独自の音楽性、ファッション、ビジュアル表現によって日本を含むアジアと欧米を席巻しているK-POP。一方、韓国はJ-POPなど日本カルチャーのブームに沸いているという話題が伝わってくる。その中から、現代J-POPに強い影響を受けたK-POPも生まれているとか……? 興味深い最新潮流を、人気連載〈CD再生委員会〉も担当するミュージシャン/ライターKotetsu Shoichiroがレポートする。 *Mikiki編集部


 

多様化、プラットフォーム化したK-POP

K-POPはもはや一国の音楽ジャンルというよりも、アジア発のポップカルチャーを世界へ届けるための〈プラットフォーム〉と呼ぶ方がしっくりくるかもしれない。その多様性は年々広がりを見せている。

TWICEやLE SSERAFIMに日本出身のメンバーが在籍していることはお茶の間レベルで広く知られているが、NCTや(G)I-DLE、SEVENTEENのような、多国籍な構成のグループも、現在のK-POPシーンでは一般的になっている。

また、日韓のレコード会社が提携して誕生したILLITやJO1、メンバー全員が日本出身のXGのようなハイブリッド型グループも、単発の実験的なプロジェクトにとどまらず、継続的な人気を獲得している。

 

〈ボカロ世代J-POP風K-POP〉の潮流

その中でも特に興味深いのが、〈ボカロ世代J-POP風K-POP〉とでもいうべき密かな潮流。ボーカロイドを始めとした日本のデジタルネイティブの世代から生まれたカルチャーを取り入れたであろうK-POPが、単発的にではあるが登場しつつある。

YOASOBI、ヨルシカ、米津玄師といった〈ボカロP〉出身のアーティストたちが作るJ-POP――流麗なアルペジオを奏でるギター/ピアノ主体のバッキング、ドラマチックな展開・転調の多さ、原宿/kawaii/アニメカルチャーとの親和性……。歴史的に日本の音楽の影響を受けてきたとはいえ、アメリカのポップス/ヒップホップをサウンドデザインの基準としながらも、UKダンスミュージック、ラテン、アフロポップなど、さまざまなスタイルを貪欲に取り入れながら発展してきたK-POPにおいて、こういった最新のJ-POPもまた、リファレンスとして選ばれるのは、自然な流れかも知れない。それでも、実際に目にする〈ボカロ世代J-POP風K-POP〉は、フレッシュな違和感が漂っている。

 

アニメ、ゲーム、漫画……日本文化を取り入れたK-POP

例えば元IZ*ONEのYENA。日韓合同グループの先駆的存在であったIZ*ONEの解散後、ソロで活動しているYENAは、以前から日本のマーケットも意識した活動に積極的だったが(日本デビュー曲ではちゃんみなをフューチャリング)、昨年秋にリリースした“NEMONEMO”は、まさに〈ポストボカロ系J-POP風K-POP〉となっている。

ライブでは、ペンライトを持ったダンサー達に囲まれて、髪に紫の照明が当たることで「【推しの子】」の世界観をオマージュする展開もあり、日本でのコンサートではYOASOBI“アイドル”のダンスカバーも披露。コメント欄には〈J-POP/アニメカルチャーのヴァイブス〉〈星野イェナ〉といったファンの声も。

この“NEMONEMO”の作曲を手掛けたプロデューサーチームがPRISMFILTERで、彼らの肝いりのプロジェクトがQWER。元NMB48のメンバーを含む4人組のガールズバンドで、その世界観やMVには、日本のアイドル育成ゲームやバンド漫画からの影響が見られる。

また、デビュー10周年のタイミングで限定復活したGFRIENDが今年リリースした新曲は、明らかにYOASOBI“夜に駆ける”がリファレンスと思しきイントロと曲調になっている。

解散時に紆余曲折のあったGFRIENDが、久しぶりにリリースした曲であり、MVにも解散コンサート風の描写が登場する。アイドルというものの無常/虚構性を演出する際のサウンドとして、YOASOBI的なJ-POPが最も相応しい……というコンセンサスが出来つつあるのかもしれない。