Corneliusの新作『Ethereal Essence』は、Corneliusが近年発表してきたアンビエント色が強い作品を中心に再構築したアルバム、という位置づけだ。カップリング曲や展示への提供曲などが含まれる作品だが、本作のために再編集や再レコーディングが施された曲が多数あり、雑然とした印象はもちろん皆無で、スムーズな一貫性をもったアルバムに仕上がっている。単なる〈仕事集〉に留まらず、新たな側面やモードが垣間見える、Corneliusのディスコグラフィの中でも類を見ない響きとたたずまいが実に美しい。

そんな『Ethereal Essence』のリリースとともに、活動開始から30周年を祝って、Corneliusは2024年5月から中国・ヨーロッパ・アメリカを回るワールドツアーを開催している。さらに日本では7月7日(日)に東京ガーデンシアターで、13日(土)にロームシアター京都で30周年記念公演もおこなう。

同公演で販売されるパンフレットには、Corneliusこと小山田圭吾が選曲した1000曲(!)のプレイリストが掲載される。そして本日6月25日からは、プレイリストと連動した選盤の展示と販売がタワーレコード渋谷店の6階で開催。今回オープンから10周年を迎えたMikikiは、これらにあわせて小山田に特別インタビューを実施。編集者/批評家の松村正人が聞き手を務め、1000曲の中身を中心に語ってもらいつつ、〈リスナーとしての小山田圭吾〉が浮かび上がる内容になった。 *Mikiki編集部

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Cornelius 『Ethereal Essence』 ワーナー(2024)

 

ビートルズもストーンズも、小山田圭吾の〈1000本ノック〉プレイリスト

――どのようなきかっけで1000曲のプレイリストをつくることになったんですか。

「今年ソロ活動30周年で記念のライブをやるんですけど、そのためのパンフレットの記事として1000曲選ぶという企画を考えたんです。最初は300曲の予定だったんだけど、どうせなら、ということで1000曲になりました。これくらいあると水原弘さんの“黄昏のビギン”もなじんでくるんですよ(笑)」

――1000曲選ぶのにどれくらいかかりました?

「空いている時間をつかって2〜3日です。でもまあ選び抜いたというよりは思いついた順に入れていったので漏れがあるし、サブスクをつかっているからそこにない曲は入ってないんですね。洋楽と邦楽の区別も、ジャンルも時代区分もなく、という感じです」

――選曲にあたってはとくに意識されたことはないということですが、仮に視点を設けたいと思います。ひとつは誰もが知るアーティストの楽曲でなにを選んだかということです。ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ビーチ・ボーイズ――等々でどのような選曲をされるかというのが気になるところです。目につくところからだと、まずビーチ・ボーイズの“Meant For You”。短い曲です。

「ああ、これね」

――小山田さんとビーチ・ボーイズなら、それこそテルミンが活躍する“Good Vibrations”やフリッパーズ・ギターで引用されていた“God Only Knows”を考えてしまうのですが。

「そういう大好きな曲があるんですけど、アルバムとしては『Friends』(1968年)が好きなんですよね。もちろん『Smile』(1967年)とか『Pet Sounds』(1966年)とか、あのへんはもちろん大好きなんですけど、『Friends』はサウンドプロダクションがすごく薄くて、(アルバムの尺も)短くて聴いた気がしなくてアンビエント的に聴けるんですね。『Pet Sounds』だと対峙しなきゃいけない部分が強すぎてつかれちゃうっていうのもあって、そうすると『Friends』の再生回数が増えてしまって。

ビーチ・ボーイズのようなでかいアーティストになると選ぶのがたいへんすぎて、逆にヘンな曲、選んじゃうっていう現象になりがちじゃないですか(笑)」

THE BEACH BOYS 『Friends』 Capitol(1968)

