多彩で親しみやすいサウンド
そこからコンスタントなEPリリースを重ねて発表したのが、先述の『I’ve Tried Everything But Therapy (Part 1)』であり、“Lose Control”であった。ルーツにあるソウル〜R&Bをベースにしながら、ラウド〜オルタナ系からハートランド系のロック、ヒップホップ、カントリーまで多様なスタイルのサウンドにフィットし、多様な角度からアプローチしていくヴォーカルは何よりの賜物だが、それを支えるクリエイターにも恵まれている。初作〈Part 1〉でプロデュースの中核を担ったのはジュリアン・ブネッタ。かつてワン・ダイレクションとの仕事で脚光を浴びたのも今は昔、近年ではサブリナ・カーペンターの成功の立役者と説明するほうが早いが、彼とアモらが組んで手掛けた“Lose Control”や“The Door”などの情熱的な仕上がりはやはり絶品だ。他にはアンドリュー・ウェルズによるヴィンテージ・ソウル風の“What More Can I Say”やヒップホップのビート感も備えた“Goodbye’s Been Good To You”における柔軟な身のこなしもテディの魅力だろう。
そこから2年後に登場した〈Part 2〉ではブネッタの制作パートナーとしてジョン・ライアン(このコンビではオリヴィア・ディーン仕事も記憶に新しいところ)やジェフ“ギッティ”ギテルマン、マット・ザラが名を連ね、つまりは現行シーンきっての多才な売れっ子ポップ職人たちがひしめく作品となった。そのぶん曲調も幅を広げ、逞しい激情ロック・ナンバー“Not Your Man”をはじめ、ボビー・ウーマックを連想させる節回しが光るソウルフルな“Bad Dreams”、さらにギヴィオンをフィーチャーしたネオ・ソウル的な風情の“Are You Even Real”、モダンなポップ・カントリーの雄大さを備えた“Guilty”……と、どこを切っても親しみやすく胸に迫る、但し書き不要のポップ・ナンバーが揃っていて、ここで記載してきた楽曲はいずれも今回の〈Japan Special Edition〉で楽しむことができる。
彼の持ち味が本国USだけでなく世界各国で支持されたことは、シンプルに彼の歌声と楽曲が真の普遍性を備えていることの証だろう。また、仮に英語圏の耳でなくとも、心の痛みや深い悲しみを知る者だからこそ醸し出すことのできる温もりや優しさがテディの歌声からは伝わってくるはずだ。昨年の来日を経て日本でもさらに広がっていきそうなこのタイミングで、珠玉の歌声と楽曲たちに心を揺さぶられてほしい。
テディ・スウィムズのEP作品を紹介。
左から、2021年作『Unlearning』『A Very Teddy Christmas』、2022年作『Tough Love』『Sleep Is Exhausting』(すべてWarner)
左から、テディ・スウィムズの2023年作『I’ve Tried Everything But Therapy (Part I)』、2025年作『I’ve Tried Everything But Therapy (Part 2)』(共にWarner)、ギヴィオンの2025年作『Beloved』(Not So Fast/Epic)