クールでミステリアスな佇まいと圧倒的な歌唱力を備えたシンガーがニュー・アルバムを完成! モラトリアム三部作の最終章には、パーソナルな内面と共に少し大人になった横顔が見えて……
自分をもっと表現したくなった
初のオリジナル曲としてリリースした“春を告げる”がSNSを基点に瞬く間に拡散され、大ヒット。一躍、トップ・アーティストの仲間入りをしたyama。〈人生の意味〉と名付けた2021年のファースト・アルバム『the meaning of life』、アーティストとしての成長をめざしながらも、みずからのイメージと戦うという思いを込めた2022年のセカンド・アルバム『Versus the night』を経て、このたびサード・アルバム『awake&build』をリリースした。本作のテーマは〈気付き〉。憧れていた音楽の道に踏み出し、右も左もわからないままに時代を動かしたyamaにとっての〈モラトリアム三部作最終章〉として位置付けられている。強い意志のもと、多くの新たなサウンドやリリック・スタイルに挑戦した、まさに〈目覚めと構築〉のアルバムである。
「“春を告げる”をリリースしてからの約3年間、五里霧中で一歩先のことしか考えられない状態から、ようやく地に足をつけて先のことも考えられるようになってきました。アーティストとしての自我が芽生え、アイデンティティーが確立されていき、これまでの無機質でミステリアスなyamaの印象を守りながらも、パーソナルな部分をもっと発信していく必要があると思ったんです。他人から見たyama像ではなく、自分が発信したいyama像を表現していきたかった。そこで、〈気付く、構築する〉という意味を込めて『awake&build』というアルバム・タイトルにしました」。
これまでもアルバムごとに、自作曲を収録してきたが、今作では半数以上の楽曲の制作に携わっている。
「詞やメロディーを書くことは自分自身を出すことだと捉えています。今回のアルバムの“偽顔”と“沫雪”はコライトという形で、クリエイターの方たちとスタジオでセッションしながら作っていきました。その作り方ですと、一緒に作業しながら良い/悪いの判断をしなければいけないし、意見を言わないとそのままどんどん進んでいってしまう。いわばコミュニケーション能力を試される場所なので、最初はドギマギしていたんですが、だんだん慣れて意見が言えるようになっていきました」。
BTSやAwich、SKY-HIなどの楽曲を手掛ける世界的プロデューサー、マット・キャブのチームと組んだクールなダンス・トラック“沫雪”、ミッドテンポのバラード調からビートの効いたハウスに展開される“偽顔”は、特に新鮮だ。
「自分が好きな〈2000年代っぽい2ステップ感のあるビートを現代っぽく解釈した方向性の曲を作りたい〉というテーマから制作がスタートしました。“偽顔”はモダンなアプローチ、“沫雪”はバラード寄りという方向で制作していって。“偽顔”の歌詞は、他人から見た自分をみずから演じてしまったり、人の顔色を伺ったりしてしまうことで自分を見失っていくことをコンセプトに書きました」。
ただ、メッセージ先行というよりは音楽的な気持ち良さを重視するということを意識して作詞にはトライしたという。
「楽曲が出来上がっていくにつれて、〈めちゃくちゃいい曲じゃん!〉という手応えを感じながら作ることができてすごく楽しかったです。“沫雪”は打ち込みのハウスっぽいトラックに文学的で情景が浮かぶような歌詞を乗せたらギャップが生まれておもしろいんじゃないかって思い、歌詞を書いていきました」。