――すごくよくわかります。

「でもこの曲はほんとうに好きなので、これになりました。相当かわった選曲だと思うんですけどね」

――ビートルズは“Tomorrow Never Knows”(1966年)です。こちらは直球です。変化球を投げたり、ストレートを放ったりといった感じですね。

「もう気分しだいです。そこまで熟考してないですよ(笑)。

でも“Tomorrow Never Knows”はテープコラージュで現実音を使っているところとか、自分の好きな要素がすごく入っています」

――一方でストーンズは“悪魔を憐れむ歌(Sympathy For The Devil)”をとりあげています。

「これもほんと気分しだいです(笑)。ハイド・パークのライブの映像とか、かっこいいですよね。この曲は『Beggars Banquet』の収録曲だけど、『Let It Bleed』(1969年)も好きですね。

でもストーンズ好きな方はほんと好きじゃないですか。僕はそこまではぜんぜんいってないんですけど、でもライブは観に行きましたよ。こないだの来日(2014年2月26日、3月4日、6日の東京ドーム公演)のとき、はじめて観ました。それからもうずっと注目しています。インスタも全部フォローしています(笑)」

THE ROLLING STONES 『Beggars Banquet』 Decca(1968)

THE ROLLING STONES 『Let It Bleed』 Decca(1969)

――注目している方はおそらく何百万人かいらっしゃるとは思いますが(笑)、小山田さんがついにストーンズに注目されるようになったと。

「現在もつねに追いかけてます。キースが最近“I’m Waiting For The Man”をカバーしていたじゃないですか。それがめちゃくちゃよくて、ヴェルヴェッツ好きなんだっていうのが衝撃で。でもキースにぴったりでした。キース節でよかったですよ」

 

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドへの思い入れの強さ

――そのヴェルヴェット・アンダーグラウンドで小山田さんが選ばれた曲が“Pale Blue Eyes”です。

「この曲はスタンダード的な感じがするけど、一番チルな感じがするサード(1969年作『The Velvet Underground』)から選びました。

ムズいですよ、ヴェルヴェッツとか、ほんと(笑)。もうなんでもいいとなっちゃいますからね。ヴェルヴェッツこそ嫌いな曲もアルバムもないですから。わりと短期間で解散しているし、作品の数が少なくてムラがないうえに一枚ごとにちがう。全部(のアルバム)が好きなアーティストってあまりいないんですよ。ストーンズになると、1980年代以降はあまり聴いていないわけで、それにたいしてヴェルヴェッツはアルバムも4枚だから完璧なディスコグラフィです。なので、どの曲でもいい――というぐらいだけど、やっぱ“Pale Blue Eyes”はいい曲だなということですよね」

THE VELVET UNDERGROUND 『The Velvet Underground』 MGM(1969)

――一方で、ヴェルヴェッツからはジョン・ケイルとルー・リードを選ばれているということは、小山田さんにとっては重要なバンドということですね。

「ストーンズよりは思い入れが強いですね」

――ケイルは“Child’s Christmas In Wales”、ルー・リードは“ワイルド・サイドを歩け(Walk On The Wild Side)”、どちらも名曲ですね。

「あのアルバム(1973年作『Paris 1919』)は最高ですね。ジョン・ケイルは去年出したアルバム(『MERCY』)も最高でした。新作(『POPtical Illusion』)も、めちゃくちゃノイジーですごかったですよ」

JOHN CALE 『Paris 1919』 Reprise(1973)

JOHN CALE 『MERCY』 Double Six/Domino/BEAT(2023)

JOHN CALE 『POPtical Illusion』 Domino/BEAT(2024)

――あの老いていく感じはスコット・ウォーカーを思わせるものはないですか。

「たしかにダンディズム的なところになっていますよね。年をとって衰えないどころか先鋭化しているし、攻めの姿勢を止めないし説得力がどんどん深くなっていますよね」

 

小山田圭吾のハードロック魂

――ランキングでもジャンル別でも年代順でもないリストだとどうしてもアルファベチカルにならざるをえず、となると、どうしてもAC/DCの“Let There Be Rock”が目につきます(笑)。

「オープニングにぴったりじゃないですか(笑)」

――リストを眺めると、全体的に80年代の英国産の作品が目につきますが、ハードロック関係もちらほらみあたりますね。

「そこはしょうがないというか、中学生のころ、ギターをはじめたときにけっこう聴いていたのの刷り込みがでかいんですよ。このへんの曲を練習したりしたから弾けちゃうというのも大きいです」

