ロシアで音楽教育を受けた若きピアニストがデビュー

 海外で音楽を学ぶ日本人は数多い。しかし、1996年生まれの松田華音(かのん)はちょっと大胆だったかもしれない。本格的にピアノを習い始めたのはモスクワのグネーシン音楽学校。あのキーシン、そして2010年のショパン国際ピアノコンクールで優勝したユリアンナ・アヴデーエワの育った音楽学校として世界中に知られている、ロシアを代表する学校だ。

 「香川県高松市に住んでいましたが、そこでグネーシン音楽学校のエレーナ・イワノーワ先生と出会いました。そしてイワノーワ先生の誘いでモスクワに行く事になりました。グネーシン音楽学校のクラスは、私以外はみんなロシア人でしたが、ロシア語にもすぐ慣れて、ピアノを含めた本格的な音楽教育を受けました」

 高松市在住のピアノ教師・細田淑子がイワノーワと松田を結びつけ、モスクワ生活が始まった。

 「音楽学校とはいえ、音楽だけでなく普通の学校で学ぶ教科も習います。音楽関係の教科は好きでしたが、バレエと水泳はちょっと苦手だったかも。学年が進むにしたがって、その内容もより難しくなります」

 グネーシン音楽学校での教育は、どんな点が違うのだろうか?

 「音楽はもちろん大きな柱ですが、それ以外の文化についても深い知識を与えてくれます。生徒の人格を豊かに成長させてくれるような教育だと思います。高学年になると、哲学、心理学なども学びますが、そうしたものはすべて音楽と繋がりがあり、演奏に役立っていると思います」

 松田は本を読むのも好きだという。プーシキン、ドストエフスキー、トルストイなどロシア語で読破した。特に好きなのはドストエフスキー。日本の小説もロシア語で読んでいるという。

 「プーシキンはロシアでは最も有名な作家ですが、子供のための作品も書いているのですよ」

松田華音 『松田華音デビュー・リサイタル』 Deutsche Grammophon/ユニバーサル(2014)

 今回、軽井沢の大賀ホールで初めて録音を行った。

 「作品は、これまでのリサイタルなどで弾き込んでいるものを中心に選びました。イワノーワ先生は、ひとりの作曲家だけに集中するのではなく、幅広い時代の作品を教えてくれました。それが今回のアルバムにも現れていると思います」

 グネーシン音楽学校を卒業し、この9月からはモスクワ音楽院でミハイル・ヴォスクレセンスキーに師事する。プレトニョフに認められ、すでにオーケストラの日本ツアーなどに参加して来たが、2015年1月には東京・紀尾井ホールで本格的なデビュー・リサイタル(明日への扉7)を開く。ロシアで華開いた日本の才能を私たちが体験する時がやって来る。

 


LIVE INFORMATION
紀尾井 明日への扉7
2015年1月15日(木)東京 紀尾井ホール
開演:19:00
出演:松田華音(ピアノ)
曲目
べ一トーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番ハ長調「ワルトシュタイン」Op.53/ショパン:幻想曲へ短調/Op.49プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第2番ニ短調Op.14 他
http://www.kioi-hall.or.jp/