©Rob Baker Ashton

絶好調のなかで完成した最後のアルバム『International』

 幼馴染のボブ・スタンレーとピート・ウィグスによって90年に結成され、3枚目のシングル“Nothing Can Stop Us”とファースト・アルバム『Foxbase Alpha』(91年)からヴォーカリストのサラ・クラックネルを加えてトリオとなったセイント・エティエンヌ。それ以来コンスタントに作品を発表しつつ活動の幅を広げてきた3人だが、このたびラスト・アルバム『International』をリリースした。ここ数年はより意欲的な作品をクリエイトし、特にアンビエントな前作『The Night』はこれまで以上に高い評価を獲得したが、彼らは親友同士のまま音楽的にも良い状態でバンドのキャリアに幕を下ろすべく、最後のレコーディング作品に取り組むことを決意したのだった。

SAINT ETIENNE 『International』 Heavenly/BIG NOTHING(2025)

 ラスト・アルバムを作るにあたって彼らが選んだのは、友人や同世代のアーティスト、そして憧れの存在にもコラボを依頼し、いままで以上に賑やかなアルバムに仕上げること。ニック・ヘイワードとのデュエット“The Go Betweens”をはじめ、ポール・ハートノル(オービタル)との“Take Me To The Pilot”、さらにはティム・パウエル(ゼノマニア)やエロール・アルカン、ヴィンス・クラーク、トム・ローランズ(ケミカル・ブラザーズ)とジェズ・ウィリアムズ(ダヴズ)との共演が実現している。なかでもジャネット・プラネット(コンフィデンス・マン)を迎えたダンス・トラックの“Brand New Me”は“Nothing Can Stop Us”を想起させるポップでキャッチーな最高の仕上がりだ。そんなサーヴィスも含むアルバムの最後を飾るのは、35年もの歩みを振り返る“Last Time”。こんな終わり方もまた幸せなのかもしれない。

左から、セイント・エティエンヌの91年作『Foxbase Alpha』、2021年作『I’ve Been Trying To Tell You』、2024年作『The Night』(すべてHeavenly)、ヴィンス・クラークの2023年作『Songs Of Silence』(Mute)、コンフィデンス・マンの2024年作『3AM (La La La)』(Polydor)