――ギタリストとしての小山田さんを裏書きしていると。

「そういうのはありますよ」

――なるほどと思ったのはスティーヴ・ヴァイでした。

「ああ、はいはい」

――彼のファースト『Flex-Able』(1984年)収録の“Little Green Men”を選ばれていたのがさすがだと思いました。

「ありがとうございます(笑)。『Flex-Able』最高ですよね。ヴァイはあのアルバムだけぜんぜんちがいますよね。あれは宅録なんだよね」

STEVE VAI 『Flex-Able』 Urantia (1984)

――そうですね。1990年代、学生だったころ、友人にCorneliusに通じるものがあると主張して受け入れられなかった憶えがあります。

「鋭いですね。かなり影響を受けていますよ」

――溜飲をさげさせていただきました(笑)。あのアルバムはザッパの影響下にありますものね。

「ザッパにいわれて、人の会話をギターでコピーしろといわれて、やっている曲(『Flex-Able Leftovers』収録の“So Happy”)がありましたよね」

STEVE VAI 『Flex-Able Leftovers』 Urantia /Akashic(1984)

――そのトリッキーな部分が小山田さんに通じると当時感じたのだと思います。

「あの人はテクニックも超絶だし、特殊な技もたくさんあるし、機材の研究もすごいですからね。ザッパのエッセンスも入っているから、普通のハードロックギタリストよりもだいぶ特殊な感じですよね。

そういえばヴァイはパブリック・イメージ・リミテッドの『Album』(1985年)でもギターを弾いていますよね。ビル・ラズウェルと教授(坂本龍一)が参加している、そういう文脈もありましたよね」

――PiLは『Album』から“Rise”を選ばれていますね。ビル・ラズウェルはバケットヘッドとも共作していますからさもありなんですね。

PUBLIC IMAGE LTD. 『Album』 Virgin/Elektra(1985)

 

リッチー・ブラックモア派、エイドリアン・ブリュー推し

――一方で、クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジの3大ギタリストではレッド・ツェッペリンの“Good Times Bad Times”しか入っていません。

「たしかに」

――クリーム(エリック・クラプトン)などはお気に召さない?

「僕はクラプトンよりは断然リッチー(・ブラックモア)派なんですね」

――ディープ・パープルは入っていますか?

「入ってるよ、“Hush”が」

――ああ。初期ですね。

「その点はもうしわけないんだけど、“Hush”はジョン・ロードがオルガンを(パーカッションみたいに)叩くイントロがいいんだよね」

――レインボーも“Stargazer”を選曲されていますからリッチー派というのはおっしゃるとおりですね。

「レインボー、何年か前に復活したよね。リッチーはずっと奥さんのキャンディス・ナイトとケルト音楽みたいなことをずっとやっていたんだけど、その姿があれを思い出すんですよ――」

――ロバート・フリップですか。

「そう(笑)。YouTubeにあがっているトーヤ(・ウィルコックス)とのパフォーマンスを思い出すよね」

――そういえば、キング・クリムゾンは“Elephant Talk”でしたね。

「それについては、僕はエイドリアン・ブリューが客演している作品が好きなの。ブリューがメインのはそうでもないんだけど、トーキング・ヘッズの“Once In A Lifetime”も入れましたけど、トーキング・ヘッズとかローリー・アンダーソンとか客演しているのは全部好き(笑)」

――クリムゾンでまさかのブリュー推しとは、プログレファンに怒られますよ。あとつけくわえるなら、ハードロックかわからないですが、シン・リジィが気になりました。

「シン・リジィ大好きです。いいですよね」

――シン・リジィは大人になると味わい深くなってくるバンドかもしれないですね。

「僕も若いころから知っていたけど、好きになったのは比較的最近ですもん。R&Bのニュアンスもあるし、時代によってはニューウェーブっぽくなったりもして、ハードロックだけでは語れない。ゲイリー・ムーアが脱退したとき、ウルトラヴォックスのミッジ・ユーロが代役をつとめたことがあるんだよね。ベースがボーカルなのもかっこいいし。アイルランド最初の国民的ロックスターでU2より断然早いからね。

