Page 5 / 5 1ページ目から読む

極限まで緊張した武道館の舞台

――元の曲があって、今回新たな形になって完成したわけですが、ご自分ではどう感じていますか?

「紙芝居のようだった“深川のアッコちゃん”がハリウッド映画になって帰ってきたようでした。サザンオールスターズの音楽があることで、茅ヶ崎や江ノ島の魅力がアップしたところがあると思っているんですね。この曲によって、深川の景色がより魅力的なものとして認知されたらうれしいですよね。大好きな町が歌の舞台になって、しかもその歌が自分の曲だなんて、これ以上の幸せはないですし、今回のリリースを地元の方がとても喜んでくださったことが何よりもうれしいです」

――10月12日に開催された〈九段下フォーク・フェスティバル’25〉では、田内さんがオープニングアクトとして、“深川のアッコちゃん”を弾き語りで披露しました。どんな気持ちでステージに立ったのですか?

「伝説の夜の前座という大役を任せてくださっただけで、ミュージシャン冥利に尽きますよね。日本武道館で生の弾き語りで前座を務めるということは、桑田さんが演奏の面でも信頼してくださっていることだな、ありがたいなと思いました。

自分に与えられた役割を最大限に果たしたいという気持ちが強すぎて、本番前からこれまで経験したことがないくらい緊張しました。でも、緊張するのは戦闘モードに入るための自然な反応だと何かで読んだことがあったので、緊張するのは当然という意識で思って臨みました」

――歌とギターとハーモニカのみでの見事な歌と演奏でした。

「極限まで集中したせいでゾーンに入ってしまったみたいなんですよ。そのせいか、ステージで演奏している時のことはほとんど記憶がありません。終わった瞬間に、安心して胃の上のあたりが痛くなりました。この経験も自分にとって大きな財産となりました」

 

新時代の〈流し〉を目指して

――周囲の状況も大きく変化してきていると思います。現状をどう捉えているか、そして、今後の活動をどんなスタンスでやっていこうと思っているか、教えていただけますか?

「流しとしてギターを弾いて歌っているだけで、楽しいし気持ちいいんですよ。でも極限まで緊張して、自分に与えられた役割を果たすほうが何十倍も面白いんだなと気付きました。

レコーディングに集中して限界に挑む面白さも、桑田さんに気付かせていただきました。最高の環境で音楽をさせていただいたので、いつの日か、そこに近づけるように活動していきたいです。ソロライブで武道館に立つことと、自分の力でビクタースタジオでレコーディングすることが目標です」

――創作の目標はありますか?

「“深川のアッコちゃん”もそうなんですが、誰かの人生のバックグラウンドミュージックになれる曲を作っていきたいです。桑田さんからいただいた経験を活かして、人生のさまざまな局面の中で生じる辛い気持ちを、少しでも明るく支えられる音楽を作れたらと思っています」

――流しとしての活動は、今後どのようなスタンスになるのでしょうか?

「桑田さんから〈流し〉という称号をいただいたことで、今までの自分の音楽人生が肯定されたと感じたんですよ。そのことは気持ちの面でも活動の面でも大切にしていきたいです。近々、流しとして地方を回ることも計画しています。流しは昔からありましたが、時代とともに変化してきています。流しが今の時代の新しい音楽活動の方法の1つとして認知されるためにも、じっくり活動していくつもりです」

――新たな流しのパイオニアということですね。

「そうなれたらうれしいですね。その結果、流しとしての活動をする人が増えたら、音楽が町中にもっとたくさん流れると思うんですよ。そんなビジョンを抱きながら、新しいアコースティックのジャンルを切り拓いていけたらと思っています」

 


RELEASE INFORMATION

田内洵也 『深川のアッコちゃん(produced by 夏 螢介 a.k.a. KUWATA KEISUKE)』 深川レコード(2025)

リリース日:2025年11月19日(水)
品番:SGNCS-10324
価格:1,100円(税込)
タワーレコード限定

TRACKLIST
1. 深川のアッコちゃん(produced by 夏 螢介 a.k.a. KUWATA KEISUKE)
2. 深川のアッコちゃん(produced by 夏 螢介 a.k.a. KUWATA KEISUKE)-Original Karaoke-

 

EVENT INFORMATION
田内洵也『深川のアッコちゃん(produced by 夏 螢介 a.k.a. KUWATA KEISUKE)』リリース記念フリーライブ

2025年12月1日(月)タワーレコード東浦店
開演:17:00
出演:田内洵也
イベント内容:ミニライブ & CDジャケットサイン会
詳細:https://tower.jp/store/event/2025/12/067002

 


PROFILE: 田内洵也
田内洵也。1989年、長野県生まれ。愛知県とタイ(バンコク)にて育つ。幼少期からビートルズに憧れ、テニスラケットをギター替わりにして歌っていたが、中学時代のギター購入をきっかけにバンコクのストリートで弾き語りを始める。その後、都内近郊のバーで〈流し〉(=酒場で客のリクエストに応じて歌うストリートミュージシャンのこと)として演奏することを中心とした音楽活動を本格化させた。インターネットの普及により音楽もストリーミングで聞かれる時代となった一方で、時代と逆行するように、〈流し〉であることにこだわりを持ち続けた。そんな田内に突然、千載一遇のチャンスが転がり込む。自身が〈流し〉として演奏をしていたバーの常連客の一人が、なんと桑田佳祐。2017年にバーで出会うと、それ以来、幾度か客として桑田は田内の歌を聴くこととなる。ブルース、カントリーミュージックの影響を受けた田内の歌声、そして奇しくも桑田佳祐に強く影響を受けてきた彼の音楽を気に入っていた桑田が、数年の時を経て今春、「俺が一曲面倒みてやるよ」と、田内に声を掛けたのである。まさかまさかの桑田佳祐に楽曲プロデュースをしてもらう前代未聞の展開に。〈流し〉という特殊な経験を通して見てきた土地土地の人間模様、風土、文化、情感。それらをギターと歌で表現することにこだわって来たことで、たまたま掴んだ奇跡。不器用だが実直に音楽に向き合ってきた男がアメリカンドリームならぬジャパニーズドリームを掴むことができるのか!? 壮大な音楽ドキュメンタリーが、今、始まる。