「この曲は自分の中でとにかくかっこ良いロックバンド像を詰め込んだ曲になっています。もちろん、アルバムの流れのなかで曲の入り方だとか、全体的な部分でアジカンの影響もあるんですけど、この曲への影響で一番大きいのは、I have a hurtというバンドの音像ですね」

――I have a hurtから受けた音像面での影響は具体的にはどのようなものでしょうか?

「〈塊〉なんですよね、I have a hurtの音像は。音源を聴いても、ライブを見てももちろんそう。そういう部分が、自分の中で今を走り続けているバンドとして、一番かっこ良いなって思います。そのような部分を精神的な指針として作りました」