ヴァンパイア・ウィークエンドが“ヤツらは町へ(The Boys Are Back In Town)”をカバーしていたし、プライマル・スクリームのボビー(・ギレスピー)がいったはじめてのライブがシン・リジィなの」

 

シンセポップとアンビエントの狭間で

――Corneliusの新作『Ethereal Essence』になぞらえると、リストにはアンビエント的な要素がある楽曲も多いですね。ただ全体的な傾向としては狭義の環境音楽というよりも、シンセポップやニューウェーブのサウンドテクスチャーと地続きな印象があります。選曲にさいして意識されたことありますか。

「結果、そうなったという感じですかね。80年代のものが多いのは、思春期に聴いていたものが記憶に定着している度合いがつよくて、選曲をしようとするとパッと出てくるんでしょうね。

たとえばシンセポップだと、フラ・リッポ・リッピというバンドがいます。ノルウェーのバンドでジョイ・ディヴィジョンのフォロワーみたいな感じで出てきたんですけど、途中からエレポップ、シンセポップ路線になって、当時ヨーロッパでもまあまあヒットしていたんじゃないかな。それを聴き直して、どれもいいと思って。ほんとうにいま、日本では誰も聴いていなさそうだけど、向こうではすごく人気があったんですよね。

日本でもZABADAKが彼らの『Songs』(1986年)に入っている“Shouldn’t Have To Be Like That”という曲を“水のソルティレージュ”としてカバーしています。ZABADAKは、僕はなぜかデイト・オブ・バースと混同しがちなんだけど、そういうバンドや作品を忘れてはならないというのと、ティアーズ・フォー・フィアーズがいまめちゃくちゃ人気あることを知りました。Spotifyの再生数でもかなり上位にいるんですよ」

FRA LIPPO LIPPI 『Songs』 Easter Productions(1985)

――ティアーズ・フォー・フィアーズは“Everybody Wants To Rule The World”を選ばれています。

「この曲なんかマジで再生回数10億超えですよ。いまそれを若い人たちも聴いている。当時もふつうにチャートのべスト10とか、ビルボードにも入っていましたよね」

――当時の記憶だとこの曲と――。

「“Shout”だよね。こっちのほうが日本では車のCMにつかわれていたから印象が強いかもね。舘ひろしさんの出ていた車のCM曲が“Shout”だったの。

彼らは最初、ダークウェーブというか、ファーストはすごく暗い感じだったんだけど、セカンドの『Songs From The Big Chair(邦題=シャウト)』にはロバート・ワイアットに捧げた“I Believe”なんかもあるし、アメリカでヒットしましたよね。あと彼らはニューウェーブの時代のミュージシャンとしては楽器もめちゃくちゃ巧かったんですね。当時アメリカで売れたUKニューウェーブのバンドって意外と少ないんですよね。ニュー・オーダーとかもアメリカではあんまり。

彼らはいまでも活動していて、かなりビッグなバンドになっているみたい。僕もなんだかんだでずっと聴いてます」

TEARS FOR FEARS 『Songs From The Big Chair』 Mercury/Phonogram(1985)

――舘ひろしもいま「あぶない刑事」でリバイバル中ですね。

「舘ひろしさんといえばブライアン・フェリー(笑)。ちなみにブライアン・フェリーは入っています」

――“Let’s Stick Together”ですね。ブライアン・フェリー関連ではロキシー・ミュージックの“Avalon”もとりあげていますね。イーノも『Taking Tiger Mountain (By Strategy)』(1974年)の“Third Uncle”があがっています。

――イーノはほかにもアンビエントの名盤『Cluster & Eno』(1977年)の1曲目を選ばれています。

「イーノはソロ以外でも、誰かと組んでいる作品を入れだすとけっこういけるからね」

――デヴィッド・バーンとイーノとのアルバムの曲も入っていますね。

CLUSTER, BRIAN ENO 『Cluster & Eno』 Sky(1977)

