Guianoが自身3枚目となるフルアルバム『The Sky』をリリースした。2014年にボカロPとして活動を始めた彼は、2018年に発表した“スーパーヒーロー”や“死んでしまったのだろうか”などでヒットを記録。フューチャーベースやトロピカルハウスの要素を取り入れた爽やかなサウンドで大きな支持を集めた。2021年にリリースした2ndアルバム『A』では、ほぼすべての楽曲を自ら歌唱し、シンガーソングライターとしての活動を本格化。この度リリースされた『The Sky』は、ポスト・ハイパーポップ的なロックチューン“せかいのしくみ”をはじめ、Guianoというアーティストの新たなフェーズを感じさせる楽曲が並んでいる。このアルバムはどのようにして生まれたのか。その経緯やコンセプトについてたっぷりと訊いた。

Guiano 『The Sky』 ALLT(2026)

 

〈自分を受け入れる〉ことで抜け出したスランプ

――今作『The Sky』は前作『A』から5年ぶりのフルアルバムということで、まずはリリースに至るまでの経緯について伺いたいと思います。2023年の取材では『A』をリリースした時期はスランプに陥っていたと話されていました。当時はどのような状況だったのでしょうか?

「『A』は本格的に自分で歌っていこうとした時期にリリースしたアルバムなんですが、ボカロを使った曲と自分で歌う曲では作り方がまるで違ったんですよね。例えば昨今のボカロ曲はJ-POPとは構成が違って、尺が2分半くらいだったりすると思うんですが、それを自分の声でやろうとしても、ボカロの方がいいものになってしまう。そういう悩みが凄く多かったですし、自分がボカロでよくやっていたようなEDM系の曲を作ろうとしても、自分の声でやる意味を見出せなくて。何も答えが出ないままずっと疑問の中にいたので、とりあえず何かを完成させて(手がかりを)見つけようとしたのが『A』なんですよね。

でも、いざ完成した時に――本当はこんなことを言うのはよくないかもしれないですが――あまり感情がわかなかったというか。とにかく形にするということに重点を置きすぎて、何を作るかとか、アルバムにまとめる意味とかを追求できていなかったんです。リリースしてからしばらくは、自分はこれからどうすればいいのか、何が自分にとっていいものなのかがわからなくなっていました」

――そのスランプからは、どのように脱していったのでしょうか?

「2023年にリリースしたEP『花鳥風月』が大きなきっかけですね。そもそも『A』のコンセプトには、自分の完璧主義を抑えたものを作るということがあって。自分を変革していかなきゃという思いが強すぎて、それが作品を濁していたんですよね。

その反省から『花鳥風月』は、自分の好きなものややりたいことに向き合うという、自分を受け入れる方向で制作を進めました。ボカロをもう一度やりたかったからボカロを使ったし、人にも歌ってもらいたかったからV.W.Pのみんなに歌ってもらったし、でもやっぱり自分でも歌いたかったから自分で歌って。このEPを作ってから調子がよくなり始めましたね」

 

やりたいことはコンセプトをしっかり考えて作り込む制作

――『花鳥風月』については〈忘れかけていた創作の美しさを思い出すため、花鳥風月という美しい言葉になぞらえて、長い月日をかけて作った〉とポストされていました。

「僕はとにかく風景が好きで、そういう作品を作りたいと思ってるんですよね。『花鳥風月』もその一環で。〈花鳥風月〉という言葉を多少季節と絡めて、花だったら春っぽく……という感じで作りました。

自分のやりたいことってなんだろうと考えた結果、コンセプトをしっかり考えて作り込むことだと気づいたんですよね。なのでこの作品は、〈花鳥風月〉のそれぞれをテーマにした4曲を作ることを最初に決めてから、作業に取りかかりました」

――『花鳥風月』でスランプから脱したということは、やっぱり創作の美しさを思い出したんですか?

「もう間違いないです(笑)。今でも明確に覚えてるんですけど、“花”を作った時に霧が晴れましたね。自分の好きなものに立ち返るために“透過夏”などに近い感じになるように作ったんですが、1コーラス作って聴いてみた時に〈ああ、やっぱりこういうのが好きなんだな〉と思って。“花”は『花鳥風月』で一番最初に作った曲なんですが、そこから手がばんばん動くようになりましたね」

――先述の取材では「もう一度自分が前に出て歌うことに挑戦したい」とも話されています。

「そんなこと言ってたんですか(笑)。ずっとやってたつもりだけどな……。でも、もう無理なんじゃないかと思うくらいには悩んでましたね。今でも自分はボカロや楽曲提供の方が向いていると思っていて。

おそらく僕は物事の長所を見つけることが得意なんですよね。悪い部分も裏返したら長所になることを知っているから、例えばボカロの発音の悪さを利点にした作品を作るとか、そういう部分にクリエイティブの楽しさを見出すことが多いんです。でも〈向いてる〉と〈やりたい〉はまた違うんですよね」