TV版、外伝、劇場版の音楽コンプリートで、心震わせる〈ことば〉と描く、サーガの集大成。

 人気アニメ・シリーズ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。その世界を音楽で綴るオーケストラ・コンサートは今年で4度目。当初2月6日を予定していたものの、コロナ禍で延期となりやきもきさせたが、8月15日と16日(昼・夜)の3公演に拡大して開催され、大成功を収めた。この度、ライヴ&アーカイブでも動画配信された15日の模様を完全収録したBlu-rayの発売が決定し、再び大きな反響を呼びそうだ。

VARIOUS ARTISTS 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン オーケストラコンサート2021』 京都アニメーション・ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会(2022)

 公演は2部構成で、主人公の声を担当した石川由依が披露する「お初にお目にかかります。お客様がお望みなら、どこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」の決め台詞と共に開幕。前半はTRUEの歌うTVアニメ版オープニング主題歌“Sincerely”を皮切りに、劇伴でヴァイオレットの歩んだ道を辿る。兵士として戦うことしか知らなかった彼女が、戦後に〈自動手記人形〉と呼ばれる手紙の代筆業に就き、様々な境遇の依頼人たちとの出会いによって、戦場で生き別れとなった大切な人・ギルベルト少佐が最後に残した〈愛してる〉という言葉の意味を探していく……その姿がライデンシャフトリヒ交響楽団の壮大な演奏で再びファンの胸によみがえる。特に、かつて殺戮に手を染めてきたことへの罪悪感で引き裂かれそうになった彼女の台詞「いいのでしょうか。わたしは自動手記人形でいて、いいのでしょうか。生きて……生きていて、いいのでしょうか……」の後、結城アイラが歌う、TV版屈指の名エピソード第9話のスペシャル・エンディング主題歌“Believe in...”には心揺さぶられるはず。その後、劇場で公開された「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 ~永遠と自動手記人形~」の音楽と茅原実里が歌う外伝主題歌“エイミー”で、前半は感動的に締めくくられた。

 トークコーナーでは石川がMCを務め、音楽を担当したEvan Callがステージに登場。2012年から日本で作曲活動を続けている彼の流暢な日本語と優しそうな人柄、そしてこの作品に向けられた誰よりも深い愛情と真摯なメッセージもコンサートの聴きどころのひとつである。

 そして後半はいよいよ、劇場版の世界に。少佐の手がかりを追うヴァイオレットを待ち受ける運命については、これから観る人のために伏せておくが、ヴァイオレットが最後の手紙を朗読した後で、茅原の歌う〈みちしるべ〉が披露されてから後は、もうただただ、涙。ぜひ、アンコール曲までお家で見届けて欲しい!