BRIAN ENO, DAVID BYRNE 『My Life In The Bush Of Ghosts』 Sire/E.G.(1981)

 

90年代に掘ったレコード、サブスクで発見した邦楽

――王道もあれば隠れた名曲もある。その点は個人史の反映でもあって、80年代に選ばれた楽曲にそれがもっともあらわれていると思うのですが、80年代末以降、ミュージシャンとして活動されるようになってから音楽環境の変化はありましたか。

「20代(1990年代)はレコードを買えるようになったので、とにかくレコードを買っていました」

――そのころに買って印象に残っているものはありますか。

「それまではあらゆる年代のいいとされているものをひと通り聴く感じだったんですけど、ブラックミュージックをあまり聴いていなかったので、そこらへんから意識的に聴くようになりました。あとはミニマルミュージックとかモンドっぽいものも、20代半ばごろから聴いていったという感じです」

――マウス・オン・マーズの“Stereomission”(1995年)などは当時の楽曲ですね。

「この曲はすごい衝撃だった」

――ちょっとCorneliusっぽいですよね。

「〈みなさま〉とか〈すなわち〉とか、ちょっと歪んだ日本語のナレーションをつかった曲でAIを先取りした感じがあるんだよね(笑)。

90年代、20代のころは、同時代の音楽を聴きながら、並行して日本の昔のロックとか、知らないものを聴いてみたいと思っていた時期ですね。

もちろんサブスク時代になってから昔のことを掘ったりとかして見つけたみたいなのもけっこうありますよ。サブスクはなんでもあるからさ、気になって聴きはじめたらハマって1時間くらい聴いちゃったりすることもあります。日本のフォークとかあまり知らなかったんですけど、吐痙唾舐汰伽藍沙箱(とけだしたがらすばこ)や西岡たかしさんなんかは新たに発見しました。フォークル(ザ・フォーク・クルセダーズ)とかは知っていたけど、あんなテープコラージュをやっているフォークがあったことも90年代は知らなかったからね。

吐痙唾舐汰伽藍沙箱 『溶け出したガラス箱』 URC(1970)

じっさい手に入るものも(1990年代は)あまりなかったりしたじゃないですか。それがサブスクになると、そういうものがどんどん出てきて、金延(幸子)さんや愚とか、いろいろおもしろくなって関西のフォークに一瞬ハマっていました。金延さんは時期的にも女性シンガーソングライターとして相当早かったと思うし、さっさと辞めてアメリカに行っちゃって、そうとうかっこいいですよ。はっぴいえんどはすごく語られていてなんとなく知っていても、関西の金延さんまわりの人たちの話は目にする機会は少ないじゃないですか。ああいうアシッドフォークのシーン、はっぴいえんどとは別の世界がすぐそこにあった。

金延幸子 『み空』 URC(1972)

そういう発掘ものがサブスクにはあって、いま発見しているところです。中国のロックとか、アジアのいろんな国の音楽もそうですよね。ドラゴンズとかね。キリないですよ」

――ドラゴンズはサブスクにはないと思いますよ(笑)。とはいえそれらを伝聞ではなく、じっさいに聴くことができるのはこの時代の特権かもしれないですね。もし1990年代にサブスクがあったら小山田さんはどうしていたと思います?

「パソコンの前から動かないと思う。ひきこもりになっていたと思う(笑)」

――他方で、小山田さんのプレイリストということで興味をもって聴いて、ここから発見することも多いと思うんですね。

「世界のどこかに誰かのプレイリストがあると便利ですよね。サブスクは海みたいなものだから見つけるのが難しいんですよね」

 

YMOの3人を温故知新

――日本の昔の音楽で発見があったとのことでしたが、日本だと友人や知人の方の作品もどうしても入ってきます。たとえばサディスティック・ミカ・バンドの“墨絵の国へ”はCorneliusのツアーでも客入れで使用されていました。

「“タイムマシーンにおねがい”とかもふつうに好きなんですが、この曲はいま聴くとぴったりくる感じがすごくするんですね。ちょっとアンビエント的にも聴けるし、(高橋)幸宏さんが語りなのもなんかいいんですよね。

