
藍井エイルの背中をドーン!と押す応援歌
――そして、先ほどお話にあった“閃光のPRISONER”です。当時Elements Gardenに所属していた母里治樹さんが作曲したドラマティックな曲調で、エレガらしい作品だなと。
「誰がどう聴いても超エレガですよね! 南里さんの曲を入れたいという思いはすごくありました。野崎さんへの感謝もありますし、あの頃があったからこそいまの私がいるから。正直、“Mother land”と悩んだんです。だけど、 “閃光のPRISONER”が私のボーカリストとしての魅力を活かせるなと思って歌うことにしました。
ただ、いざ歌ってみたら……南里さんは歌がめちゃめちゃお上手だと痛感しました。南里さんって、単に音符を追うだけじゃなく、声優でもあるのでお芝居もしながら歌うんですよね。それが秀逸で、RECしながら何度もプレイバックして研究して。たとえば、〈刹那の果て〉というフレーズを歌うとき、南里さんは〈果て〉の前にブレスを入れるんです。〈刹那の(スウッ)果て〉って、果てるんですよ、ちゃんと! そういうテクニックがたくさんあって、めちゃめちゃ勉強になりました。私の〈果て〉でも再現しているので、ぜひ聴いていただきたいです」
――〈暗闇を撃て〉のハイトーンなど、TRUEさんのパワフルなボーカルの魅力が全開だと思いました。
「ありがとうございます。いつかElements Gardenさんの曲を歌ってみたくて、憧れがあったんです。めっちゃ気持ちいいんですよ、エレガさんの歌って。ボーカリストが見せたいところでちゃんと見せられるんです。
それこそ日本人が好きな歌謡節もあるから、どの世代の人が聴いてもいい曲だと感じられますし」
――7曲目の“GENESIS”は藍井エイルさんの代表曲のひとつになっていますね。
「エイルちゃんとは最近すごく仲良くさせていただいてて、エイルちゃんにいま伝えたい思いを“GENESIS”で表現したいなって思ったんです。私信になっちゃうかもしれないけど、エイルちゃんの不器用な生き方がとても好きというか……」
――共感みたいなものですか?
「応援したくなる、が近いかな。エイルちゃんって取り繕えないというか、エイルちゃんとしてじゃなきゃ生きられなくて、〈そんなことで傷つかなくてもいいよ〉ということをちゃんと受け止めるから、防御を知らないんですよね。そうやって迷ったり間違えたり傷ついたりするけど、〈でも、やっぱり歌が歌いたい〉って何度も立ち上がる姿がすごくかっこよくて美しい。私もそんなふうに生きていきたいなって思うから、エイルちゃんへの応援歌としてこの曲を収録しました。
昨年、〈anitopia Sapporo 2025〉というイベントで一緒に歌ったんですけど、“GENESIS”という曲が持つ〈始まり〉という意味は進化したんだなって、エイルちゃんが歌う姿を見て感じました。“GENESIS”の歌詞にもありますが、何度間違えて傷ついても、もう一度立ち上がろうとする勇気こそが〈始まり〉なんだなって。だから、立ち止まってしまったり、迷ったり悩んだり、傷ついて動けなくなっている人の火種にこの曲がなれば、と思って歌うべきだと考えたんです」
――唐沢さんが書く歌詞には〈何度でも立ち上がって始めよう〉というメッセージが多い印象です。
「たしかにそうかもしれません。私、この世界に転生してきたので。もう一回、第二の人生を歩み直しているから。いま初めて気づきました」
――“GENESIS”ではTRUEさんの圧倒的な歌力を感じました。
「ありがとうございます! アレンジも変えたので、聴き比べてみてください。“GENESIS”はアレンジをガラッと変えて強い曲にしたかったので、細かくリクエストしたんです。エイルちゃんの背中をそっと押すのではなくて、ドーン!って押してあげられる強い曲になったと思います」
CDで曲間も楽しんで
――最後に収められている“Finally”は「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる」のエンディング主題歌。花澤香菜さん演じるキャラクターの曲ということで、アルバムのなかでも毛色が異なる優しい歌になっています。
「オープニング主題歌の“ブルーデイズ”も私がTRUEとして担当したのですが、この曲は個人的にすごく好きだったんです。好きな人の好きなところをひとつずつ数えていく、すごく可憐な曲で。この曲でも花澤さんの表現力に本当に驚かされました。なので、ボーカリストとして新たなチャレンジをしたくて収録しました。
これもかなりリアレンジしていて、すべて生演奏で録っていただいています。TRUEの代表作のひとつである『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の楽曲みがあるというか、ひとつずつ言葉を綴っている、言葉を大切にしている感じも表現できたので、カバーしてよかったと思います。
アルバムのなかではボーナストラック的に楽しんでいただきたくて、あえて曲間をかなり空けたんです。配信で楽しんでいただく時代ですけど、せっかくなのでCDプレーヤーで曲間も一緒に楽しんでいただけたらと思います」
――母性愛すら感じる優しい歌のアプローチは、ご自身にとっても挑戦だったのでは?
「新たな表現への挑戦でした。近年、ビルボードライブ公演だったり、アコースティックライブやディナーショーだったり、いろんな形のライブをしていて。いまのTRUEの軸のひとつになりつつあるのが、こういう音数が多くないアレンジの曲なんですね。それを表現しかったので、この曲も迷いなく収録を決めました。
読後感があると思うので、聴き終わったあとにご自身の大事な人をイメージして聴いていただけたらと」