〈面白い音楽、面白いディスク〉を求めて。こんな音盤ガイドはいままでなかった!
ちょっと思い出せないくらい久しぶりに、渋谷店のクラシックが単独フロアとなった2024年2月。専門誌の休刊の影響もお客様との会話にのぼる中、お客様に向けて発信することに意味を強く感じていた(そして可能な限りレスポンスをいただくということも)。そこへ、鈴木淳史さんに毎月10枚、選盤をお願いできることになり、大いに心が躍った。筆者は、鈴木さんと故・吉田秀和さんの著書を入手し得る限りすべて持っていた(鈴木さんが書いた中島みゆきのアルバム紹介を読み知ってからはなおのことだ)。〈冒険〉ともいうべき連載は21か月に及ぶ。毎月の販促物の作成など、コツコツと鈴木さんのお手伝いができることの愉しさは格別だった……。
〈変化球〉的編集後記になってしまった。とにかく、今となってはどこのお店でもやっていない企画コーナーだった。企画タイトルも〈悩殺10盤勝負〉と、かなり攻めている。いわゆる名盤カタログではない。当世きっての〈目利き〉が、クラシックの全領域を対象に〈面白い音楽、面白いディスク〉を求めて、モノラル期の古い録音からめっぽう音のいい最新録音まで、縦横無尽に束ねた多彩なディスクたち。アルゴリズムやAI主導のお薦めにはひっかからないものばかりではないか。選者の〈顔〉が見える。ディスクの一枚一枚の存在が鮮やかに際立つ。毎月どう展開していくのか、まさに〈現在進行形〉の音盤ガイドへの伸展だった。

210枚のディスクに書き下ろし13枚を加えた223枚を収録。加筆増補したディスクもある。これらを12の章に分類。そのラインナップ、偏在ぶり、とがり具合にはやはり類書にない鋭さがあり、一方でどんな面白がりかたも受け入れてくれるふところの深さがある。クラシック好きに限らず、〈音楽好き〉に響いて欲しい〈音〉がいくつも埋蔵されているのが本書だ。この本を手にCD探し、〈音探し〉を愉しんでいただけたら。その〈音〉との出会いがCDショップでなされたのなら最高だ。