ミカ・バンドで幸宏さんの声はほとんど聴けないけど、この曲はがっつり聴けていいなと思うんですね。語り、ナレーションのレコーディングの仕方もちょっと面白いですよね」

――幸宏さんのソロでは“回想”をとりあげています。82年の『WHAT, ME WORRY? ボク、大丈夫!!』の収録曲です。

「作曲は坂本さんですがいい曲ですよね。これはもうストレートに選びました。大好き」

高橋幸宏 『WHAT, ME WORRY?』 YEN(1982)

――そしてサディスティック・ミカ・バンドの下の欄の坂本龍一さんの楽曲では『out of noise』の“hibari”を選ばれています。2009年ですから比較的新しい楽曲ですね。

「坂本さんもたくさんあるのでなかなか選べないんですけど、この曲も無限に聴ける感じというか、いつ聴いても大丈夫だし、永遠につづいてもいやじゃないということですよね」

坂本龍一 『out of noise』 commmons(2009)

――Corneliusの新作『Ethereal Essence』では坂本さんの“Thatness and Thereness”のカバーを収録されていますが、教授に対する追悼の意味合いでしょうか。

「楽曲自体は亡くなる前の坂本さんのトリビュートに収録したものなんですが、今回アルバムにも合うなと思ったんですね。オマージュ的な意味合いも多少はありますけど、『Ethereal Essence』はいろんな機会に発表した楽曲を集めたアルバムなので、その点でも主旨に合っているというか」

坂本龍一 『A Tribute To Ryuichi Sakamoto - To The Moon And Back』 commmons(2023)

――そして細野さんは『omni Sight Seeing』(1989年)から“KORENDOR”でした。

「『Ethereal Essence』も、この時代の細野さんの感じというか、『COINCIDENTAL MUSIC』(1985年)という細野さんのCM音楽を集めたアルバムがあるんですが、ああいう感じにしたいとも思っていました。今回の僕のアルバムにも、企業に提供した楽曲が混じっていたり、いろんな経緯で発表したものをひとつのアルバムとしてまとめるようなイメージがありました」

細野晴臣 『omni Sight Seeing』 エピック/ソニー(1989)

細野晴臣 『COINCIDENTAL MUSIC』 MONAD/テイチク(1985)

 

音楽のパラメーターは無限

――アンビエントがいまの小山田さんのモードですか。

「いまというよりもちょっと前、『夢中夢』(2023年)のとき、もっといえばコロナ騒動のころの感じですね。

去年、これの前に〈AMBIENT KYOTO〉というイベントをやったんですけど、そこでアンビエントワークスをまとめたカセットをつくったんです。それきっかけっていうのもあって、こんな感じでアルバムをつくりたいなと思ったんです。今回のアルバムはそのときのカセットと何曲かかぶるんですが、そこ以外のところからも選曲の幅を増やして、あんまり聴いたことないような曲を中心に選んでいた感じです」

――音響面であらためて思ったのは、小山田さんがポルタメントな音づかいに生理的というか聴覚的な志向性をもたれているのだということです。

「それはあるかもしれない。音がつながって変化していくのは気持ちよさを感じさせますよね。スティールギターってけっこうアンビエントでつかわれるじゃないですか。弾けたらすごくつかいたいけど」

――つかったらいいじゃないですか(笑)。

「いやそうなんだけど(笑)、スティールギターはアンビエントと合いますよね。イーノの作品でのダニエル・ラノワや、KLFの『Chill Out』(1990年)でも印象的な使われ方をしてますよね」

――テルミンやアナログシンセも、ポルタメント楽器みたいなものじゃないですか。

「やっぱりそういうサウンドに気持ちよさを感じるんでしょうね」

――さきほどサブスクは海みたいなものとおっしゃいましたが、このプレイリストは島みたいなものだと思うんですね。小山田さん自身、このような音楽の歴史や共同体の一部だという自覚はありますか。

「なんらかの要素にはなっているんだろうなという感じはありますけどね。ただ音楽をつくるということにおいてはパラメーターは無限ですから」

――その時点の思考を象徴するものということかもしれないですね。別の機会やテーマだと、プレイリストもまたガラッと変わっているかもしれない。

「1週間もあれば、1000曲選べますから(笑)」

――またよろしくお願いします。

 


EVENT INFORMATION
PLAYLIST CURATED BY CORNELIUS in TOWER RECORDS SHIBUYA
ニューアルバム『Ethereal Essence』の発売を記念して、ライブ〈Cornelius 30th Anniversary Set〉にて販売されるパンフレットに掲載の〈Playlist of 1000 songs selected by Cornelius〉でセレクトされた盤から一部を、タワーレコード渋谷店で展示、販売。
日時:2024年6月25日(火)〜2024年7月8日(月)
場所:タワーレコード渋谷店6F特設コーナー ※フロアが変更になりました
タワーレコード渋谷店限定特典:ジャケットステッカー
※ジャケットステッカーは数量限定につき、なくなり次第終了となります。
https://towershibuya.jp/news/2024/6/24/200286

 

RELEASE INFORMATION

Cornelius 『Ethereal Essence』 ワーナー(2024)

リリース日:2024年6月26日(水)
品番:WPCL-13566
価格:3,300円(税込)
配信リンク:https://Cornelius.lnk.to/etherealessence
通常盤CD 1枚組

TRACKLIST
1. Quantum Ghost(アナログ7 inch『火花』カップリング曲。初CD化)
2. Sketch For Spring(渋谷パルコオープン記念BGM。初CD化。初配信)
3. Heaven Is Waiting(初CD化。初配信)
4. サウナ好きすぎ、より深く / Too Much Love For Sauna (Falling Deep)(テレビ東京ドラマ「サ道」テーマ曲のリアレンジ曲。初CD化。初配信)
5. Xanadu(初CD化。初配信)
6. ここ(谷川俊太郎展(2018)展示楽曲。初CD化。初配信)
7. Step Into Exovera(初CD化。初配信)
8. Forbidden Apple(2021年配信シングル。初CD化)
9. Melting Moment(〈BYSAKUU〉第5弾のカセットに収録された楽曲リアレンジ。初CD化。初配信)
10. 告白 – Cornelius ver.(ASA-CHANG & 巡礼『まほう』収録曲)
11. Mind Matrix(初CD化。初配信)
12. Windmills Of My Mind(雑誌「Nero」10周年記念号エキシビジョンで販売されたアナログ7 inch収録。初CD化。初配信)
13. Thatness And Thereness – Cornelius Remodel(『A Tribute to Ryuichi Sakamoto』収録)

 

LIVE INFORMATION
Cornelius 30th Anniversary Set

2024年7月7日(日)東京ガーデンシアター
2024年7月13日(土)ロームシアター京都 メインホール

Cornelius “Dream In Dream” World Tour 2024
■中国
2024年5月26日(日)Bandai Namco Shanghai Base Dream Hall – 上海
2024年5月28日(火)Fullof Livehouse – 北京

■ヨーロッパ
2024年8月30日(金)– 9月1日(日)End Of The Road Festival – Salisbury (UK) (TBA)
2024年9月3日(火)Paradiso – Amsterdam (NL)
2024年9月6日(金)Barbican – London (UK)

■アメリカ
2024年9月21日(土)Music Box – San Diego, CA
2024年9月22日(日)Pappy + Harriet’s – Pioneertown, CA
2024年9月24日(火)The Fonda Theatre – Los Angeles, CA
2024年9月25日(水)UC Theatre – Berkeley, CA
2024年9月27日(金)Crystal Ballroom – Portland, OR
2024年9月29日(日)The Neptune Theatre – Seattle, WA

海外チケットリンク:https://www.corneliusjapan.com/tour1

 

INFORMATION
Cornelius Official Merchandising
ワーナーミュージック・ストアにて販売中。
https://store.wmg.jp/collections/cornelius

 


PROFILE: Cornelius
小山田圭吾のソロプロジェクト。1993年、Corneliusとして活動をスタートさせる。現在までに7作のオリジナルアルバムをリリース。自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、インスタレーションやプロデュースなどで幅広く活動中。